
日々真面目にコツコツと仕事をこなす腎臓の働きや、腎臓が原因で起こる不調についてお話しした前回に引き続き、テーマは“腎臓”。腎機能低下をもたらす原因や、腎臓に負担をかけない食生活について、食いしん坊倶楽部メンバーで医師の三浦雅臣さんにうかがいました。
まず腎臓の機能が低下する原因についてお話しします。前回お話ししたとおり、加齢は腎機能低下の原因となります。これは避けられないものとして、それ以外の大きな原因となるのは「糖尿病」です。以前、糖尿病の合併症の代表的なものは「しめじ」と「えのき」とお話しました(「20代でも安心できない!食いしん坊のための糖尿病講座①きちんと知っておきたい糖尿病の基礎知識」。このうちの「じ」が腎機能障害です。高血糖状態が長く続くと、腎臓のろ過フィルターとしての役割を果たす毛細血管が傷つき、機能が低下して透析が必要になる場合もあります。
もうひとつは「高血圧」です。血圧が高い状態が続くと血管に負担がかかります。腎臓の中は無数の毛細血管のかたまりですので、血管のダメージは腎機能の低下につながります。腎臓の機能が低下すれば、体の水分や塩分がうまく排出されないため、血液量が増えて血圧がさらに高くなるという悪循環にも陥ります。前回、腎臓の働きとして血圧のコントロールをあげましたが、腎臓が出すレニンというホルモンが過剰に分泌され、血圧をさらに上げることにもつながります。
今年も暑い日が続きました。熱中症にかかってしまった人もいると思いますが、熱中症も腎臓に負担をかけます。熱中症は体の極度な脱水を引き起こします。それが腎臓への血流を低下させ、糸球体に負担をかけるわけです。熱中症の程度によっては腎機能への影響が後々にも残ることがあるため、熱中症にも気をつけたいところです。
腎臓病というと男性のかかる病気というイメージを持たれる人も多いですが、これは糖尿病やその原因となる肥満、高血圧が男性にやや多いせいもあるかもしれません。もちろん女性で腎臓病の人もいますが、実際男性のほうが多いです。透析患者さんはおおよそ男性が2、女性が1の割合です。
腎機能低下の大きな原因が糖尿病と高血圧ということになると、対策はおのずと明らかになります。
糖尿病にならないためにはやはり適切な食事・運動が大切です。カロリーオーバーには気をつけましょう。腹八分目はもちろん、スイーツや揚げものばかりをとり過ぎないよう気をつけたいところ。ウォーキングなどの適度な運動も心がけましょうね。
高血圧対策としてはやはり塩分をとり過ぎないこと。野菜をたっぷりとり、酸味やうまみを上手に使うのがコツです。詳しくは糖尿病対策や高血圧対策、の回も参考にしてください。
アルコールはどうでしょう。適量のアルコールが直ちに腎臓にダメージを与えるわけではないのですが、お酒を飲むことでカロリー過多になったり、塩分の高いおつまみを食べ過ぎたりしてしまいますので、やはり量を守って楽しく飲む程度にしておいた方がよいと思います。お酒の健康的な飲み方については、「お酒は本当に体に悪い?楽しく続けるためにはどうすべきか①、②」でもお話しています。

腎機能低下のサインとなるもののひとつに、前回お話ししたeGFRのほか、「たんぱく尿」があります。健診でたんぱく尿が出ているといわれると、たんぱく質の摂取を控えた方がいい? 大好きな肉や魚はもう食べられないの? と不安に思うかもしれません。
健康な腎臓では、糸球体(しきゅうたい)というフィルターがアルブミンなどの大きなたんぱく質を尿に漏らさないようにしています。ところが糖尿病、高血圧などでこのフィルターが傷むと、アルブミンが尿のほうにもれ出てしまうことがあります。これがたんぱく尿です。大量にもれ出てしまうと、糸球体の後に続く尿細管の細胞がたんぱく質を処理しきれず、尿や物質の再吸収を担う尿細管に炎症が起こり、さらなる腎臓の線維化や機能低下につながります。
慢性的にたんぱく尿が出ている場合、病状にもよりますが食事からとるたんぱく質を制限する場合があります。たんぱく質は体を作る重要な栄養素ですが、体内で分解されると尿素などの老廃物が生じます。腎臓の機能が低下している場合は、こうした老廃物をしっかり排出することができなくなるために、たんぱく質の摂取量をコントロールする必要があるのです。
とはいえ一度たんぱく尿が出たからといって、食事でのたんぱく質を急激に減らす必要があるかというと、それは先回りをし過ぎかもしれません。たんぱく尿は激しい運動や発熱など、一時的な体への負担によっても出ることがあります。自己判断でたんぱく質不足を招くことの方が問題です。焼肉を食べるなら、脂肪の少ない赤身にして、食べ過ぎないようにしておきましょう。健診でたんぱく尿を指摘された場合は、まずは再検査などで原因を確認し、医師に相談することが最も大事です。

ジョスリン糖尿病センター リサーチフェロー。2014年東京大学医学部医学科卒業。2021年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了・卒業、2023年東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科 助教。糖尿病や肥満症を専門に、最近では老化や睡眠、味覚についても探究を深める日々。
編集:出口雅美(maegamiroom) 文:久保木 薫 写真:Shutterstock