有楽町の交通会館には魅力的な飲食店がいろいろあります。店に迷いつつ「あけぼの」に決めたのですが……店頭に並ぶ間もメニューを迷ってしまい……ビルの地下なのに入り組んだ構造の配置といい、交通会館はランチのラビリンス(迷宮)なのです。頭の中でいろいろさまよった挙句に頼んだのは――。
揚げ物好きが連日行列をつくる「あけぼの」は、とんかつのほか、アジフライ、カニコロッケ、メンチカツ、串カツ、エビフライ……さまざまな揚げ物メニューが揃っています(「とんかつ」と言っても、とんかつ定食、中トンカツ定食、ロースカツ定食、ヒレカツ定食、かつ煮定食とバリエーション豊富です)。しかし、ほとんどの客がかつ丼を注文します。僕も名物のかつ丼を食べようと思って並んだのですが、しかし、並びながら品書きを眺めている間に、迷いが生じてきました。
「かつ丼ではなくとんかつ定食にするか。でもメンチカツもいいな。いやアジフライか……」
この店は、ガラス張りの店頭に並んでいる人は、注文を決まるとホワイトボードに書いて店内に見せるシステムなのですが、愛想のいいおねえさんが「注文決まったら書いて見せてください」と書いてあるウチワをこちらに向けてふっています。思わずホワイドボードについ書いたのは自分でも想定外(?)の「お好み定食 アジフライ、カニコロッケ、メンチカツ」でした。
順番が来て、カウンターだけの狭い店内に入ると、案の定、僕以外の10人は全員かつ丼。一人の揚げ手が次々にとんかつを揚げ、それをもう一人のスタッフが次々にかつ丼に仕上げていきます。ご飯はガス火の羽釜炊きなのがいいなぁ。などと眺めているうちに、漬物、ご飯と味噌汁、そして三種を選択した盛り合わせの「お好み定食」が出てきました。ザクッとした衣に包まれて揚げられた小ぶりの三品がいい感じで皿に納まっています。そして、付け合わせの漬物がきっちり盛られているのが素晴らしい。常々、「メインの料理には店の技が、付け合わせには店の良心が現れる」と思っていますが、まさにこれです。
アジフライは醤油とソースで、カニコロはタルタルソースとソースで、メンチカツはソースと辛子で味わいつつ、ご飯と味噌汁と漬物を食べる。当たり前の定食ですが、当たり前の幸せな食事です。
満足してお会計をお願いすると、おねえさんが明るい声で「ありがとうございます! おにいさん、お気をつけて、いってらっしゃい!」。
お釣りとともに元気もいただきました。
……でも、次に行った時はかつ丼にしよう。だって、周りの人が食べているのがあまりにも美味しそうだったから……(迷いは続く)。
文・写真:植野広生
揚げ物好きが連日行列をつくる「あけぼの」は、とんかつのほか、アジフライ、カニコロッケ、メンチカツ、串カツ、エビフライ……さまざまな揚げ物メニューが揃っています(「とんかつ」と言っても、とんかつ定食、中トンカツ定食、ロースカツ定食、ヒレカツ定食、かつ煮定食とバリエーション豊富です)。しかし、ほとんどの客がかつ丼を注文します。僕も名物のかつ丼を食べようと思って並んだのですが、しかし、並びながら品書きを眺めている間に、迷いが生じてきました。
「かつ丼ではなくとんかつ定食にするか。でもメンチカツもいいな。いやアジフライか……」
この店は、ガラス張りの店頭に並んでいる人は、注文を決まるとホワイトボードに書いて店内に見せるシステムなのですが、愛想のいいおねえさんが「注文決まったら書いて見せてください」と書いてあるウチワをこちらに向けてふっています。思わずホワイドボードについ書いたのは自分でも想定外(?)の「お好み定食 アジフライ、カニコロッケ、メンチカツ」でした。
順番が来て、カウンターだけの狭い店内に入ると、案の定、僕以外の10人は全員かつ丼。一人の揚げ手が次々にとんかつを揚げ、それをもう一人のスタッフが次々にかつ丼に仕上げていきます。ご飯はガス火の羽釜炊きなのがいいなぁ。などと眺めているうちに、漬物、ご飯と味噌汁、そして三種を選択した盛り合わせの「お好み定食」が出てきました。ザクッとした衣に包まれて揚げられた小ぶりの三品がいい感じで皿に納まっています。そして、付け合わせの漬物がきっちり盛られているのが素晴らしい。常々、「メインの料理には店の技が、付け合わせには店の良心が現れる」と思っていますが、まさにこれです。
アジフライは醤油とソースで、カニコロはタルタルソースとソースで、メンチカツはソースと辛子で味わいつつ、ご飯と味噌汁と漬物を食べる。当たり前の定食ですが、当たり前の幸せな食事です。
満足してお会計をお願いすると、おねえさんが明るい声で「ありがとうございます! おにいさん、お気をつけて、いってらっしゃい!」。
お釣りとともに元気もいただきました。
……でも、次に行った時はかつ丼にしよう。だって、周りの人が食べているのがあまりにも美味しそうだったから……(迷いは続く)。
文・写真:植野広生