湯島聖堂の料理帖~戦後の日本に伝わった“本当の中国料理”~
【包んだ紙ごと揚げるユニークな揚げ技】素材の水分ごと旨味を凝縮!「鶏肉の紙包み揚げ」(紙包鶏)

【包んだ紙ごと揚げるユニークな揚げ技】素材の水分ごと旨味を凝縮!「鶏肉の紙包み揚げ」(紙包鶏)

紙に包んで揚げ、短い時間で鶏肉の旨味をぎゅっと閉じ込める。17回目は、鶏肉の紙包み揚げ「紙包鶏(ヂパオジィ)」です。中国で古くから行われてきたユニークな揚げ技を通して、新たな美味しさに出会おう。

油を介して素早く熱を伝え、旨味を凝縮させる

しっとりとした鶏肉に、コリコリとした青豆のアクセントが心地よい。鶏肉の紙包み揚げ「紙包鶏(ヂパオジィ)」。昨今では、シンガポール名物「ペーパーチキン」の名で、この料理を知っている人も多いかもしれない。だが、そのルーツは中国にある。紙に包んで揚げるという調理法は、油の扱いに長けている中国料理ならではの発想だ。

ペーパーチキンだと、レンチンでつくる方法も紹介されている。だが、油で揚げることが、この料理の最大のポイントだと山本豊さんは語る。

「包みの中は蒸し焼きの状態になりますが、揚げることによって、蒸すよりも高い温度で一気に熱が伝わります。そのため素材の水分を逃さずに旨味を凝縮することができます」

シンガポール版はオイスターソースを使うが、湯島聖堂の味つけはいたってシンプルだ。鶏肉のやさしい旨味を、控えめな味つけで最大限に引き出す。薄切りにしてから調味料に漬け、火の通りをよくし、味をしみ込みやすくすることもコツのひとつだ。

「中国では、めでたい席に赤いリボンを結んで提供することもあります。タコ糸を使っても問題はありませんが、今回は品よく彩りを考えて、にらで結びました」

包み紙の形を整えて、食卓に並べれば、見た目も華やか。揚げ油の香ばしさをまといながらも、料理自体はヘルシーで滋味深い。“揚げ”の調理法を用いて、いわゆる揚げ物とは異なる味わいを生み出すという、中国料理の技にチャレンジしてみたい。

鶏肉の紙包み揚げのつくり方

材料材料 (4人分)

鶏胸肉300g
青豆1パック(グリーンピース)
ねぎ大さじ1(みじん切り)
にら16本
生姜搾り汁大さじ1
醤油大さじ1
紹興酒大さじ1
胡麻油大さじ1
白胡椒少々
揚げ油適量
花椒塩適量(*)

パラフィン紙を用意する。
※花椒塩のつくり方は第3回を参照してください。

1下ごしらえをする

鶏むね肉は皮と脂肪を取り除き、薄切りにする。にらはさっと湯通しをしておく。

2具をつくる

ボウルに鶏肉、ねぎ、生姜の搾り汁を入れ、醬油、紹興酒、胡麻油、胡麻を加えて混ぜ、約15分おいて味をなじませる。

具をつくる
薄切りにした肉に、味をしみ込ませるのがコツ。

3具を包む

パラフィン紙を25cm四方に切る。紙の上に8等分した具、青豆をのせる。紙の外側を持って、ひだを寄せながら包んでひねる。根元と先を互い違いに合わせた、にら2本を2〜3回巻きつけて結ぶ。

具を包む
中心に、具を置く。
具を包む
外側の紙を、ひだを寄せながら一周する。
具を包む
ひだを寄せ終えたら、具の上のところで紙をひねる。
具を包む
にらを2〜3回巻きつけて、結ぶ。
具を包む
紙はふわっと自然に広がった状態でOK。

4揚げる

鍋に油を入れて100〜110℃に熱し、鍋にジャーレンをセットし、その上に3を並べ、5〜6分ほどじっくり揚げる。鶏肉の色が白く変わって弾力が出てきたら、油ぎれをよくするために、最後に30秒ほど強火にする。鍋から上げて油をきり、器に盛る。包み紙を形よく整え、花椒塩を添える。

揚げる
長ねぎの切れ端を入れ、小さな泡がふつふつ生じる程度が100~110℃の目安。ねぎは取り除く。
揚げる
結び目のところまで油に浸かるように、ジャーレンの上に並べる。
揚げる
紙の隙間から多少油が入ってもかまわないので、具がきちんと油に浸かった状態でじっくり火を通す。
揚げる
揚げ上がりをチェック。肉が白く変わり、弾力が出てきたらOK。
完成
包み紙を広げると、香ばしい油の香りとともに、ふわりと湯気が立ち上る。食べごたえと味のなじみ方は、ひき肉でも塊肉でもない、薄切り肉ならでは。青豆のコリッとした食感と爽やかな青い風味が、鶏肉の淡い旨味を引き立て、最後まで食べ飽きさせない。
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教える人

山本豊

山本豊

1949年高知県生まれ。68年、中国料理研究部に所属し、中国料理の道に進む。76年より中国料理研究部出身の故小笹六郎さんが開いた「知味斎」に勤務。87年、東京・吉祥寺に「知味 竹爐山房」をオープンし、旬の素材を取り入れた月替りのコース料理で中国料理界に新風を巻き起こした(2019年閉店)。著書『鮮 中国料理味づくりのコツ たまには花椒塩を添えて』、共著『野菜の中国料理』、『乾貨の中国料理』(すべて柴田書店)など携わった本は、中国料理を志す人にとって必携の書になっている。

文:澁川祐子 撮影:今清水隆宏 調理協力:藤本諭志(「シルクバレル」店主)

澁川 祐子

澁川 祐子 (ライター・編集者)

食と工芸を中心に編集、執筆。著書に『味なニッポン戦後史』(インターナショナル新書)、『オムライスの秘密 メロンパンの謎ー人気メニュー誕生ものがたり』(新潮文庫)、編集・構成した書籍に山本教行著『暮らしを手づくりするー鳥取・岩井窯のうつわと日々』(スタンド・ブックス)、山本彩香著『にちにいましーちょっといい明日をつくる琉球料理と沖縄の言葉』(文藝春秋)など。