夏はガツンと肉中華
【南麻布・茶禅華】まるで雲のようにとろける!? 極薄切りの豚肉となすによる恍惚の口溶けの"雲白肉(ウンパイロウ)"レシピ

【南麻布・茶禅華】まるで雲のようにとろける!? 極薄切りの豚肉となすによる恍惚の口溶けの"雲白肉(ウンパイロウ)"レシピ

発売中のdancyu夏号「夏はガツンと肉中華」特集では、思わず息を呑むような美しさと、名店ならではの繊細で奥行きのある味わいが魅力的な“超絶技巧中華”を紹介! 東京を代表する2軒の中国料理店に、レシピを教わりました。一品目は、日本のみならず海外の食いしん坊をも虜にしている南麻布「茶禅華」の雲白肉です。

トップシェフがその美学を惜しげもなく披露

目の前で蒸籠の蓋が開いた瞬間、感嘆の声を上げた。青磁の見事な大皿に、極薄の豚バラ肉となすが重なり合う姿の美しいこと! そのなすへ細やかに施されている包丁目は、まるで優美な鳳凰の尾のようだ。

上に回しかけられているのは、ほのかなビター感と甘味の甜醤油(テンジャンユ)と、香り高い辣油。豚肉となすを一緒に口へ運ぶと、双方が同じ柔らかさで舌にまとわりつき、雲のようにふわりと消えていく。陶然としているところへ登場したのは、土鍋炊きのツヤツヤご飯だ。豚肉となすで包み頬張れば、ご飯が受け止めることで味わいはより立体的になり、中国料理らしい、おおらかさや親しみやすさがぐっと前面に表れる。「茶禅華」のスペシャリテの一つとして、ゲストを日々魅了している一皿。雲白肉といえば、四川料理の冷菜としてゆでた豚バラ肉にきゅうりを合わせるのが定番だが、「茶禅華」では温菜だ。

オーナーシェフの川田智也さん
オーナーシェフの川田智也さん。中国料理で育んだ基礎に日本料理での研鑽を重ね合わせた、独自のたおやかな中国料理にファンが多い。25人のスタッフの指揮をとる。

「豚肉の脂は温めたほうがおいしいし、香りも上がります。きゅうりの清涼感や食感は一口ごとにリセットするイメージなので、なすを使い風味やなめらかさを豚肉と合わせ、どんどん箸が進むものを考えました。雲白肉とよく似た料理に、ゆで豚ににんにくのソースをかける蒜泥白肉(スワンニーパイロウ)がありますが、両方を合わせたオリジナルですね。調理の工程自体は、さほど難しくないですよ」と、オーナーシェフの川田智也さん。
豚肉をゆで、冷やして形を整え薄切りにする。同じく薄切りにしたなすと交互に並べて蒸し、あらかじめ仕込んでおいた甜醤油と辣油をかける。プロセス自体は確かに複雑なものではないが、実際に見せてもらうと、そこかしこに名菜へと昇華させるための技と心配りがちりばめられているとわかる。

雲白肉
まずはそのまま、うっとりと味わったら、ご飯にのせて豪快に食べるのもお薦め。店では、春には花山椒、秋には黒トリュフをかけることもあるそうだ。

ゆで豚は周囲を大胆にそぎ落として中心を使い、なすは季節や状態をみて厚みを変える。蒸し時間は、器の厚さにゲストの食事の進み具合、厨房からテーブルの距離も考えて秒単位で調整する。客席を預かるスタッフと厨房が心を合わせることも調理の一部だ。
「タイミングの料理。毎日つくっても、毎日表情が違うのが魅力なんです」
精緻な仕事と親しみやすい甘辛味が混ざり合う、まだらなおいしさはやみつきになること必至。名店の哲学を、ぜひわが家でも感じてみてほしい。

雲白肉のつくり方

材料材料 (4人分)

豚バラ肉1.2kg(塊)
長ねぎの青い部分1本分
生姜5枚(スライス)
なす1~1と1/2本
甜醤油適量
辣油適量
一味唐辛子適量

*甜醤油と辣油のつくり方は前編を参照。市販のものでも代用できるが、味の深みが違うのでぜひトライを!

豚肉をゆでて冷やす

1豚肉を成形する

豚バラ肉は脂身と赤身のバランスが程よいものを選び、厚さ4cm、長さ17cm、幅12cmに成形する。

豚肉を成形する

2豚肉をゆでる

鍋にたっぷりの湯を入れて火にかけ、長ねぎの青い部分と生姜を入れる。沸騰する前に①を入れ、沸いたら火を弱め、静かにポコポコと湯が対流するくらいの火加減で60~70分ゆでる。アクはこまめに取り除く。

豚肉をゆでる
赤身側の弾力が“耳たぶ”ぐらいになればOK。

3肉の火の通りを確認する

60分経ったら一度金串を刺して火の通りを確認する。透明な肉汁が上がってくれば、中まで火が通った合図。肉汁に赤みが残っていたら、さらに10分ゆでて様子を見る。「脂身がとろっとしてはダメです。その手前の“と”ぐらいにする」と川田シェフ。

4豚肉を取り出し、冷やす

肉をバットに引き上げ、上からもバットをのせて、バットごとラップでしっかりときつく巻いて平らに形を整える。そのまま1時間ほど置いて粗熱が取れたら、冷蔵庫で3時間ほど冷やし固めてから、ポリ袋かジッパー袋に入れて空気を抜いて口を閉め(真空調理をかけるとなおよい)、たっぷりの氷水に沈めて急冷させて中心までしっかり冷やし、再び冷蔵庫で一晩休ませる。

豚肉を取り出し、冷やす

豚肉となすをスライスする

5冷やした豚肉を成形する

冷やした肉は、脂身と赤身のバランスを見て同じぐらいになるよう使う位置を決め、周囲を大胆にそぎ落として、翼のような台形に成形する。

冷やした豚肉を成形する
ゆでていく過程で、肉の外側はダメージを受けているので大胆に削ぎ落す。

6豚肉をスライスする

端から厚さ1mm以下にスライスし、バットに並べておく。店では、そぎ落とした部分は、まかないで魯肉飯や回鍋肉にするそうだ。

豚肉をスライスする
豚肉をスライスする

7なすを成形する

なすは豚肉の形に合わせやすいものを選んで縦半分に切り、端が肉と同じ台形になるようヘタを落とす。

なすを成形する

8なすをスライスする

皮目に少し斜めに包丁が入るよう細かく切り込みを入れる。両側面を少し切り落とし、縦1.5~2mm幅にスライスする。変色しやすいので蒸す直前に手早く作業するのがポイント。

なすをスライスする
なすをスライスする
夏場の柔らかいなすは厚めに、冬場の硬いなすは薄めに切るといい。

仕上げる

9豚肉となすを皿に並べる

大きな平皿に豚肉となすを交互に並べていく。肉となすの間にできる三角形の大きさを均一にし、中心も合わせて重ねていくことで、きれいな円を目指す。円の最後は、最初に置いた肉を箸でやさしくめくって、なすを滑り込ませるように並べる。中央は縦に交互に4枚ずつ並べる。

仕上げる
仕上げる

10蒸す

蒸気の上がった蒸籠に⑨の皿を入れ、強火で1分20~30秒蒸す。大きな蒸籠や皿がない場合は、はじめから一人一皿に分けて順番に蒸してもよい。取り出したら皿を斜めにして水分をきり周りを拭く。蒸籠の蓋は鍋に戻してしっかりと温めておく。

11調味料をかけて、完成

甜醤油と辣油を全体に細く回しかけ、一味唐辛子を軽くふる。熱い蒸籠の蓋を皿に被せて運び、テーブルで蓋を開ける。この数十秒でソースがゆるみ、全体になじむ。

調味料をかけて、完成

店舗情報店舗情報

茶禅華
  • 【住所】東京都港区南麻布4-7-5
  • 【電話番号】050-3188-8819
  • 【営業時間】16:00~19:30(L.O.)
  • 【定休日】日曜、月曜、他に不定休あり
  • 【アクセス】東京メトロ「広尾駅」より12分
26年夏号「夏はガツンと肉中華」
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dancyu2026年夏号
A4変型判(160頁)
2026年6月5日発売/1,500円(税込)

文:鹿野真砂美 撮影:伊藤徹也

鹿野 真砂美

鹿野 真砂美 (ライター)

1969年東京下町生まれ。酒と食を中心に執筆するフリーライター。かつて「dancyu」本誌の編集部にも6年ほど在籍。現在は雑誌のほか、シェフや料理研究家のレシピ本の編集、執筆に携わる。料理は食べることと同じくらい、つくるのも好き。江戸前の海苔漁師だった祖父と料理上手な祖母、小料理屋を営んでいた両親のもと大きく育てられ、今は肉シェフと呼ばれるオットに肥育されながら、まだまだすくすく成長中。

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