dancyu本誌から
dancyu8月号「新しいカレーライスが最高だ。」絶賛発売中!

dancyu8月号「新しいカレーライスが最高だ。」絶賛発売中!

dancyu8月号は毎夏恒例の「カレー特集」です。今、食べたいカレーとは――「スパイスカレー」の名が市民権を得て、複雑に細分化が進んでいる今だからこそ、「カレーとご飯」の普遍的かつシンプルな魅力に迫ります。

カレーと米。

表紙
P16+17
P23
P56+57
dancyu2023年8月号
若い頃、二日酔いになると、よく東京・日本橋にカレーを食べに行っていました。「印度風カリーライス」という名、でも蔦に覆われた外観から、“蔦カレー”と呼ばれたその店のメニューは、シャバッとしたスープ状のカレーにゴロッとした豚肉やじゃがいもが入った素朴な一皿のみ。にんにくと唐辛子が強烈に効いて食べ進むうちに汗だくになります。鮮烈な刺激と戦いながら、食べ終えると、あら不思議、二日酔いが治ってすっきり。カレーを食べに行くのか、二日酔いを治しに行くのかわからない感じでしたが、その店は2007年に閉店、懐かしい思い出となりました……。
と思っていたら、数年前に“蔦カレー”を再現している店を知りました。八丁堀の「ラティーノ」というメキシコ料理の店で、「印度風カリーライス」に通っていた主人が試行錯誤を重ねながら独自に再現したそうです。確かに、見た目も味も懐かしの“蔦カレー”に近い。しかし、何かが違う……そう、二十代の二日酔い状態で食べていたときと今とでは、胃のコンディションも経験値も考え方も生活も違うので、“味”は同じだったとしても、“味わい”は異なります。“蔦カレー”の感慨は、自分の記憶を辿ることにあったのかもしれません。特にカレーはスパイスの刺激とともに、その時の記憶が脳裏に刻まれやすい料理のような気がします。だから、みんなそれぞれ自分にとっての大切なカレーがあるのでしょうね。

dancyu編集長 植野広生
dancyu2023年8月号
dancyu2023年8月号
特集:新しいカレーライスが最高だ。
A4変型判(164頁)
2023年6月6日発売/980円(税込)

写真:木村拓