
編集部が注目する、おいしくて居心地のいい店をご紹介する連載「いい店見つけた!」。第10回目は、世界中から注目を集める「Florilège(フロリレージュ)」オーナーシェフの川手寛康さんがオープンした、美食&美酒を楽しむガストロバー「SODDEN FROG(ソドゥン フロッグ)」です。前編、後編2回に分けてお届けします。
「ガストロバー」という言葉をご存じだろうか。
「ガストロミー」+「バー」を合わせて短縮した造語で、一般的に「バーフード」というとイメージする「主役のお酒を引き立てるためのおつまみ的な料理」ではなく、ガストロノミー、つまりファインダイニングで出てくるような現代的な料理を提供する、料理とカクテルが共に主役となるバーのことだ。
2022年ごろから世界的に流行になり、今やロシアから南米まで、世界同時多発的にオープンが続く人気の「ガストロバー」が、2025年8月、日本にも誕生した。麻布台ヒルズの「ソドゥン フロッグ)」。ちょっと変わった店名は、直訳すると「びしょ濡れのカエル」。転じて「びしょ濡れになるほど浴びるようにドリンクを楽しんでほしい」という思いを込めた。
プロデュースは、ミシュラン二つ星で「世界のベスト50レストラン」にもランクインする、日本を代表するフレンチ「フロリレージュ」 オーナーシェフの川手寛康さん。超予約困難な「フロリレージュ」と違ってまだ比較的予約が取りやすいのに、「フロリレージュ」らしさを感じる料理を手軽に味わえると、たちまち評判になった。

「ソドゥン フロッグ」では、「フロリレージュ」のバーテンダーとして、変幻自在な創作カクテルで多くのファンから支持されてきた高田真之助さんがアルコール、ワインを中心に飲料全般に深い知識を持ち、川手さんの料理にドリンクを合わせてきた児島由光さんがここではノンアルコール、川手さんと共にキッチンで経験を積んだ阿久津一輝さんが料理を担当している。
ドリンクとフードのどちらもメインで、ドリンクはアルコールとノンアルコール、フードは“イブニングアフタヌーンティ 9皿の小皿”と名付けられたセットメニュー(カクテルもしくはモクテル=ノンアルコールドリンク4杯とセットで14,500円)のほか、アラカルトもある。
まずは「ガストロ」らしさが詰まったシグネチャーメニュー “イブニングアフタヌーンティ 9皿の小皿”をご紹介しよう。
訪問時(3月)の料理はこちら。
麻布台ヒルズに移転する前の「フロリレージュ」のスペシャリテ“サステナビリティ 牛”をオマージュしてアレンジ。肉の下には割下でさっと炒めた長ねぎとえのきが潜んでいる。割下をベースにした出汁とビーツのソースを添えて。

生地にほうれん草を練り込んだ、ビジュアル的にもインパクトのあるタコスに、塩昆布とバターで炒めたこごみとホタルイカのコンフィをトッピング。いま世界的にトレンドのタコスを「フロリレージュ」らしく仕上げている。

菜の花はおひたしに。ライスペーパーの内側に海苔を入れて巻くことで、外国人ゲストには鮨を彷彿させる日本らしさを感じる演出。

料理担当の阿久津さんが大好きだという「OSMICトマト」とオリーブオイル、ジェノベーゼソース、マイクロバジルを添えて。「OSMICトマト」は糖度の高い完熟フルーツミニトマト。

海老芋は、ほっくり&ねっとりのテクスチャを引き出すため、80℃でゆっくりと火を入れる。ねっとりとした口当たりが海老芋とリンクする甘海老は、赤ワインビネガーやシェリービネガーをブレンドしたビネグレットでタルタルに仕上げている。

モンブランをイメージして、マロンのピュレと栗の甘露煮を詰めた、スナック感覚のひと品。

糖度の高い雪下にんじんと黄にんじんをみかんジュースのドレッシングでサラダ仕立てに。トッピングはくるみとラムレーズン。沖縄のスパイスミックス「やんばるスパイス」がアクセント。

パプリカを合わせたチップスに、「モロッカンスパイス」をひと振り。

これに小さなカップに入れたコンソメスープ(阿久津さん自身が仕込んでいるそう)を加えて全9品。すべての料理が一度に登場して、食べる順番などルールは一切なく、気の向くまま好きなように楽しめる。カトラリーはフォーク、ナイフ、スプーンのほかお箸も用意されていて、マナーを気にせず自由につまめる気軽さもいい。これだけついてドリンク込みで14,500円とは!(すべてのメニューの中で“イブニングアフタヌーンティ 9皿の小皿”のみ、前日までに要予約)。
川手さんは、料理修業中の若い人やファインダイニングに慣れていない人なども含め、できるだけ多くの人にガストロノミーを体験してほしいと考えており、麻布台ヒルズにある現在の店舗に移転する前の「フロリレージュ」は、「世界一リーズナブルな二つ星」ともいわれていた(現在も良心的な価格をキープしている)。「ソドゥン フロッグ」では、より手が届きやすい価格を設定している。
ご覧のように、フロリレージュらしい料理にも世界最先端の感性が光るが、コース仕立てで登場するドリンクもまた創造的で(え、カクテルで水羊羹って何?……とか)、他に類を見ないものばかり。気になるドリンク&アラカルトは後編で詳しくご紹介します!

※文中の高田さんのお名前の漢字「高」は、正しくは“はしごだか”です。ネット上で正しく表示されない可能性があるために「高」と表示しています。
文:詩文 shifumy 撮影:よねくらりょう