いい店見つけた!
【ひと口食べたら止まらない!】一面に浮かぶにらの香りと牛脂の旨味が押し寄せる、究極の"にらうどん"。田町「自家製麺へんくつ」

【ひと口食べたら止まらない!】一面に浮かぶにらの香りと牛脂の旨味が押し寄せる、究極の"にらうどん"。田町「自家製麺へんくつ」

編集部が注目する、おいしくて居心地のいい店をご紹介する連載「いい店見つけた!」。第12回目は学生街・三田に開店した「自家製麺へんくつ」をご紹介します。7割の客が注文するという名物の”にらうどん”は必食です!

うどんはすべて手打ち!“温”と“冷”でつくり分ける徹底ぶり

“創作“というほど奇抜ではなく、それでいて、ありそうでなかった一皿。そんな料理に出会うと、自ずと心が弾み、食いしん坊な人達に教えたくなる。
今年の1月、初めて口にした“にらうどん“はまさにそれ。港区三田の裏通りで、昼時ともなれば列をなす「自家製麺へんくつ」の人気メニューだ。客の7~8割は注文するというから、もはや店のスペシャリテといってもいいだろう。

ご主人の山本征児さんは福岡出身。地元の和食店で2年間修業を積んだ後、17歳で上京。19歳のとき、縁あって、今は亡き魚料理の名店、麻布「富ちゃん」で研鑽を積み、21歳のときには料理長を任されるほどに。

店主の山本征児さん
店主の山本征児さん。

「富ちゃん」の閉店後、一旦福岡に戻った山本さんだったが、地元のうどんを改めて食べ歩く中でうどんのポテンシャルの高さに気づかされたとか。こうしてうどんに興味を持ち、35歳で再度上京。紆余曲折ある中で、4年前から本格的にうどん打ちに取り組み、十条の人気店「讃岐うどん いわい」で修業。今年の1月1日、晴れてこの店をスタートさせた。

店舗外観
昼時は多くの会社員で賑わう。

一面にらの海!なのにまったく臭みがない衝撃

にらうどん
名物のにらうどん1,000円。卵黄トッピングは100円。

さて、その“にらうどん”だが、仕立ては細かく刻んだにらを目一杯浮かべただけ、のシンプルな仕上がりながら、まるで緑の絨毯を敷きつめたかのような見た目のインパクトにまず、目を見張らされる。そして、だしをひと口啜るや、想像の上をいく味わいに頬が緩む。味の骨格は和風だしでありながら、動物性の強い旨味が鼻腔と舌を圧倒するのだ。どこか大阪の“肉吸い”を思わせるそのアツアツのだしは、まろやかでいて濃厚。味わうほどにしみじみと胃の腑にしみ渡る。山本さんによれば「最後に熱した牛脂を加えている」そうで、いわばこれがミソ。

牛脂の香りと旨味が、味に厚みを与えているのだ。だが、それもベースとなる和だし自体の完成度の高さゆえ。聞けば、鰹と鯖節をメインに、うるめ節や宗田節、真昆布と干し椎茸も加えており、すっきりとしていながらも奥行きのある味わいに仕上がっている。
加えて、うどんそのもののクオリティーが秀逸。「いわい」仕込みのその麺は、歯切れよくのど越しなめらか。コシが強いというよりも弾むような弾力があり、噛み締めるほどに粉の風味と甘味を感じさせる。まさに「うちのうどんは、コシよりも粉の味を大切にしています」との山本さんの一言が伝わる美味しさだ。

にらうどん

件の小麦粉は常時4種類を揃え、独自にブレンド。うどんによって打ち分けている。たとえば、にらうどんなどだし系の場合は3種を使用。絹のような光沢があり、“つるもち“の食感の中、小麦の甘味が広がる“きぬあかり”を主軸に、しっとりしたなめらかさと弾力感のある“ちくごいずみ”を合わせてのど越しの良さを演出。そこにオーストラリア産小麦粉も加えることで、ゆでても負けぬ芯とコシをうどんに与えている。生地をこねた後は、体重をかけて足で踏むのもうどん打ちに欠かせぬセオリー。こうすることで塩水と小麦粉が均一に混ざり、しっかりとしたコシが生まれるわけだ。

この生地を最低でも2日間ほど熟成させるのが山本流。ただ硬いだけのコシではなくしなやかで伸びのあるコシに仕上げるためだ。

もう一つの名物・塩うどんも見逃すな!

塩うどん
塩うどん1,000円。

もう一方の名物“塩うどん”に使う小麦粉は2種類。メインの小麦粉は、その名も“もちひめ”。小麦粉ながら米粉の餅のようなもちもち感があり、時間が経っても硬くなりにくくしっとり感が持続するという特性を持つ。まさに冷製の“塩うどん”にはうってつけの粉だが、山本さんは、これにきぬあかりをブレンド。もっちり感の中にも伸びのある、絹のような艶やかな麺に仕立てている。味つけは、メニュー名通り塩のみ。数種の塩をブレンドし、米油と合わせた塩だれで和えている。近頃は蕎麦を塩で食べる向きもあるが、塩だれで和える食べ方はお初。こちらも、これまでありそうでなかったスタイルだろう。味変のすだちを絞れば、清涼感もひとしおだ。

ちなみに、先の“にらうどん”も味変アイテムがいろいろ。生卵を載せればまろやかさとコクがパワーアップ。また、自家製辣油なら、よりパンチのある味わいを楽しめる。好みでカスタマイズすると良いだろう。

自家製辣油
自家製辣油。辛味と香りがにらうどんとマッチして、止まらなくなる。

うどんを待つ間にいただくなら、ふんわり柔らかなささみ天や分厚いかき揚げを試したい。“生なめこのかき揚げ”や“小松菜の糠漬けと貝柱のかき揚げ”等々、数こそ少ないもののこちらもなかなかユニーク。サクサクの見事な揚げ具合は、ビールのつまみはもとより、うどんのトッピングにもぴったり。うどんはほかにもスタンダードな“冷かけ“に“釜玉”もある。

讃岐うどんほどコシは強くなく、博多うどんのようなやわでもない。和食店を思わせる落ち着いた雰囲気の中、粉の風味を全面に押し出した唯一無二の味を楽しみたい。

天ぷら
ふつうのささみ天300円、なめこのかきあげ350円。

店舗情報店舗情報

自家製麺へんくつ
  • 【住所】東京都港区芝5‐24‐7
  • 【電話番号】なし
  • 【営業時間】11:30~15:30 18:00~20:00
  • 【定休日】土曜日
  • 【アクセス】JR「田町駅」、都営地下鉄三田線「三田駅」より各5分

文:森脇慶子 撮影:海老原俊之

森脇 慶子

森脇 慶子 (ライター)

高校時代、ケーキ屋巡りとケーキづくりにハマってから食べ歩きが習慣となり、初代アンノン族に。大学卒業後、サンケイリビング新聞社で働き始めたものの、早々に辞めて、23歳でフリーとなり、食専門のライターとして今に至る。美味しいものには目がなく、中でも鮎、フカヒレ、蕎麦、スープをこよなく愛している。

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