カキを贅沢に使って、濃厚なポタージュに仕立てます。じゃがいもの甘味と程よいとろみも加わって、つまみにもなる食べるポタージュです。酒肴家・稲垣知子さんによれば、飲むタイミングも含めてスープは酒呑みにとって大事な存在。今回は稲垣さんの薬膳や栄養学の知識をもとに、弱った肝臓や胃をいたわる「お酒呑み」のためのスープづくりを習いました。
本来、お酒とは人生を楽しくするもの。しかし、呑み方を間違えれば、体がヒーと悲鳴を上げてしまう。おいしく楽しく健やかにお酒を味わいたいなら、「晩酌にスープを組み込んでみては?」と、酒肴家の稲垣知子さんは言う。
「スープを飲むと、体が受けるアルコールの影響を軽減できます。ポイントはスープを飲むタイミング。お酒の呑み始め、そして、呑み終わりに摂るとよいですね」
お酒の呑み始めにスープが有効なのはなぜだろうか。
「温かいスープを飲むことで胃が温まり、消化吸収などの胃の働きがよくなります。また、空腹のままお酒を呑むと急激に酔いが回りやすく、体への負担も大きくなります。ポタージュなど、とろみのあるスープは空腹をほどよく満たし、胃を温めるので特におすすめです」
では、呑み終わりは?
「飲食で疲れた胃の働きを助ける食材をはじめ、アルコールの分解や二日酔い予防に有効といわれる食材でスープをつくります。具はなるべく少なめにして、さっぱりとした味に仕上げます」
料理教室で薬膳も教える稲垣さんが、今回紹介するすべてのスープに、薬膳の世界で“酒呑みによい”とされる食材を取り入れてくれた。
よーし、これでいくら呑んでも大丈夫!……とは、いきませんよね?
「スープだけに頼らず、栄養のバランスよく食べること。そして、お酒は適量を守ること。これが大前提ですよ~」
は、はい。気をゆるめすぎず、おいしく楽しく健やかにお酒をいただきます!
肝機能アップのカキと胃の調子を整えるじゃがいもで、飲酒のスタンバイOK!じゃがいもでとろみがつくので、小麦粉は不使用。
高タンパクで低脂肪、ビタミン類やミネラルをバランスよく含み、「海のミルク」の異名をとる。肝臓の解毒機能を強化するタウリンや肝機能全般を強化するベタインを含む。
カキ | 100g |
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じゃがいも(中) | 1個(約100g) |
にんにく | 1/2片 |
牛乳 | 300ml |
バター | 10g |
塩 | 小さじ1/2 |
オリーブオイル | 少々 |
黒胡椒 | 少々 |
じゃがいもは皮をむいて薄い半月切りにする。にんにくは薄切りにする。カキは水洗いをして水気をよくきり、粗く刻む。
鍋にバター、にんにく、じゃがいもを入れ、中火にかけて炒める。じゃがいもの表面が透き通ったらカキも加えてざっくり炒める。
カキの表面の色が変わったら牛乳を加え、沸騰したら弱火にし、じゃがいもが十分にやわらかくなるまで煮て火を止める。
3をハンドミキサー(またはミキサー)でなめらかになるまで撹拌し、塩で味をととのえる。
器に盛り、オリーブオイルと黒胡椒をかける。
雑誌、書籍、料理教室などで日本酒に合う料理を教えている。薬膳にも造詣が深く、今回は薬膳や栄養学の知識と、長年の飲酒経験(?)を生かした「お酒呑み」のためのスープを提案。
文と構成:佐々木香織 撮影:宮濱祐美子