
澄んだ鶏のスープに、肉や魚介、野菜を取り合わせた五目スープ。19回目は、具材の繊細な風味が、鶏スープの味わいを際立たせる「三鮮湯(サヌシェヌタン)」です。王道のスープで、中国料理の奥深き「湯(タン)」の世界にふれよう。
きゅうりの爽やかな青い香りがほんのりと広がる、深く上品な味わい。澄んだ鶏スープだからこそ、具材のもつ繊細な風味まで感じ取ることができる。鶏の五目スープ「三鮮湯(サヌシェヌタン)」は、ひね鶏からとったスープが中国料理で最上とされるのも納得の一碗だ。
「三鮮とは、三種の上等な材料を意味します。ただし、必ずしも具は三つでなければいけないということではありません。鶏スープのやさしい味わいを活かすために、具にはあっさりとした鶏肉、あるいは海老やイカなどの淡白な魚介に、数種の野菜を取り合わせます」
湯島聖堂の中国料理研究部でもおなじみだった三鮮湯。家庭向けの講習会では鶏ささみを使い、宴席ではなまこやアワビなどの高級食材が用いられることもあったという。
おいしい鶏スープがあれば、調理自体は簡単だ。あとは澄んだスープの味を濁らせないように、丁寧に具材の下ごしらえをすればいいだけだ。
濃厚な旨味や強い香りとは違う、鮮烈な清らかさ。澄んだスープの奥から鶏のうまみがじんわりと広がり、具材のかすかな香りと混ざり合う。味を重ねるのではなく、余計なものを削ぎ落とすことで、素材それぞれの持ち味を浮かび上がらせる。そんな味に対する研ぎ澄まされた感覚が、この小さな一碗には宿っている。ぜひ自分の舌で確かめてほしい。
| 鶏ささみ | 50g |
|---|---|
| 干し椎茸 | 2枚(水で戻す) |
| 筍水煮 | 30g |
| きゅうり | 1/3本 |
| ひね鶏のスープ | 600ml(※) |
| 日本酒 | 大さじ1 |
| 塩 | 2g |
| ★ 鶏ささみの下味 | |
| ├ 片栗粉 | 小さじ2/3 |
| ├ 塩 | 0.5g |
| └ 酒 | 小さじ1/2 |
※ひね鶏のスープのつくり方は「清湯」を参照。
鶏肉は筋を除いて薄くそぎ切りにし、塩、日本酒で下味をつけ、口当たりをなめらかにするために片栗粉をまぶす。干し椎茸は水で洗って汚れを取り除き、そぎ切りにする。筍は薄切りにする。きゅうりは皮を縞目に剥き、2cm幅の斜めに切ってから縦に薄切りにする。





鍋に湯を沸かし、鶏肉を広げるようにして入れ、筍も加える。ひと煮立ちして鶏肉の色が変わったら、取り出して水気をきる。

鍋にスープを入れて沸騰させ、日本酒、塩を加える。鶏肉、筍、椎茸を入れ、最後にきゅうりを加え、中火でひと煮立ちさせ、アクをすくい、器に盛る。


1949年高知県生まれ。68年、中国料理研究部に所属し、中国料理の道に進む。76年より中国料理研究部出身の故小笹六郎さんが開いた「知味斎」に勤務。87年、東京・吉祥寺に「知味 竹爐山房」をオープンし、旬の素材を取り入れた月替りのコース料理で中国料理界に新風を巻き起こした(2019年閉店)。著書『鮮 中国料理味づくりのコツ たまには花椒塩を添えて』、共著『野菜の中国料理』、『乾貨の中国料理』(すべて柴田書店)など携わった本は、中国料理を志す人にとって必携の書になっている。

文:澁川祐子 撮影:今清水隆宏 調理協力:藤本諭志(「シルクバレル」店主)