料理家・フードコーディネーターの尾身奈美枝さんが毎回、余った食材をおいしく食べきるレシピを提案します。前回に続き、今回のお題も“魚のアラ”!魚の濃厚な旨味をいかして、極上のスパイスカレーをつくります!
前回は“魚のアラ”を使った“アクア・パッツァ”ならぬ、“アラ・パッツァ”を教えてもらったが、今回はちょっとステップアップして上級レシピを習うことに。シンガポールやマレーシアなどでつくられる、魚の頭を煮込んだ“フィッシュヘッドカレー”である。まさに東南アジアのアラ料理の最上級!これが家でつくれたら、めちゃくちゃうれしい。
「“フィッシュヘッドカレー”って、もともと捨てるはずだった魚の頭を野菜クズなどと一緒に煮込んで、まかない料理としてつくったのが最初だったんですって。それが評判を呼んで、わざわざ上質な魚の頭でつくられるようになったとか。まさに、“フードロサない”ために考えられた料理ですよね」
そんな尾身さんの話を聞くと、食材を無駄にせずおいしく食べきろうという創意工夫は、万国共通なのだと実感する。しかも、魚の旨味がギュッと凝縮したカレーがおいしくないわけない!
そして、今回のレシピのポイントとなるのが、玉ねぎとパプリカ。尾身さん流のフィッシュヘッドカレーには、この2つの野菜が欠かせないという。さっそくつくり方を教わってみることにしよう。
味のベースとなる玉ねぎとパプリカ。玉ねぎははみじん切りにするのだが、パプリカはなんと皮ごとスリスリとすりおろすというからユニーク!まるまる1個分のすりおろしパプリカは、トマトよりも色鮮やかだ。
「実はこのすりおろしパプリカ、マイブームなんです。最初は、インド料理の煮込み“サブジ”に使ってみたら、すごくおいしくて。玉ねぎと一緒に炒めることで、甘味や旨味が増して、スパイスとの相性も抜群なんですよ」
完成したカレーを食べてみると、じわじわと広がる奥行きのある味!魚の濃厚なコクと旨味の中に、爽快なスパイスが香るのがたまらない。“魚のアラ”って最高!今回は鯛のアラを使ったが、どんな魚でもおいしくつくれるのだろうか……?
「もちろん、そのとき手に入るものでいいですよ。冬はブリ大根用のアラも多く出まわると思うので、ぜひ使ってみてください。ブリは魚体が大きいので頭は入っていないと思いますが、ノーヘッドでもOKです!」
使う魚によって、味わいが変わるのも興味をそそられる。“フィッシュヘッドカレー”はおいしくて、知恵と工夫で料理する楽しさにも気づかせてくれる一皿なのだ。
鯛のアラ | 約400g(頭が入っているもの。ブリなど他の魚でもよい) |
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薄力粉 | 適量 |
サラダ油 | 大さじ3~4 |
玉ねぎ | 200g(粗みじん切り) |
にんにく | 大さじ1と1/2(粗みじん切り) |
生姜 | 大さじ1(粗みじん切り) |
トマト | 大1~1.5個(約300g)(ヘタを取る) |
赤パプリカ | 1個(すりおろす) |
オクラ | 6本(ガクをむく) |
パクチー | 適量 |
★ スパイス | |
・ クミンパウダー | 大さじ1 |
・ ガラムマサラ | 大さじ1/2 |
・ カレー粉 | 大さじ1/2 |
赤唐辛子 | 1本(乾燥、半分に折る) |
塩 | 小さじ2 |
白ワイン | 50ml |
オリーブオイル | 大さじ3 |
鯛のアラに熱湯をかけて霜降りにする。水に取って軽く洗い、キッチンペーパーで水気を拭き取る。薄力粉をふり、余分な粉ははたいて落とす。
フライパンにサラダ油をひいて中火にかけ、アラを並べて焼く。こんがり色づいたら返して、もう一方の面も焼く。いったん、バットなどに取り出しておく。
アラを焼いたフライパンをキッチンペーパーで軽く拭き、オリーブオイルをひいて中火にかけ、にんにく、生姜、玉ねぎを炒める。玉ねぎが色づいてきたら、すりおろしたパプリカを加えて炒める。
焼いて取り出しておいたアラを戻し入れ、さらに白ワインを加えてひと煮立ちさせ、アルコール分をとばす。水500ml(分量外)、トマトを丸ごと加える。
煮立って、トマトの皮がむけてきたらはがして取り除き、ヘラでつぶす。
スパイスをすべて加える。全体になじんだら、オクラを加える。半分ほどずらしてフタをし、15分ほど中火で煮込む。仕上げに塩を加えて味をととのえる。器に盛って、パクチーを添え、ご飯(分量外)とともに食べる。
料理家・フードコーディネーターとして、テレビ番組を中心に、新聞・雑誌など様々なメディアに出演。料理番組の金字塔『料理の鉄人』の裏方を務め、「フードコーディネーター」 という職種を世に広め、定着させた先駆け的存在でもある。
「きょうの料理」 (NHK)「あさイチ」(NHK) などの番組に多数出演。“エコ”をテーマとした新しいレシピ提案を発信し続けている。
文:大沼聡子 撮影:海老原俊之