野菜たっぷりの南インド料理
深みがあり洗練された豆と野菜のカレー"アラチュヴィッタ サーンバール"

深みがあり洗練された豆と野菜のカレー"アラチュヴィッタ サーンバール"

食べると体の中から元気が湧いてくる。そんな南インドのスパイスと素材の香りが印象的な野菜中心のカレーを、インド・スパイス料理研究家の香取 薫さんに教えてもらいました。

“アラチュヴィッタ サーンバール”のつくり方

日常的によく食べる豆と野菜のカレー。これはタミルのブラーミンのコミュニティでサーンバールの王様と呼ばれるレシピ。小さな玉ねぎやピーマンを種ごと使い、深く洗練された味わい。ピタライパウダーは、仕込んでおくと便利です。

材料材料 (2人分)

トゥールダール50g(予めやわらかくゆでておく)
★ ピタライパウダー
・ チャナダール40g
・ コリアンダーシード15g
・ 赤唐辛子1本
・ ヒーング3つまみ
・ ココナッツファイン1/4カップ
・ 植物油小さじ1/2
プチオニオン4個(*)
* タイ食材店で手に入るホムデン玉ねぎ(赤わけぎ)またはベルギーエシャロットが手に入れば、プチオニオンの代わりに丸ごと8個使用すると、より現地の仕上がりに近くなる。
ピーマン1個
トマト1/2個
植物油小さじ2
★ スタータースパイス
・ 赤唐辛子1/2本
・ フェヌグリークシード小さじ1/4
・ マスタードシード小さじ1/2
・ ヒーング小さじ1/6
ターメリック小さじ1/3
タマリンド小さじに山盛り1程度
ぬるま湯120ml
ピタライパウダー小さじ2
小さじ2/3
砂糖小さじ1/2
トゥールダール
トゥールダール。サーンバールやラサムの味をよくするのに欠かせないひき割り豆で、他のダールより少し高価。やわらかくゆでて使う。
チャナダール
チャナダール。小粒のひよこ豆をひき割りにしたもの。きな粉のような風味が特徴。油で加熱するとカリッとした食感になる。
ヒーング
ヒーング。南インド料理には欠かせないスパイス。単体では強烈な匂いだが、油で熱すると炒めた玉ねぎのような香味になる。
タマリンド
タマリンド。マメ科の高木の果肉で、料理に酸味を添える。圧縮させた果肉をぬるま湯で溶きほぐし、種などを取り除いて使用する。

1トゥールダールをもどす

トゥールダールは、洗って3倍量以上の水に半日浸水してもどす(または熱湯に1時間浸す)。

2トゥールダールをゆでる

ターメリックふたつまみ(分量外)を入れやわらかく煮る。煮えたらそのままおき、上澄みのゆで汁をこぼして沈殿した豆の部分を材料として使う。または69ページの要領で、圧力鍋で蒸してもよい。こぼしたゆで汁も豆のいい味が出ているので、捨てずにスープなどに使うとよい。

3ピタライパウダーのスパイスを炒める

フライパンに植物油をひいて中火にかけ、コリアンダーシードとチャナダールを入れて炒める。カリッとしたら赤唐辛子とヒーングを入れてさらに炒め、赤唐辛子がカリッとしたら弱火にしてココナッツファインを入れ、焦がさないように炒める。

ピタライパウダーのスパイスを炒める

4ピタライパウダーをつくる

ココナッツの甘い香りが立ってきたら、色づく前に火からおろし、グラインダーでひく。やや粗めでもよい。必要量を使い、残った分は密閉袋などに入れて冷蔵庫へ。南インドの香りがするカレー粉として、オクラ、なす、キャベツなど野菜の炒め物にもよく合う。

5タマリンドウォーターをつくる

タマリンドはぬるま湯に15分つけてふやかし、よくもみしごいてからザルでこす。ザルに残った種や筋は捨て、こしとった液体をタマリンドウォーターとして使う。

タマリンドウォーターをつくる

6野菜の下ごしらえ

プチオニオンは皮をむき、根元がバラバラにならないように中心から2等分に切る。ピーマンは縦2等分にし、へたと種は取らずに、半量を6等分に四角く切る(全部で12等分)。トマトは8等分に切る。

7炒める

気密性のよい鍋に植物油を入れて弱火で温めたところへ、スタータースパイスを赤唐辛子から順に入れていく。赤唐辛子がカリッとしたらフェヌグリークシードを入れ、色づいてきたらマスタードシードを入れる。マスタードがポップコーンのようにはじけてきたらヒーングと1のプチオニオンを入れ、2分ほど炒める。

8仕上げ

続けてピーマン、トマト、ターメリック、塩、タマリンドウォータを加えて蓋をし、沸いたら弱火でしばらく煮る。野菜に火が通ったらピタライパウダーを入れ、ゆでたトゥールダールと砂糖を入れて混ぜる。

完成

教える人

植松良枝 料理研究家

香取 薫 インド・スパイス料理研究家

東京生まれ。
1985年にボランティアで訪れたインドで、スパイスの魅力に開眼。以来、インド中を歩き、地元の家庭に入って料理を研究する。キッチンスタジオ ペイズリー主宰。著書も多数。

文:鹿野真砂美 写真:宗田育子

この記事は四季dancyu「夏のキッチン」に掲載したものです。

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鹿野 真砂美

鹿野 真砂美 (ライター)

1969年東京下町生まれ。酒と食を中心に執筆するフリーライター。かつて「dancyu」本誌の編集部にも6年ほど在籍。現在は雑誌のほか、シェフや料理研究家のレシピ本の編集、執筆に携わる。料理は食べることと同じくらい、つくるのも好き。江戸前の海苔漁師だった祖父と料理上手な祖母、小料理屋を営んでいた両親のもと大きく育てられ、今は肉シェフと呼ばれるオットに肥育されながら、まだまだすくすく成長中。