学生の街・高田馬場には、チキンカレー一本で勝負するカレースタンドがあった──dancyu9月号カレー特集「ライスカレー シン・名店」で取材した4店舗の、誌面で紹介しきれなかった“もう一つの”絶品カレーを味わうおかわり企画。今回は、アンチョビを隠し味に使った絶品チキンカレーと、その美味しさをブーストするトッピングを紹介します!
いりこで有名な伊吹島産の鰯を使った熟成アンチョビ。その一風変わった素材を隠し味にした個性的な美味しさと、安くて旨くて早く出てくるという、昔ながらのカレースタンド的な風情が特徴の「プネウマカレー」。
メニューは基本的にチキンカレーのみ。普通サイズはご飯280gとかなり多くて580円、少なめでも230gで550円と十分な量で提供される。程よい酸味とシャープな辛味、しっかりした塩気と、アンチョビの深い旨味が重なり合い、女性でもペロリと食べきってしまうという。
チキンカレーはそのままシンプルに食しても、もちろん満足できるのだが、トッピングを加えれば楽しみはさらに広がる。トッピングにはゆでたまご、チーズ、ヒヨコ豆のピクルスがあり、50円~70円という破格の値段設定だ。お薦めは、ヒヨコ豆のピクルス。カレーのトマトとヨーグルトによる自然な酸味に、ピクルスのビネガーのくっきりした酸味が加わることによって味の輪郭がはっきりして、美味しさが際立つ。
さらに、店で人気なのがチーズのトッピング。チーズはカレーの美味しさを引き上げる最強の武器であるが、「プネウマカレー」ではカレーにチーズをのせるだけでなく、バーナーで炙って焼き目を入れるという手間のかけよう。チキンカレーのシンプルな美味しさに、チーズの濃厚な旨味に炙りの香ばしさが加わり、反則級の旨さとなるのだ。
それにしても、普通盛りにチーズとピクルスの2種類をトッピングしても700円という安さなのが恐れ入る。
店主の長谷 薫さん曰く、「自分が外で昼飯を食おうとした時、あんまり高いのを食べようと思わないんですよ。探せば700円くらいでも十分美味いものはあるし、そういうのを食いたいって思うので。同じように考えている人の為に、頑張って値段は抑えるようにしているんです」。
材料の原価はもちろん、調理の工程数の多さをみても、多くのカレー店は安すぎるくらいだと感じているのだが、その中において「プネウマカレー」の安さは突出している。さらにいえばこの店は、他の飲み物や料理で利益のバランスを取るわけでもなく、チキンカレー一本で勝負しているのだ。
「うちは一人でやってますから、自分が食って行ければいいと思ってるんです。まぁ、今までもなんとか続けてこれたので、なんとかなるでしょう(笑)」と、長谷さんは飄々と語る。
手持ちが少なくても美味しいカレーで腹一杯にしたい。そんな時、「プネウマカレー」を覚えておくと良いだろう。電車賃を上乗せしたって安いぐらいだ。しかし、食べ終えて店を出る時には、その価格の何倍もの満足感を得られているはずだ。
文:縫田暁言 写真:長谷川 潤
*8月11日〜21日まで夏季休業。最新の営業状況はTwitter(@pneumacurry2016)にて確認を。