「四川家庭料理 中洞」の十皿
肉そぼろと春雨の唐辛子旨煮|「四川家庭料理 中洞」の七皿目

肉そぼろと春雨の唐辛子旨煮|「四川家庭料理 中洞」の七皿目

七皿目は肉そぼろと春雨の唐辛子旨煮。現地では「肉未粉絲(ロウモフェンスゥ)」という。手塩にかけて育てている豆板醤のコクと挽き肉の旨味を吸った春雨と赤い油が食欲を猛烈に刺激する。ひと口食べたら……大至急、ご飯くださ~い!

赤い油が白飯を呼ぶ!

「豆板醤を使った赤い油がファ~っと広がって、春雨がその油をバッと吸って、噛みしめると肉そぼろの旨味が口中にワッと広がる。完全にご飯のおかずですね。うちのグランドメニューですし、現地でも高い値段の料理ではなく、日常的に食べられています」

「四川家庭料理 中洞」店主の中洞新司(なかほらしんじ)さんが思い入れある料理の一皿としてそう語るのは、「肉そぼろと春雨の唐辛子旨煮」である。

唐辛子の辛味、豆板醤のコク、肉そぼろの旨味が一体に!972円
唐辛子の辛味、豆板醤のコク、肉そぼろの旨味が一体に!972円

店では、油がよく絡む細い緑豆春雨を使っているが、現地では幅広の太い春雨を使う店もある。これもまた日常のおかずであるがゆえに個性はさまざまだ。

味の決め手は、フツフツと泡が立つ、まさに発酵真っ最中の豆板醤を使うこと。
3種の豆板醤を混ぜ、清酒を注ぎ、毎日「おいしくなぁれ」と念じながらかき混ぜる、“祈りの豆板醤”である。
塩気よりもコクが深く、旨味調味料を加えずとも奥深い旨味が広がる。熱した油に、ねぎ、にんにく、生姜、唐辛子を炒め、肉そぼろと春雨を投入して煮る、というごくシンプルな調理法だというのに。

「四川出身のお客様が『地元よりおいしい!』と言ってくださったこともあります」と中洞さん。
これが、激しくご飯を呼ぶ。
旨味を吸った春雨を豪快にご飯に乗せる。気取ってちゃいけない。大きめのひと口でもりもり頬張る。

啊!感到幸福……!(ああ!幸せ……!)

汁気を吸った春雨をご飯にオン!まさにご飯がすすむ絶好のおかずとなる。
汁気を吸った春雨をご飯にオン!まさにご飯がすすむ絶好のおかずとなる。


――明日につづく。

店舗情報店舗情報

四川家庭料理 中洞
  • 【住所】東京都文京区千石4‐43‐5
  • 【電話番号】03‐5981‐9494
  • 【営業時間】11:00~14:00(L.O.)、17:00~21:00(L.O.)
  • 【定休日】月曜(祝日の場合は火曜)
  • 【アクセス】JR・都営地下鉄「巣鴨駅」より7分

文:沼由美子 写真:森本菜穂子

沼 由美子

沼 由美子 (ライター・編集者)

横浜生まれ。バー巡りがライフワーク。とくに日本のバー文化の黎明期を支えてきた“おじいさんバーテンダー”にシビれる。醸造酒、蒸留酒も共に愛しており、フルーツブランデーに関しては東欧、フランス・アルザスの蒸留所を訪ねるほど惹かれている。最近は、まわれどまわれどその魅力が尽きることのない懐深き街、浅草を探訪する日々。