
連載のトップバッターは、ポルトガル料理店「クリスチアノ」をはじめ5店舗の飲食店を運営するほか、食の業界で縦横無尽に活躍する、佐藤幸二さん。9品目は、春巻きの皮でつくる甘じょっぱいタルトフランべです。
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「タルトフランベ」とは、フランス・アルザス地方やドイツ南部で食される、薄いピザのような料理。強力粉を使ったパン生地を薄くのばし、チーズ、玉ねぎ、ベーコンなどをのせて焼く。
佐藤さんが提案するのは、春巻きの皮を生地に見立てた、“なんちゃってタルトフランベ”だ。
「最近、春巻きの皮に凝ってるんですよ。ベトナムの生春巻きに使う皮じゃなくて、揚げ春巻き用。特に生で食べられるタイプの皮がうまくて。そのまま食べると、食感がふかっとしていて、チーズや生ハムにすごく合うんだよね」
dancyu2025年秋号の「コンビニチーズ大宴会」企画でも、春巻きの皮を使った絶品つまみを披露している。
今回は香ばしさもほしいので、生で食べるのではなく、春巻きの皮をトースターで焼いて具をのせ、ピザ風に仕上げた。
春巻きの皮はピザ生地に比べると圧倒的に薄いので、1枚で焼くと割れやすい。そこで、2枚くっついたまま焼いて厚みを出し、パリッとした食感が楽しめるように工夫した。
「焼いた皮の上に具をのせるので、1枚だと薄くて食べにくいんです。2枚重ねたまま焼いて、さらに皮を半分に切って重ねると、結果的に『4枚重ね』になって、具とのバランスがよくなります」
アルザスでは、フロマージュブランなどの非加熱のフレッシュチーズを使うことが多いようだが、佐藤さんはブルサンチーズを選択。
「ブルサンはチーズ兼優れた調味料。塩気がちょうどよく、にんにくやハーブの利かせ方も絶妙。これさえあれば、何だって旨くなっちゃう(笑)」
こんがり焼いた春巻きの皮にブルサンをたっぷり塗ってサンドし、さらに表面にもブルサンを塗る。味つけ用の調味料は一切使わない。
「ブルサンが、具の桃缶と生ハムの美味しさをちゃんと引き立ててくれます」
主役の缶詰は、なんと「白桃のシロップ煮」を使うらしい。
佐藤さん、桃缶って甘すぎて酒のつまみにならないのでは?
「いやいや、そんなことありません!白桃缶は肉とめちゃくちゃ相性がいいんですよ。タルトフランベでは生ハムと合わせたけど、豚肉と一緒に炒めたり、カレーに入れたりしても旨い。ウチの子どもたちも大好きで、ときどきつくってあげると喜んで食べますよ」

白桃缶は“酸味のない梅干し”みたいなもの、と佐藤さん。なるほど、そんなふうに捉えれば、使い道もぐんと広がりそうだ。
あれこれ話しているうちにタルトフランベができ上がったようなので、早速いただいてみましょうか。
春巻きの皮は想像以上にパリッと小気味よい音がして、白桃のジューシーな甘味、生ハムの塩味と旨味、ブルサンのコクと酸味が口中で混然一体に。ひと口で食べられるサイズ感も相まって、食べ始めたら止まらない。レシピの倍量つくっても、二人でぺろりと完食できそうだ。
合わせる酒は、言うまでもなく白ワイン。
「酸味も甘味も強いリースリングがベストだよね。タルトフランベと一緒に味わえば、アルザスまでひとっ飛びできちゃうよ(笑)」
いやあ、佐藤さん、さすがです!

| 白桃缶 | 2切れ (四つ割りタイプ) |
|---|---|
| 生ハム | 2枚 |
| ブルサン | 50g(ガーリック&ハーブ) |
| 春巻きの皮 | 2枚 |
| サラダ油 | 適量 |
ボウルにブルサンを入れ、室温にもどす。ゴムべらで滑らかなポマード状になるまで混ぜる。

春巻きの皮は2枚くっついたまま使う。片面に刷毛でサラダ油を薄く塗り、焼き色がつくまでオーブントースターで3~4分焼く。


春巻きの皮が焼けたら、1のブルサン2/3量を表面に薄く均一に塗り広げる。春巻きの皮を半分に切ってブルサンを塗った面を合わせて重ね、軽く押さえて密着させる。さらに上面に残りのブルサンを塗り、幅を4等分に切る。


生ハムは半分に切る。白桃は厚みを半分に切る。3の春巻きの皮の上に生ハムを1切れずつ敷き、白桃を1切れずつのせる。


1974年埼玉県生まれ。国内外のレストランを経て独立。ポルトガル料理店「クリスチアノ」をはじめ、「お惣菜と煎餅もんじゃさとう」「ポークビンダルー食べる副大統領」など5店舗の飲食店や、缶詰やレトルト食品などを販売するECサイト「さとう商店」を運営。趣味は家族でキャンプすること。晩酌酒はジムビームのハイボール、または黒霧島ロックの二択!
文:佐々木香織 撮影:伊藤菜々子