いま、コーヒーカクテルが盛り上がっている。そこに熱い視線を送るバーテンダーも増えている。でも、コーヒーのプロ=バリスタと、お酒のプロ=バーテンダーによるアプローチはだいぶ違っているようだ。それを知るべく、ソニア・カオさんを案内人に、コーヒーカクテルに定評のあるバーテンダーに会いにいった。
本業はWEBプランナーながら、強いコーヒー愛を抱くバリスタでもある。その愛が募り、勤め先の会社では、2015年より社内カフェをオープン。有志で週一回店を開き、スペシャルティコーヒーをドリップして販売するように。バリスタのコンペティションなどで撮影した写真が評判を呼び、撮影の依頼を受けることも。コーヒーカクテルについての造詣も深く、バーにも精通するようになる。2019年6月からはフリーランスとしてコーヒーやバー業界のプロモーションを始動。バリスタとバーテンダーの架け橋になる活動をしている。
ソニア・カオさんの案内のもと、コーヒーカクテルを味わうべく向かったのは、日本を、いや世界を代表するバーの街、銀座。
オーセンティックバー「アポロ」は、2013年開店。オーナーバーテンダーの小松秀徳さんは、ニューヨークのアポロシアターが多くのアーティストの登竜門であることと、銀座がバーの“入り口”というべき街であることにちなみ、この店名を付けた。
小松さんは、お酒にまつわる仕事について30年。
バーテンダーを経て、酒類メーカーのサントリーのコンサルタント部署で15年にわたって、新しく立ち上げる店のカクテル開発やスタッフの指導をしてきた。そのため、海外での研修で得た経験も幅広く、広い視野でレシピづくりにもいそしんできた。
小松さんは言う。
「実は、私のバーで出しているコーヒーは、近くのカフェでオーダーして買ってきているものです。大事なのは、いかにすばらしいコーヒー豆を使うかということより、バランスだと思うんです」
小松さんはコーヒーが大好きで、自身の店の開店時にはエスプレッソマシンの導入を計画していた。だが、具体的に工事が始まるにつれ、そのスペースを確保する難しさや、一人でバーを切り盛りするうえでのオペレーションの壁にあたり、コーヒーは自分で淹れることにこだわらなくていいと割り切った。
主役はあくまでお酒。
それをいかに輝かせるか、いかにおいしく飲ませるかという要素のひとつにコーヒーがあるのだ。
ほんのさわりだけで、バリスタとバーテンダーのコーヒーカクテルの捉え方の違いが如実に表れる。
さて、次回からは二人のカクテルを味わいながら、それぞれのアプローチの違いを具体的に見ていこう。
――つづく。
文:沼由美子 写真:Sonia Cao