料理家・フードコーディネーターの尾身奈美枝さんが毎回、余った食材をおいしく食べきるレシピを提案します。今回のお題は“焼きいも”。家でおいしく焼く方法と、残った焼きいもでつくる絶品料理を教わります!
今年も“焼きいも”がおいしい季節がやってきました!今やフェスが開催されるほど、その人気はマニアックに加熱。紅はるかやシルクスイートなど、注目の品種は指名買いされることも。トラックで引き売りする昔ながらの石焼きいも屋に加えて、専門店も増えているという。
そんな焼きいも好きに尾身さんが薦めるのは、家庭のオーブンで焼くこと。焼き方を教わると、拍子抜けするほど簡単。アルミホイルで包むこともなく、そのままオーブンに入れて、低めの中温でじっくり焼くだけ。そうすることで、いもの糖度をゆっくり上げていくのがポイントだ。
「天板にオーブンシートを敷いてさつまいもを並べ、予熱なしでオーブンに入れて170℃にセットしてください。温度が上がったら70~90分、ほったらかしでOK!アルミホイルに包んでしっとりとした食感に焼く方法もありますが、そのまま焼くほうが旨味がギュッと凝縮して、石焼きいもみたいにパリッと焼き上がるんですよ」
焼き時間はさつまいもの大きさにもよるが、1本あたり300~400gなら、この加熱時間で火が通るという。70分たったら竹串を刺して、火が通っているか確認してみるといい。
「何本焼いても光熱費は同じなので、せっかくならまとめて焼くのがエコ。まずは焼きたての味を楽しんで。余った分は、翌日以降においしく食べきる、おすすめのレシピを紹介します!」
熱々ホクホクの焼きいものおいしさは格別だが、食べきれなくても心配ご無用。翌日にぜひつくりたいのが、“焼きいものトスカーナポテト風”だ。実は尾身さん、dancyu本誌でも紹介した名レシピ、銀座「マルディグラ」の和知徹シェフが考案した“トスカーナ・フライドポテト”にインスパイアされ、たっぷりのハーブが香るフライドポテトを、焼きいもでアレンジしてみたのだという。
「焼きいもはすでに芯まで火が通っているでしょ?表面がカリッと揚がればいいので、生のじゃがいもを揚げるよりも簡単なんです」
そう話しながら、焼きいもを切り分ける尾身さん。皮はむかずに付けたままカットすれば、フードロサずにまるごとおいしく食べられるのもいい。あとは粉をまぶして、ローズマリーとタイム、にんにくと一緒に揚げるだけ。
「さあ、食べてみて。ハーブとにんにくが香る焼きいもは、じゃがいもでつくるのとは全然違うおいしさ。もちろんお酒にも合いますよ!」
ん~、いい香り!パリパリに揚がったハーブを枝からくずして、焼きいもにしっかりまとわせてパクリ。外はカリカリッ、中はしっとり!時間をかけて引き出した、焼きいもならではの甘味を少しの塩が引き立てる。まとめて焼いておいてよかったと思わせるおいしさだ。
「ちょっと甘じょっぱい味も、あとを引くんですよね。スーパーなどで売られている市販の焼きいもでもかまわないので、ぜひこのおいしさを楽しんでください!」
焼きいも | 300~350g(ホクホク系がおすすめ) |
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A | |
・ 薄力粉 | 大さじ2 |
・ 片栗粉 | 大さじ2 |
ローズマリー | 7、8枝 |
タイム | 7、8枝 |
皮付きのにんにく | 4、5粒(軽くつぶす) |
米油 | 適量 |
粗塩 | 適量 |
焼きいもは皮付きのまま縦に4等分して、5~6cmの長さに切る。Aの粉類を混ぜて焼きいもにまぶし、余分な粉をはたいて落とす。
フライパンに1.5cmの高さまで米油を注ぎ入れ、ローズマリーとタイムの半量、にんにくを入れる。170~180℃に熱して、ハーブとにんにくの香りが立ってきたら、焼きいもを入れて揚げる。
焼きいもをときどき返してムラなく色づくようにする。表面がカリッとしてきたら、残っているハーブを加える。
焼きいもがこんがり色づき、全体にカリッと揚がったら、取り出す。ハーブもすべて取り出して焼きいもと一緒に器に盛り、粗塩をふったら出来上がり。ハーブはくずして、焼きいもと一緒に味わう。
料理家・フードコーディネーターとして、テレビ番組を中心に、新聞・雑誌など様々なメディアに出演。料理番組の金字塔『料理の鉄人』の裏方を務め、「フードコーディネーター」 という職種を世に広め、定着させた先駆け的存在でもある。
「きょうの料理」 (NHK)「あさイチ」(NHK) などの番組に多数出演。“エコ”をテーマとした新しいレシピ提案を発信し続けている。
文:大沼聡子 撮影:海老原俊之