大きな仕事がひと段落した機会に、青森へ温泉旅行に向かった松尾さん。温泉を堪能した後はここでしか味わえないカレーを!ということで向かった先とは――。
長丁場の舞台がひと段落ついたので、勢いだけで東京駅から東北新幹線で新青森へ向かった。酸ヶ湯温泉の千人風呂に入りたくなったのだ。テレビのニュースで豪雪のリポートの時によく紹介されている景色に浮かれ、煮干し出汁の酸ヶ湯蕎麦を手繰り、青森駅近くに戻った時には身体中から硫黄の匂いがしていたかもしれない。
海鮮居酒屋で青森の銘酒をきこしめし、翌朝はすでに体がスパイスを求めている状態で、せっかくの機会なので青森でしか食べられないカレーを食べようということになった。前夜、居酒屋の後で立ち寄ったバーの女性バーテンダーからお薦めとして教えられたカレーは、「牛乳味噌カレーラーメン」なる新名物か、「納豆トッピングスパイスカレー」だという。悩みに悩んだ末、後者を食べることにした。
アーケード商店街沿いにある「ハマカレー」の店舗には、黒板の置き看板などはあるが、固定の看板のようなものはない。カウンター内にはクラフトビールのタップが並んでいるので、ひょっとすると夜は別の方がバーとして時間でシェアしているのかもしれない。
毎週メニューが変わるらしく、この週は「ちぢみほうれん草と春菊のサグチキンカレー」と「シャケときのこのココナッツカレー」の2種だった。トッピングに辛味ペーストと茹で玉子をお願いしたが、なぜか納豆はお願いしそびれてしまった。
開店時間早々で、先客はお2人、常連さんの雰囲気だ。何人かテイクアウトの方が受け取りや注文に出入りしている。
程なくしてカレーが到着した。はなやかなもりつけで嬉しくなる。ひと口食べると洗練されたバランスの良いスパイス使いを感じた。優しさの中にも残る辛味、これはペーストのトッピングは不要だったかと思ったが、これは別物で鋭いが旨味と塩味を感じるもので、グレイビーと和えれば深みが増すのだ。
こちらのサグはちぢみほうれん草と春菊のブレンドで、深い緑色で落ち着いた苦味がほのかにある。鶏は大ぶりの肉がごろごろ入っていて食べ応えがある。
添えられていたレモンをライスやグレイビーにかければ、酸味が若々しい雰囲気に広がり上手い味変を楽しめる。
水はおしゃれなFUJI SUN SUIがペットボトルで提供される。「残ったらそのままでも、お持ち帰りになっても大丈夫です」とはありがたい。説明も丁寧で、陸奥の優しさを勝手に感じるのだった。
文・撮影:松尾貴史