イスラム横丁で一番エッジの立ったハラルフードショップ「ジャンナット ハラルフード」へ。店に入ると目に飛び込んでくるのは、ずらりときれいに並んだ数多のスパイス、さまざまなソースに乾物、お菓子!どれもが各国の人気ブランドというから、びっくり。イケメンのスタッフが忙しなく動き回っていて、活気も溢れている。イスラム横丁を巡るなら、ここからですよ。
「新宿八百屋」の荒巻秀俊さんからイスラム横丁の情報を仕入れ、気合を入れ直して歩き出した。まずは八百屋の奥にある「THE JANNAT HALAL FOOD(ジャンナット ハラルフード)」へ。この店が最高に面白かったのだ。
店はイスラム横丁北の端っこにある。間口の狭い入口には、分厚い透明のビニールカーテンが下がっていて、それをバキバキとかき分けながら中へと進む。簡単に出入りしづらい雰囲気が漂っているが、入店してしまえば、そこはもう、スパイスパラダイス!なんと、40種類以上ものスパイスが小分けになって整然と並んでいるのだ。世のカレー好きたちよ、スパイスがほしければ迷わず新大久保へ進路を取れ!と叫びたくなる見事な品揃え。
“カルダモン”はありますかと聞けば、はいはい、ブラウンもグリーンもありまっせ、とのこと。“クローブ”?ナイわけないでしょ。“ベイリーフ”も、葉脈が縦に流れている正真正銘のインド産が袋にみっちり詰まって300円。安い!我が家の近所では入手できなかったインドのスパイス、“アジョワンシード”も「あるよ」と手渡してくれた。ほかに珍しいものはあるかと尋ねると、「“ロングペッパー”。これもカレーに使うね」。いわゆる“ヒハツ”というスパイスで、ホールのまま袋詰めしてある。50gで500円。ざっと調べたところ、どこよりもネットよりも安かった。恐るべし、「ジャンナット ハラルフード」!
「ジャンナット ハラルフード」が素晴らしいのは、スパイスを詰めたビニール袋に商品名(日本語と英語、ときどきヒンズー語などで表記)、内容量、価格をプリントしたラベルを貼りつけてあること。イスラム横丁で日本語のラベルを貼付してある店はここだけではなかろうか。ラベルがあれば、買い物をするときも、キッチンで保存するときにも日本人にとって本当に便利だ。ご丁寧に“ロングペッパー”を「長いペッパー」と訳してあったり、“スターアニスホール”を「スターアにスホール」と変換ミスもあったりするが、そこはご愛嬌。「一度に3,000~4,000円分のスパイスを買っていく日本人もいるよ」と、まつ毛くりんくりんのイケメン店員さんが教えてくれた。
スパイスではないが、個人的に気になる食材があった。dancyu2018年9月号「スパイスカレー 新・国民食宣言」の108pに掲載されている“アルバハラの実”だ。埼玉県八潮市にある有名なパキスタン料理店のビリヤニに使われている、梅干のような酸っぱい木の実で、日本では手に入らないと本文に書いてある。「あるはずないよね~」と思いつつ、ダメもとで聞くと「あなたの後ろの冷蔵庫にあるよ」だって。えええええっ、あるの?あるんだ、“アルバハラ”。もう一度言わせて!恐るべし、「ジャンナット ハラルフード」!
店内をぐるりと見渡すと、スパイスだけでなく、インドや東南アジアなどの調味料やお茶、お菓子、長粒米にさまざまな豆、インドの主食、ナンやチャパティや肉、魚介も冷凍で販売されている。オーストラリア産の冷凍の羊肉ブロックが1kg700円だった。「肉のハナ*サ」より安いなあ……。スリランカカレーの必需品、モルディブフィッシュも発見!650円とはお買い得だ。先ほどのまつ毛くりんくりん君が薦めてくれたビスケットの「レモンパフ」と「ジンジャークッキー」はそれぞれ250円。ジンジャークッキーは、はじめてウィルキンソンのジンジャーエールを飲んだときのような衝撃的な味。子どもが食べたら確実に“泣く”辛さだ。
日本のスーパーでは見かけないシャンプーやヘアカラー、スマホケースなどの日用品も網羅している。ひとつひとつじっくり見ていたら、時間がいくらあっても足りないほど。興味は尽きないのだ。
――つづく。
文:佐々木香織 写真:阪本勇 イラスト:UJT(マン画トロニクス)