八皿目はカリカリ大根特製辛味醤油漬け。特製たれに漬けたご飯が進むおかずであり、箸休めの一品である。そして、漬物ときたらお茶。「中洞」には、ほっとくつろげる中国茶各種も揃っています。
「四川家庭料理 中洞」には、料理と料理の間をつなぐ小菜はいくつもある。
ピーナッツ山椒、ザーサイ胡麻油和え、叩ききゅうりガーリック香味オイル和え。
それでも、店主の中洞新司(なかほらしんじ)さんが自身の料理の十皿に挙げるうちのひとつが、「カリカリ大根 特製辛味醤油漬け」である。
そのルックスは、はっきり言って拍子抜けするほど地味である。
中洞さんは、思い入れはいずこに?
「後を引く、クセになる漬物なんですよ。四川ではどちらかというと、食堂よりはレストランで出されます。店それぞれの特製たれに漬けてあって、これがご飯が進んじゃって!僕は最初に注文しておいて、料理の合間に白いご飯と一緒に食べるのが好きです。現地のものは甘い味付けが多いので、僕は中国の赤酢を使ってさっぱりさせています」
大根は皮ごと用いる。特製たれには、黒酢よりも主張がなく、まろやかな酸味の中国産の赤酢(紅酢)を使用。醤油もコクのある中国産を用いている。
品書きに「カリカリ」と謳っているとおり、皮ごと漬けた歯ごたえのある食感がいい。
「中洞」は、中国茶も揃えている。
中洞さんが愛飲しているのは中国は四川省産のそば茶で、ほかにこんなラインナップがある。
王道の「凍頂烏龍茶(トウチョウウーロンチャ)」は、飲みやすくて辛い料理のお供になる。
「苦莽茶(クーチャオチャ)」は、中洞さんが四川省で買い付けてきた香ばしくて後味のよい茶。高血圧、高コレステロール、高血糖の改善によいとも。
「普洱茶(プーアルチャ)」は、油を分解し消化促進、整腸作用などが期待でき、「茉莉花茶(モーリーホヮチャ)」は、ストレス緩和、リラックス効果、脂肪燃焼の効果があるのだとか。
ほかに、甘くフルーティな「鳳凰単叢(ホウオウタンソウ)」もある。
いずれも湯を差せば、3煎ほど愉しめる。
四川の刺激的な料理の合間には、こんな安らぎの味も必要なのだ。
――2019年7月28日につづく。
文:沼由美子 写真:森本菜穂子