「四川家庭料理 中洞」の十皿
唐辛子 肉そぼろ和え麺|「四川家庭料理 中洞」の九皿目

唐辛子 肉そぼろ和え麺|「四川家庭料理 中洞」の九皿目

九皿目は唐辛子 肉そぼろ和え麺。中国語で「素椒雑醤面(スゥジャオザージャンメン)」。汁なし担々麺のようでいて、それとも違うすっきりした辛さにノックアウト!ふんにゃりコシのない麺はよーく混ぜるほどにたれが絡んで、旨くなる!食後感も軽やかです。

すっきり辛い。混ぜて、混ぜて、おいしくなる。

四川の麺料理は奥深い。微妙な違いの多種多彩な麺料理の世界が広がっている。麺はおもに小麦粉がベースで、玉子は多用しないのが特徴だという。
「四川家庭料理 中洞」店主の中洞新司(なかほらしんじ)さんは、語学と料理のために四川省に留学していたときは、ほぼ毎日麺料理を食べていた。「黒酢と辣油のサンラーメン」(三皿目で紹介)と共にはまったのが「素椒雑醤面(スゥジャオザージャンメン)」だった。

唐辛子 肉そぼろ和え麺
シンプルでシャープな辛さがクセになる「唐辛子 肉そぼろ和え麺」1,080円。胡麻の風味がきいた担々麺とも違うニュアンス。

「肉みそ、唐辛子、山椒が入っているだけの超シンプルな麺で、毎日のように食べていました。汁なし担々麺ともニュアンスが違うんです。すっきり辛くて本当にクセになります」

よく和えて食べる
白くたおやかな麺とたれ、肉そぼろをよく和えて食べるべし。ゆでたキャベツがいい口直しになる。

食べ方のポイントは、よくよく混ぜること。
たれも肉そぼろもカシューナッツも、一体になるほどによく混ぜる。
中洞さんがこの料理を自分なりに再現するのに必要なのは、すっきり辛いたれに寄り添う麺だった。

コシのない、そうめんのような麺。

麺は特注をすることにした。
「玉子もかん水も使わないそうめんのような麺が理想なんです。かん水を入れるとコシは出るんですが、アルカリ性の香り、いわゆるアンモニア臭も出てしまいます。僕は、ふんにゃり柔らかく、たれに寄り添ってくれる麺がよかったんです」
だから、麺の原材料は小麦粉、水、塩のみ。「黒酢と辣油のサンラーメン」で使っているものと同じだが、汁なしの和え麺なのにするすると入ってくるような軽やかさがある。

小麦粉、水、塩のみでつくる特注の麺。
ゆで時間は短め。リズムよく湯を切る。
箸で整えて、たれをしいた皿に盛り付ける。

「中洞」に旨味調味料が必要ない理由。

店に掲げられた品書きの黒板。その右端にさりげなく書かれているように、「中洞」では旨味調味料は使っていない。
「旨味調味料を入れることで劇的においしくなるなら、使ってもいいと思うんです。僕は、使わなくてもおいしいじゃん、と思えるものがつくれたので使っていないだけです。コクは自家製の調味料を使って出しています。後味もいいし、喉も乾きません。おまけにお金もかかりません」

最後に、中洞さんが「最後に、残ったたれにご飯を和えるのも好きなんです」と教えてくれた。
一滴も余さない。余したくない。
店主自身がそう思える麺料理なのだ。

一品でも完結している料理ながら、ご飯や乳酸発酵の漬物と一緒に食べても◎。
肉そぼろや余ったたれとひと口分のご飯で和えて完結させるのもあり。

――明日につづく。

店舗情報店舗情報

四川家庭料理 中洞
  • 【住所】東京都文京区千石4‐43‐5
  • 【電話番号】03‐5981‐9494
  • 【営業時間】11:00~14:00(L.O.)、17:00~21:00(L.O.)
  • 【定休日】月曜(祝日の場合は火曜)
  • 【アクセス】JR・都営地下鉄「巣鴨駅」より7分

文:沼由美子 写真:森本菜穂子

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沼 由美子(ライター・編集者)

横浜生まれ。バー巡りがライフワーク。とくに日本のバー文化の黎明期を支えてきた“おじいさんバーテンダー”にシビれる。醸造酒、蒸留酒も共に愛しており、フルーツブランデーに関しては東欧、フランス・アルザスの蒸留所を訪ねるほど惹かれている。最近は、まわれどまわれどその魅力が尽きることのない懐深き街、浅草を探訪する日々。