
荻窪の名居酒屋「酒と肴 ててて」には、呑んべえ垂涎の名物がある。それが、写真の「酒肴盛り」。仕込んでおけば、家でも連日極上の酒宴が楽しめる、5品の佳肴レシピを教えていただいた。本記事は「日本酒dancyu vol.1」(2025年2月6日発売)から特別公開中。
2026年2月5日に発売を予定している「日本酒dancyu vol.3」。
その発売にさきがけ、2025年に発売した「日本酒dancyu vol.1 ゴールデンエイジの日本酒」から、記事を一部抜粋してお届けします。


曲げわっぱの盆に5種のつまみを品よくのせた酒肴盛りは、東京・荻窪の酒場「酒と肴 ててて」で提供される名物「おひとり様酒肴盛り」。一人で訪れた客でも、少しずつ違った味をつつきながら酒が飲めるように、と用意された専用メニューだ。
「8席のカウンターがお一人様で埋まり、全員が酒肴盛りを召し上がっている。そんな光景も珍しくありません」と、店を営む中田浩司さん成美さん夫妻。複数人で来店し、指をくわえて見ていた客が酒肴目当てに一人で再訪するのも、“てててあるある”だと笑う。

皿の中身は日替わりだが、豊洲で仕入れる旬の魚介や秋田から届く季節の野菜を、夫婦二人で手分けをしてつまみに仕立てる。味つけはもちろんのこと、和え物、煮物、焼き物といった調理法もバラエティーに富み、色合いも考慮して5品を選んでいるという。
そんな左党憧れの酒肴盛りのレシピを今回特別にご指南いただいた。5品に共通するポイントは、シンプルながらも丁寧な下ごしらえにある。たとえば“牡蠣のオイル漬け”なら、水分がとぶまで十分にから煎りするから牡蠣の旨味が際立ち、身がふっくらと仕上がる。“あん肝煮”は身が崩れないよう優しく下処理し、さらに塩水で臭みを抜いてからようやく煮始めることで清らかですっきりとした味に。“海老芋の磯辺揚げ”は芋の下ゆでと下煮でねっとりとした海老芋ならではの食感を引き出す。“白和え”に使う豆腐は2時間から半日かけて水きりして、なめらかなテクスチャーに。“クリームチーズの味噌漬け焼き”も味噌床にチーズを最低5日間漬け込み、味がのるのを待つことで、焼いたときに味噌や酒粕の香りがふわりと開く。
どれも時短レシピではないけれど、実際につくってみると、一つ一つの工程においしさの理由があることに気づく。しかもすべて日持ちするので、一度つくってしまえば「酒肴盛り」がさっと用意できる。日々の晩酌がラクに格上げできること間違いなしなのだ。

| 牡蠣 | 500g(むき身。加熱用) |
|---|---|
| 大根おろし | 7~8cm分 |
| A | |
| ・ だし | 90ml |
| ・ 醤油 | 90ml |
| ・ 酒 | 90ml |
| ・ 味醂 | 90ml |
| サラダ油 | 適量 |
| ピンクペッパー | 適量 |
●保存方法:清潔な保存容器や瓶などに入れて落としラップをし、牡蠣が常にオイルに浸っている状態で冷蔵庫で保存。
●保存期間:約1週間。
牡蠣と大根おろしをボウルに入れ、手で和えるようにして汚れを取り、洗う。
※大根おろしがなければ、片栗粉を牡蠣全体にまぶしてから洗い、汚れを取ってもよい。

樹脂加工のフライパンに牡蠣を入れて中火にかける。水分が出てくるので、ときどきフライパンを揺すりながら水分が完全にとぶまで5~7分ほどから煎りする。
※牡蠣の身が崩れやすいので、ヘラは使わないほうがいい。

2のから煎りの間に、別鍋にAを入れて強火にかける。煮立ったら火を弱めて1割ほど煮詰め、火を止める。ここに牡蠣を入れて落とし蓋をし、冷めるまで置く。

完全に冷めたら牡蠣の汁気をきり、清潔な保存容器に入れる。牡蠣がかぶる量のサラダ油を注ぎ、冷蔵庫で保存。牡蠣を取り出して器に盛り、ピンクペッパーをのせる。
※半日後から食べ頃になる。余った漬け地は水を足して煮物などに、牡蠣を漬けたオイルは炒め物などに活用できる。

文:佐々木香織 撮影:安彦幸枝