
日常生活の中ではなかなか意識することのない「腎臓」。でも実は体にとって重要な役割を担い、一瞬たりとも休むことなく働き続ける縁の下の力持ちです。少しくらい調子が悪くても文句ひとつ言わない沈黙の臓器、腎臓について、食いしん坊倶楽部メンバーで医師の三浦雅臣さんにうかがいました。
腎臓はおなかの反対側にある背中側、手を後ろに組んだあたりで、背骨をはさんで左右に1個ずつあります。大きさは握りこぶし大。そら豆の形をしているというのはよく知られていますね。
一番の仕事は、血液をろ過して、余分な水分や老廃物を尿として出すことです。腎臓1つに細い毛細血管が毛糸玉のように丸まった糸球体や尿細管と呼ばれる管の集合体が約100万個ほど集まって、ろ過を担っています。

腎臓を流れる血液が1日どれくらいかご存知でしょうか? 1分あたりおよそ1ℓ、1400ℓほどになります。そこからろ過されてできる“原尿”はおよそ180ℓ。お風呂約1杯分くらいです。そして最終的に尿として排出されるのが1日約1~1.5ℓ。とても精密に必要なものと不要なものを選別しており、究極のだし取り職人とも言えるかもしれません。私たちがこうしている間にも、腎臓はどんどん老廃物をろ過し続けています。
水をたくさん飲むとトイレが近くなりますが、これは腎臓が体内の水分量をコントロールしているからです。同時にナトリウムやカリウムなど電解質のバランスを調整したり、レニンというホルモンを分泌して、血圧の調節に関わったりします。そのほか、エリスロポエチンというホルモンを分泌して赤血球がつくられるのを助けたり、ビタミンDを活性化して骨を丈夫にする働きもあります。
では腎臓がダメージを受けると、体にはどんな変化が起こるのでしょうか。
腎臓は新品の状態、つまり若いときのろ過機能が一番で、年を経るごとに少しずつ低下するといわれています。健康な人でも腎臓の劣化は少しずつ進みます。腎臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、少し機能が低下したとしても症状が出ることは多くありません。症状が出たときにはすでに腎機能の低下がかなり進んでいることもあります。症状がないからといって、腎臓が健康であるとは限りません。
腎臓は体の余分な水分や老廃物を排出するのがメインの仕事とお話ししました。なにかしらのトラブルが進行して機能が低下すると、本来尿として排出される水分や老廃物が体内にたまってむくみが生じることがあります。なんとなくだるい、疲れやすい、息切れなどの症状が現れることもあります。
尿の変化も腎臓トラブルのサインです。たとえば尿が泡立ち、なかなか消えないときは要注意。病気とは関係なく泡立つ場合もありますが、用を足したあとも泡が長く続くときは、たんぱくが出てしまっている“たんぱく尿”の可能性があります。
あまり腎臓とは関係がなさそうなのですが、皮膚のかゆみも腎臓トラブルが原因で起こることがあります。本来なら尿として排出される老廃物が血中や皮膚にたまったりすると、かゆみの受容体が刺激され、身体がかゆくなってしまうのです。これは透析を行っている方に多く見られます。
腎臓で作られるエリスロポエチンが減少すると、赤血球が不足して貧血になることも考えられます。骨を丈夫にするのも腎臓の役割ですから、骨がもろくなる原因にもなり得ます。
多彩な働きを持つ腎臓だからこそ、ひとたび調子が悪くなればさまざまな体のトラブルを引き起こし、好きなものを食べたり飲んだりすることもできなくなります。透析が必要なレベルに達してしまうと、食事や水分をきびしく制限されるだけでなく、生活にも大きな負担がかかります。
もちろん、これらの症状は他の原因で起こることもありますので、必ずしも腎臓のトラブルとはいえない部分もあります。やはり気になることがあれば、健康診断を受けるというのが重要になってきます。
腎臓の検査で大事なのが、ろ過機能を表すeGFR。一般的に、この数値が60.0(mL/min/1.73㎡)未満の場合は要注意です。以前お話しした「受けっぱなしにしていない?健康診断②食いしん坊が特に注目したほうがいい項目はどれ?」も参考にしてください。
腎臓は一度機能が低下してしまうと、回復が難しい臓器です。定期的にチェックして、早めに変化に気づけるようにすることが大事です。
次回は腎臓トラブルの原因や、腎臓をいたわる生活習慣などについてお話しできればと思います。

ジョスリン糖尿病センター リサーチフェロー。2014年東京大学医学部医学科卒業。2021年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了・卒業、2023年東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科 助教。糖尿病や肥満症を専門に、最近では老化や睡眠、味覚についても探究を深める日々。
編集:出口雅美(maegamiroom) 文:久保木 薫 写真:Shutterstock