とある日、無性にスリランカカレーが食べたい気分だった松尾さんは、阿佐ヶ谷で真新しいカレー店を発見。さっそく食べてみたユニークなスパイスの風味がする一皿とは――。
毎日毎日「カレーが食べたい」と思いつつも、その時々でどんな物を欲しているのかに変化があって、それがまたややこしく楽しいのだ。
昔ながらの洋食屋さん風のカレー、ナンとライスが選択肢にあるような北インド風のカレー、バスマティライスが馴染む南インド風のカレー、中華料理店で食べられるようなカレー、それとは違う魯肉飯風カレー、小料理屋や居酒屋の隠しメニュー的カレー、札幌風スープカレー、関西風創作スパイスカレー、タイ風カレー、ネパール風カレー、スリランカ風カレー、唯一無二の個性的なカレーなどなど。
その日は朝から何故か口がスリランカになっていた。折しも青梅街道を西へ向かって走っているときに、阿佐ヶ谷あたり、中央線の高架と交差する手前あたりの右側に、真新しく胡蝶蘭が並ぶこぢんまりしたオシャレなカレー店を見つけた。
スリランカ人の好青年が最近始めたお店のようだ。
鶏肉はスパイスに漬けて、熟成させ、焼き目をつけてカレーにしている。
他にはない独特の味わいと香りで、スパイスのブレンドがすこぶる気になった。
何でも、本国スリランカのお母さんによるブレンドと焙煎だそうで、これは家宝的秘伝なのかもしれない。
『魚などの食材を使うこともあるんですか?」の質問に、「カラワラ」なるものを出してくれた。
マグロの皮などをしょっぱく漬け込んで作るのだという。ご飯のお供として重宝する家庭料理らしい。
「ルヌミリス」という、モルディブフィッシュを鰹の用に扱って作るご飯のお供的なもので、結構強い塩味だが、これはいいおかずやつまみになりそうだ。
添えられている豆もスパイシーで、夜訪れてつまみとして頂きたい衝動に駆られる。
メニューにあったカモカレーは頼みそびれたが、次はきっと食べてみようと思う。
理由は聞けなかったが、この鴨のカレーはスリランカでは男性ばかりが好んでたべる食材だとか。
郷土愛に満ちたスリランカの得難い味が楽しめる貴重な店になりそうだ。再訪確実。
文・撮影:松尾貴史