「サエキ飯店」店主の佐伯悠太郎さんとジョージアワインの出会いを聞かせてもらったところで、具体的にどんな料理と合わせているのかを見ていこう。オーソドックスな広東料理とジョージアワインの相性はいかに?
東京都目黒区にある「サエキ飯店」は、店主の佐伯悠太郎さん自身が大好きなジョージアワインと広東料理を愉しめる料理店。
現在常時16種類ほどのジョージアワインを扱っている。
その中から特に好きな銘柄を5つ挙げてももらった。
それが以下に紹介するワインだ。
「自分が好きなワインしか置いていないので、店で提供しているワインは全部好きです。その中からいま自分が飲みたいワインを選びました」
左から銘柄を書き出そう。
「ZAZA DARSAVELIDZE(ザザ・ダルサヴェリゼ) ルカツィテリ2011」、「OKRO'S WINE(オクロズワイン)ナチュラル・スパークリングワイン2016 ツォリコウリ」、「OUR WINE(アワワイン) ルカツィテリ&サペラヴィ」、「LAGAZI(ラガジ) ルカツィテリ2017」、「PHEASANT'S TEARS(フェザンツ・ティアーズ) ムツヴァネ2012」である。
グラスワインは開栓済みのワインの中から頼めるが、ジョージアワインはボトルで注文した方がより愉しめると佐伯さんは説く。
「ジョージアワインはノンフィルターなので、濁っているものが多いんです。なので、開栓したてで最初に注ぐワインと、ボトルの底では色も味わいも異なります」
1本のボトルでも、上澄みのようなワインと、澱を含んだにごり酒のようなワインでは、味わいはかなり違う。
私はボトルの底の、濁っているワインが無性に好きだ。旨味を含んでいて、濃厚で、奥深い味わいだからだ。
ボトルで注文すれば、澄んだワインも濁ったワインも両方楽しめるというわけである。
「サエキ飯店」は広東料理をコースで食べることができる。
コース料理の中から、オーソドックスな料理を3品つくってもらい、佐伯さんならそれぞれの料理にどのワインを飲みたいかを選んでもらった。
“鳩の煮汁で炊いた豚耳と豚足”。柔らかくゆでた豚耳と豚足を、鳩を炊くための香辛料入りのタレでさらに炊いて冷まし、型で固めた冷前菜である。八角、ローリエ、陳皮、山椒、生姜、ネギ、パクチー、草果といった香辛料の風味が冴え、鳩のエキスもしみ出した圧倒的な旨味が広がった!
ワインはIago Bitarishvili(イアゴ・ビタリシュヴィリ)という生産者の「MARINA(マリナ)2017」。ブドウ品種は、ジョージアワインでよく使われているムツヴァネで造られている。
佐伯さんはこのワインを選んだ理由をこんな風に語った。
「豚耳と豚足と鳩の旨味と風味が合わさっていて、タンニンを多く含むこのワインと鳩の持つ鉄分が多い風味が合うと思うんです。豚耳と豚足の煮こごり特有の、コリッとした食感がこの料理の特徴なので、冷たいうちに食べてワインと合わせてみてください」
広東料理の特徴でもある複数の香辛料を使いこなしたこの1品と、ジョージアワインが不思議とよく合う。料理を食べながら、このワインを飲むとより複雑な味わいと風味が醸し出され、絶妙なコンビネーションが生み出される。
さて、次は、どんな料理が出てくるのだろう?
――つづく。
1985年、愛媛県松山市生まれ。「聘珍樓」、「福臨門酒家(現:家全七福酒家)大阪店」、「赤坂璃宮」で修業。ワーキングホリデーを利用し、香港で1年間研鑽を積む。東京・外苑前「楽記」(閉店)の料理長を務めた後、香港・広州を皮切りに世界33カ国を約1年間かけて周遊。帰国後、東京・外苑前「傳」で研修。2019年4月に独立し、「サエキ飯店」を開業する。
文:中島茂信 写真:オカダタカオ