東京・新大久保「イスラム横丁」をゆく。
パキスタンのおふくろの味"マトンプラオ"をつくろう!

パキスタンのおふくろの味"マトンプラオ"をつくろう!

大使館御用達のパキスタン料理店「ナワブ」で最初に教わるのは、パキスタンの炊き込みごはん“マトンプラオ”です。骨付きマトンとバスマティライスさえ用意すれば、つくり方はシンプル!

“プラオ”こそが“ビリヤニ”の原形。

“プラオ”とは、ペルシャ(現在のイラン)発祥の炊き込みごはんのこと。パキスタン人にとって、おふくろの味とも言える料理だ。
インドの“ビリヤニ”に似ているが、“プラオ”こそが“ビリヤニ”の原形といわれている。

メニュー
パキスタンの料理名が書かれる “SPECIAL MEAL”のボードの一番上 には“マトンプラオ”。店の人気メニューであることが伺えます。

“プラオ”のレシピはとてもシンプル。“ビリヤニ”が、米を下ゆでして、カレーもつくり、カレーとごはんを層にして鍋の中で重ねて炊くという面倒なプロセスでつくり上げていくのに対して、肉をスパイスで煮込んだところへ米を加えて炊くだけ。
「日本人でもつくりやすいと思うよ」と、東京は日本橋のパキスタン料理店「ナワブ」オーナーの成塚シャキル・カーンさんは笑顔で教えてくれた。

マトンの代わりにチキンでもOK。

“プラオ”は米が主役の料理。「ナワブ」では、パキスタンの首都イスラマバードに本社がある「KAALAR(カラール)」というメーカーのバスマティライスを使用している。パンジャーブ産の上質な米で、香り高いのが特徴。新大久保のイスラム横丁でも入手可能だ。

“プラオ”の具は、マトンのほかにチキンでつくってもおいしい、とカーンさんは言う。
「グリンピースを加えて炊いてもおいしいよ。“ザルダ”というパキスタンの甘い炊き込みごはんを“プラオ”とミックスして食べるのもいいね」
パキスタンの結婚式では、何十人分もの“プラオ”を炊いて、各々が好きなカレーをかけて食べるスタイルが人気だとか。

調理のポイントは、スープが入った鍋にバスマティライスを加えた後、アルミホイル、鍋の蓋と重ねて、最後に重石をすること。鍋にアルミホイルを平らにかぶせるのは、鍋の中の水滴が偏りなく落ちるようにするため。これでごはんの一部分だけがベチャッとすることなく、均一に蒸し上がる。鍋の蓋の上に重石をするのは、蓋を固定して水分を蒸発させないため。とはいっても、密閉させるのはNG。「わずかに蒸気が出るくらい、蓋をずらすのがベスト」と、「ナワブ」の料理長カリル・アハマドさんは、真剣な表情で鍋に鉄板を乗せながら言った。

店ではタンドール料理をサーブする鉄板を重石にしていた。

マトンプラオ

マトンプラオ
つくった“プラオ”は、冷蔵庫で3日ほどなら保存もできて、翌日以降は電子レンジであたため直して食べたらおいしいと、カーンさんは教えてくれた。

材料 材料 (つくりやすい分量)

・ バスマティライス 1kg
・ マトン 1kg(5cm角の骨付き)
・ 塩 小さじ1
・ サラダ油 100ml
・ にんにく 小さじ1(すりおろす)
・ 生姜 小さじ1(すりおろす)
A クローブ 10個
A シナモンスティック 2本
A ブラックカルダモン 4個
A クミンシード 大さじ1
A ベイリーフ 2枚
A 八角 2個
A 黒胡椒 小さじ1/2(粒)
B トマト 1/3個(薄切り)
B 生姜 20g(細切り)
B フライドオニオン 5g
B 青唐辛子 7本(半分の長さに切る)
・ プレーンヨーグルト 50g
・ 塩 大さじ3
・ 牛乳 大さじ2
・ 生姜 適量(細切り/仕上げ用)

1 米を洗う

米は3回ほど水で洗い、30分ほど常温の水に浸ける。ざるに上げて水気を切っておく。

2 マトンのスープをつくる

マトン、塩、水2l(分量外)を圧力鍋に入れ、20分加圧して火を止める。圧力鍋の蒸気が抜けたら蓋を取る。穴あきお玉などで肉を取り出し、スープと分けておく。スープの量が減っていたら、全体が1.5lになるよう水を足す。

圧力鍋を使わない場合は、マトン、塩、水2lを鍋に入れて強火にかける。沸騰したらアクを取り、弱火にして2時間煮る。肉が柔らかくなったら火を止め、穴あきお玉などで肉を取り出し、スープと分けておく。スープの粗熱が取れたら、全体が1.5lになるよう水を足す。

スープ
スープに浮く脂は旨味の素。取り除いてはいけません。

3 スパイスを炒める

鍋にサラダ油をひいて中火で熱し、にんにく、生姜を入れて炒める。茶色く色づいたらAのスパイスを加え、香りが立つまで炒める。

スパイスを炒める
途中で焦げそうな場合は、少量の水を適宜加える。

4 野菜を炒める

Bを加えて炒める。トマトが崩れてきたらヨーグルト、塩を加えてさらに炒める。

野菜を炒める
火の通り方が早いため、材料を加える順番に注意。
野菜を炒める
ペースト状になるまで炒める。

5 マトンを炒める

2の肉を加え、スパイスが全体になじむまで炒める。

マトンを炒める
ヘラで全体を鍋底から混ぜるように炒める。

6 スープを加えて煮る

2のスープと牛乳を加えて混ぜ、蓋をして強火にする。沸騰したら弱めの中火で5分煮る。

スープを加えて煮る
牛乳はマトンの臭み消しと、米を白く炊き上げる効果がある

7 米を加えて煮る

1の米を加えて混ぜる。蓋をしないで、ときどき混ぜながら7分煮て汁けをとばす。

米を加えて煮る
混ぜながら煮るうちに、米が水分を吸ってスープの量が減ってくる。

8 蓋と重石をして炊く

鍋にホイルをかぶせ、蓋をして重石をのせる。弱火で20分炊く。蒸気を逃がすため、蓋と鍋の間に少し隙間をあけておく。

蓋と重石をして炊く
重石は、大皿などキッチンにあるものでOK。

9 蒸らす

火を止めて、そのまま10分置いて蒸らす。全体を混ぜ合わせたら、でき上がり。

蒸らす
しゃもじやへらで“天地返し”をすることにより、全体の味を均一にし、余分な水蒸気をとばす。
完成
骨付きのマトンは手づかみで食べよう!

炊きたてを食べさせてもらうと、思ったよりも薄味で、驚くほど繊細で上品!
臭みが心配だったマトンも、スパイスと牛乳の効果で旨味が引き立ち、スープで炊かれたごはんもしっとりふわふわだ。

上の写真で“プラオ”に添えた白いソース状のものは“ライタ”。ヨーグルトサラダともいわれ、インドやパキスタンのごはんものに添えられる。
そのまま食べれば口直しになるが、“プラオ”にかけて味を変えながら食べるのも楽しいので、ぜひ合わせてつくってみよう。

ライタ

材料 材料 (つくりやすい分量)

・ プレーンヨーグルト 250g
・ きゅうり 1/2本(みじん切り)
・ 玉ねぎ 小1/2個(みじん切り)
・ にんじん 20g
・ 塩 小さじ1
・ 黒胡椒 小さじ1(粗挽き)

1 混ぜる

材料をすべてボウルに入れて混ぜ合わせるだけ!

教える人

成塚シャキル・カーン

成塚シャキル・カーン

パキスタンの北部、パンジャーブ州の都市バハーワルプル生まれ。約30年前に来日。宝石商などの仕事を経た後、レストラン経営を始める。現在は「ナワブ日本橋店」などレストラン6店舗のオーナー。上野公園で毎年開催されるパキスタンと日本の交流イベント「パキスタン&ジャパンフレンドシップフェスティバル」の主催者も務める。

次回は、タンドリーフィッシュとタンドリーラムチョップのつくり方をご紹介します。使用するスパイスの配合が緻密なレシピです。ぜひデジタルスケールを用意して挑戦してください!

――つづく。

文:佐々木香織 写真:本野克佳 協力:パキスタン・イスラム共和国大使館

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佐々木 香織(ライター)

福島出身の父と宮城出身の母から生まれ、東北の血が流れる初老の編集ライター。墨田区在住。食べることと飲むことが好き。お酒は何でも飲むが、とくに日本酒と焼酎ラヴァー。おもな仕事は新聞やウェブでの連載、雑誌や書籍の編集・取材・執筆。テーマは食べもの、お酒、着物など。