
高血圧が続くと動脈硬化のほか、体のさまざまなトラブルを引き起こします。今回は、おいしいものを食べたり飲んだりしつつ、高血圧にならないための食事をはじめとする生活習慣の見直し方について、食いしん坊倶楽部メンバーで医師の三浦雅臣さんにうかがいました。
高血圧対策としてやはり大事なのは、「塩分」を過剰にとり過ぎないということです。
前回もお話しした通り、塩分をとり過ぎると複雑なプロセスを経て血圧が上がってしまうのですが、実は塩分摂取を数日控えるだけで、血圧の低下が期待できます。いつもラーメンの汁を飲み干している人が、汁を残すようにするだけでも、大きな差が出ます。ちょっと塩分をとり過ぎたなと思ったら、数日間は意識して控えればOK。塩分対策は、続けるほど結果につながりやすい取り組みです。
これを読んでいただいている人の中には、外食や中食が多い人もいると思います。外食や中食はどうしても塩分過多になりがち。できるだけ回数を減らしたり、コンビニのお弁当などなら塩分量をチェックして、低塩分のものを選んだりすることも有効です。
外食ではどうしても野菜の摂取量が減ってしまいますが、これも血圧にはよくありません。サラダでもあえものでも、なにか野菜を一緒にとれるようにするとよいでしょう。野菜には塩分(ナトリウム)の排出を促すカリウムや食物繊維が含まれますし、動脈硬化を防ぐ働きのあるファイトケミカル(「10年後の自分に差をつける!第7の栄養素とは①」)も合わせてとれるのでおすすめです(ただし、腎臓を悪くしているなどカリウムの制限がある人は注意が必要です)。

低塩分のものはおいしくない……! こうおっしゃる人も少なくありません。でもちょっとした食べ方の工夫で、少ない塩分でもおいしく食べられるようになります。
みなさんは餃子になにをつけて食べますか? 酢じょうゆにラー油、というのが一般的かと思いますが、これを塩分を含まない「酢こしょう」にするのはどうでしょう。さっぱりしてなかなかおいしいものです。
私は今アメリカに住んでいるのですが、アメリカだと基本的に調味料は塩、こしょうがメインなんですね。それに比べて日本はさまざまな香辛料や香りのものが多い。例えばゆずなどの柑橘や、青じそやみょうがといった薬味などですが、そういったものも減塩には役立ちます。塩分が少なくても、香りや酸味がもの足りなさを補ってくれるのです。
だしのうまみもそう。うまみのきいたものはそれほど塩をきかせなくてもおいしいんです。梅干しなどの漬けものや干もの、佃煮など、塩分の高いおかずをとり過ぎなければ、和食のほうが減塩向きといえると思います。
ただし、いくら塩分の低い食事であっても、食べ過ぎはNG。量が多ければ結局塩分をたくさん取り込むことになりますし、肥満は血圧を上げる大きな原因のひとつですから、食べ過ぎには注意しましょう。「腹八分目」が基本です。
お酒は塩分を含んでいるわけではないのでたくさん飲んでもいいかというと、そういうことではありません。アルコールの影響で血管が広がって一時的には血圧が下がるんですが、その後、交感神経に影響して、翌日の血圧が上がったりします。あとは前回もお話ししましたが、どうしても塩気のきいたおつまみを食べることになり、それが血圧に影響してしまいます。おつまみは野菜スティックやトマト、枝豆など野菜多めを選ぶのがいいでしょう。もちろんドレッシングやマヨネーズのかけ過ぎはNGです。
食事以外の減塩対策についてもお話ししましょう。
「塩分をとり過ぎたから、サウナに行ってたくさん汗をかけばチャラにできる!」……これは、果たして○か×か。発汗によって塩分は排出されますので、ある意味では正しいのですが、残念ながら、過剰にとってしまった塩分をなくすほどの効果はサウナにはありません。汗をかいて出ていく塩分よりも、水分が多く失われるため、サウナの後でしっかりと水分補給をしておかないと、血液が濃縮して血圧が上昇することもありえます。
適度なサウナ習慣は血管の機能を改善したり、リラックス効果もありますから体にとって悪いことではないのですが、塩分をリセットできるというわけではありませんので、覚えておいてください。
塩分対策と並んでおすすめしたいのが、適度な運動です。
運動をすると血流が増え、血管の内側から一酸化窒素が放出されます。これが血管を広げ、血流が改善する、つまり前回お話しした末梢血管抵抗が下がります。これが運動の大きな効果のひとつです。
また高血圧の人は常にアクセル全開の状態に近い、つまり交感神経が過剰に興奮している状態にあることが多いのですが、運動によって、副交感神経が優位になることで、安静時の心拍数や血管の緊張が低下するのです。
インスリン抵抗性を改善する働きもあります。特に肥満や糖尿病の人は、インスリン抵抗性(インスリンが効きにくい)があるため、交感神経が活性化したり、塩分(ナトリウム)を体にため込んでしまったりして血圧が上がりやすくなってしまうのです。腎臓での塩分の排出にも運動は関わります。交感神経が活性化するのを抑え、塩分(ナトリウム)を排出しやすくします。
適度な運動習慣が内臓脂肪を減少させることで、炎症性物質を抑えたり、血管の障害を改善したりもします。運動のさまざまな作用が複合的に結びついて、血圧を下げてくれます。とはいえ急激に激しい運動をしてはいけません。手軽に続けられるウォーキングなどの有酸素運動がおすすめです。
このように適度な運動をすることで、血管機能のアップ、交感神経の抑制、インスリン抵抗性の改善、内臓脂肪の減少など、血圧を下げるためのよい変化が起こります。高めの血圧が気になる人は、塩分対策に加えて、運動する習慣をつけることをおすすめします。もちろん、ストレス解消、充分な睡眠も忘れずに。

ジョスリン糖尿病センター リサーチフェロー。2014年東京大学医学部医学科卒業。2021年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了・卒業、2023年東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科 助教。糖尿病や肥満症を専門に、最近では老化や睡眠、味覚についても探究を深める日々。
編集:出口雅美(maegamiroom) 文:久保木 薫 写真:Shutterstock