松尾貴史のカレードスコープ
思い出の街で出会った洗練のチキンカレー|松尾貴史のカレードスコープ⑬

思い出の街で出会った洗練のチキンカレー|松尾貴史のカレードスコープ⑬

子供の頃暮らした街を久しぶりに訪れた松尾貴史さん。昔はカレー専門店を見かけたことがなかったその街に、気になるお店が出来てました。

初めての店で嬉し懐かし体験

三ノ宮駅から徒歩で10分ほど神戸の税関に寄ったあたりの、私が4歳から14歳まで10年間暮らしたアパートの周辺には、ついでにカレーを出す喫茶店や中華料理店はあったが、専門的にカレーをつくる店はなかった。うちの斜向かいのブロックに、「西日本一高いビル」だった神戸商工貿易センタービルが建ち、ビジネスマンも多く集まるようになったけれど、カレーの需要はそれほどなかったのだろうか。

所用ために神戸へ赴いたので、グルメサイトで「神戸」「カレー」と検索してみると、上位に出て来て目を引いたのが「チキンカレー サトナカ」だった。
カウンターのみの8席の店で、たまたま間が良かったと見えて並ばずに座れた。なかなかに洒落た内装で、洗練された雰囲気。
店主が1人で切り盛りしているので注文を決めて(と言ってもチキンカレーだけなのだけれど)待っていると、振り返ったご主人が小声で「松尾さん……ですよね?若い頃、斉藤由貴さんとなさっていたラジオ番組、『由貴とキッチュの夜にもふかしぎ』、福岡で聴いてました」と、嬉し懐かしいことを言ってくださり少し慌ててしまった。

カレー

カウンターの高い台を越えて、ご主人が乗り出してカウンターに皿を置いてくださった。チキンカレーはスパイシーとマイルド、並盛りと大盛りが選べて、トッピングには関西ならではの生玉子、チーズ、味付け玉子(半熟)などがあり、私はスパイシー並盛り半熟玉子のトッピングでお願いした。
美味い。シンプルに感じた見た目とは裏腹に、奥行きのあるスパイスの交錯が辛いが清涼感を与えてくれる、すこぶる洗練された味だ。そして値段設定の良心的なこと!
味や内装の雰囲気の洗練された感じは、ご主人がファッションの仕事をされていた影響かもしれない、と勝手な想像をしながら、あれこれ聞きたくとも作業を滞らせてしまうので、質問はやめておくことにして退店。美味しゅうございました。

外観

店舗情報店舗情報

サトナカ
  • 【住所】兵庫県神戸市中央区八幡通1-1-21
  • 【電話番号】070-5413-1511
  • 【営業時間】11:30~14:15 (LO) 17:00~20:15(LO)
  • 【定休日】日曜、祝日
  • 【アクセス】JR「三ノ宮駅」より12分

文・写真:松尾貴史

松尾 貴史

松尾 貴史 (俳優、タレント、ナレーター、コラムニスト)

1960年5月11日生まれ。神戸市出身。大阪芸術大学デザイン学科卒業。 俳優、タレント、コラムニスト、“折り顔”作家など幅広く活躍。下北沢のカレー店「般゜若」(パンニャ)店主。著書に『人は違和感が9割』、『違和感ワンダーランド』、『ニッポンの違和感』(毎日新聞出版社)等がある。