懐かしき洋食をたっぷり食べようと思ったが、最後まで辿り着けなかった......＠経堂「洋食バル ウルトラ」｜編集長・植野の食日記　2023年8月1日（火）

学生時代の味が蘇るだけでなく、かつての欲望が満たされる！

学生時代、下北沢でバイトをしていて、昼の休憩時間にはよく「下北洋食屋マック」に行きました。商店街の地下、カウンターとテーブル席が三つほどの小さな店で、“ハンバーグとサラダの店”とありましたが、サラダを頼んでいる客は見たことがなく、ほとんどの人が“ハンバーグミックスボリュームメニュー”から選んでいました。

ハンバーグとの組み合わせバリエーションがいろいろあるのですが、僕はハンバーグと生姜焼き、ハンバーグとカニコロッケの2択でした（メニュー名ではなく「ミックス2番！」などと番号で注文していました）。狭いキッチンで、凛とした姿勢で同時に複数の料理を手際よくつくっていくマスターが格好良くて、カウンターに座ってじっと眺めていました。メインのハンバーグは平らな大判タイプで、香ばしく焼き上げた中に優しい食感があり、軽やかなソースがよく合いました。人気の店だったのですが、マスターが体調を崩し、2008年に閉店。その後亡くなってしまいました。

もうあの味が食べられないのはとても残念……と思っていたら、2012年にマスターの息子さんが経堂で「洋食バル ウルトラ」を開いたのです。行ってみると、懐かしのハンバーグは健在でした。スタイルも味も「マック」そのもの。さらに、メニューが多彩、お酒もあります！

「マック」はご飯を食べる店でしたが、「ナポリタンもあればいいのに」「これで酒が呑めればいいのに」などと密かに思っていたことが「ウルトラ」では全て叶うのです！　実に幸せ。一人でカウンターでハンバーグやナポリタンをつまみながら呑んだり、奥の個室的テーブルで友人たちと洋食宴会をやったこともあります（洋食をつまみに宴会するのは楽しいですよ！）。

この日は久しぶりに訪れただけに気合十分、意欲満々。あれこれ食べ倒そうとまずはビールを呑みながらメニューとにらめっこ。とりあえず、野菜の旨味が軽やかに凝縮したラタトゥイユとシンプルだけどフレンチ的上品な味わいのポテサラを頼んで、呑みつつ今後の展開を考えます。

もちろん、ハンバーグは必須として、締めはナポリタンかオムライスか、でもカツサンドも旨そう。とりあえずハンバーグを注文して、マックを思い出す味わいに浸りながら、でも食べたことがないものを食べてみよう、と思い立ち、チキンのガーリックソテーをオーダー。

おお、たっぷりのきのこがのって、香ばしく焼かれた鶏肉が旨い。下にしかれたマッシュポテトと軽快でコクのあるソースもよく合う！
うーん、満足……あれ？満足だけど、満腹にもなったぞ……。やばい。締めにたどり着かない……。残念ながら、この日はナポリタンやオムライスまでいけませんでした。
次に行ったら、メインはひとつにして絶対締めを食べよう！