料理家・フードコーディネーターの尾身奈美枝さんが毎回、余った食材をおいしく食べきるレシピを提案します。今回のお題は、エスニック調味料でおなじみの“スイートチリソース”。生春巻き以外の料理に使ったこと、ありますか?
今回のお題は、あのエスニック調味料!生春巻きやチキンライスなどに活躍する、タイの“スイートチリソース”である。他に使える料理が思いつかなくて、冷蔵庫に死蔵してしまうことが多いのでは……。尾身さん、いい使い切り方、ありませんかね?
「わかるわ~。毎回、使う量も少しだけだし、どうしても残っちゃうのよね。でもね、ちょっと瓶の裏側の原材料表示を見てみて。どんな材料が使われているかを知るだけで、すごく料理に使いやすくなるから!」
さっそく、冷蔵庫に使い残していたタイのメーカーのスイートチリソースをチェック。ラベルを見てみると、「砂糖、唐辛子、にんにく、食塩、酢酸」……以上!おお、こんなにシンプルだとは、今まで知りませんでした。
「意外でしょ?砂糖をベースにした甘いソースなんだけど、唐辛子とにんにくのシンプルな味つけなの。だから、同じタイのナムプラーと組み合わせれば、甘辛いエスニックな味つけが簡単にできちゃうんです。そこで今回は、このスイートチリソースをたっぷり使って“豚スペアリブ”を煮てみましょう!」
骨つきの豚スペアリブを煮るというだけで、なんだかテンションも上がってくるが、いったん落ち着いて。尾身さんが、「ちょっと面倒だけど、豚スペアリブは下ごしらえが肝心」と、おいしくつくるための心得を伝授してくれたのだ。
「まず最初に、鍋にたっぷりの熱湯を沸かして、サッと下ゆでしてください。このひと手間で豚肉のアクが取れて、くさみがなくなります。さらに、それをフライパンでこんがり焼くこと。しっかり肉の脂を出して焼くことで、香ばしさがつきます。しかも、形もきれいに仕上がるんですよ」
ここまでくれば、あとはスイートチリソース&ナムプラーで煮込むだけ。トータルで1時間半ほど煮込んだ豚スペアリブは、骨からほろっと肉が外れてくるほどやわらか!魚醤の旨味と唐辛子の辛味がほどよくしみ込んで、こんな凝った味つけの肉料理が家で簡単につくれるのはうれしい。
「豚スペアリブのポピュラーなレシピといえば、“マーマレード煮”ですよね。あの甘いマーマレードをスイートチリソースで置き換えてみたんです。パクチーをたっぷり添えて一緒に味わうと、さらにさわやかでおいしいですよ。ぜひ、この夏のご馳走としてつくってみてくださいね!」
豚スペアリブ | 800g~1kg |
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にんにく | 1片(つぶす) |
酒 | 70ml |
スイートチリソース | 100ml |
ナムプラー | 小さじ2 |
パクチー | 適量 |
鍋にたっぷりの湯を沸かし、豚スペアリブを3分ほど下ゆでする。キッチンペーパーを敷いたバットに取り出し、水気を切る。
フライパンに油はひかずに強めの中火にかけ、下ゆでしたスペアリブを並べて表面を焼きつける。肉の脂がしっかり出て、表面がこんがり色づいたら、トングなどで取り出して別の鍋に移す。
スペアリブの鍋に、にんにく、水1リットル(分量外)、酒、スイートチリソース、ナムプラーを入れて強火にかける。沸騰したら火を弱めてアクを除き、クッキングシートの落とし蓋をする。コトコトと沸くくらいの弱火で1時間ほど煮る。
落とし蓋を外して、あと30分ほど煮る。このとき、煮汁がとびすぎていたら水を足し、常に煮汁がスペアリブの高さの半分ほどまで浸かっているようにする。全体にまんべんなく煮汁がしみるように、ときどきトングで返す。
煮汁の味をみて、甘さを強く感じるときはナムプラー小さじ1を足して調整し、少し煮て照りがついたら火を止める。器に盛り、パクチーをたっぷり添える。
料理家・フードコーディネーターとして、テレビ番組を中心に、新聞・雑誌など様々なメディアに出演。料理番組の金字塔『料理の鉄人』の裏方を務め、「フードコーディネーター」 という職種を世に広め、定着させた先駆け的存在でもある。
「きょうの料理」 (NHK)「あさイチ」(NHK) などの番組に多数出演。“エコ”をテーマとした新しいレシピ提案を発信し続けている。
文:大沼聡子 撮影:海老原俊之