
連載のトップバッターは、ポルトガル料理店「クリスチアノ」をはじめ5店舗の飲食店を運営するほか、食の業界で縦横無尽に活躍する、佐藤幸二さん。7品目は、ポピュラーな鯖の水煮缶を使った本格つまみです!
「俺酒場」は「シェフが特製つまみを考える妄想酒場」企画だが、今回に限っては店でリアルに提供している料理を紹介したい、と佐藤さん。
「缶詰酒場がテーマなので、『サバのタルトレット』だけは外せなくて。ぼくが好きな缶詰バー『SOL e PESCA(ソル・エ・ぺスカ)』(詳しくは初回をチェック!)の料理書に掲載されているレシピで、少しアレンジを加えて『マル・デ・クリスチアノ』のメニューにも載せているんです」
『マル・デ・クリスチアノ』は『クリスチアノ』の姉妹店で、魚介に特化したポルトガル料理店。佐藤さんが開発した「自家製バカリャウ※缶」なども楽しめる。
※バカリャウ…ポルトガルで食される干し鱈のこと。
料理書の中でもっとも衝撃を受けたのが鯖水煮缶のタルトレットと、佐藤さんは興奮気味に話す。
「何度でも言いますが、この店の料理は日本人が考える缶詰料理というレベルをはるかに超えていて、レストランメニューとして成立しているところがすごいんです。サバのタルトレットもそのひとつ」

生の鯖でつくるよりも、すでに火の通っている缶詰の鯖でつくるほうが味のしみ込みもよく、アパレイユ(タルト生地)とのなじみもいいという。
「よく考えられたレシピだなあと思います!」
実際に味見すると、タルト台、アパレイユ、鯖水煮が見事に一体化していた。鯖と卵はもともと相性がよいという佐藤さんの言葉どおり、卵の甘味が鯖の旨味を包み込んでいるのがわかる。にんにく、胡椒、ナツメグの効果もあり、鯖特有の生臭さは皆無だ。
生地から手づくりするのは面倒かと思いきや、材料はシンプルだし、焼いている間に生地が膨張するのを防ぐための重石を用意する必要もなし。気楽につくれるのに、出来上がりは手の込んだ一品にしか見えないのもうれしい。もてなしシーンや大切な人の記念日にもぴったりの料理だ
「味は保証するので、ちょっといい白ワインを開けちゃってくださ~い(笑)」
いやあ、佐藤さん、さすがです!

| ★ タルト台 | |
|---|---|
| ・ 薄力粉 | 200g |
| ・ バター | 70g |
| ・ 粗塩 | 3.5g |
| ・ 水 | 85g |
| ★ フィリング | |
| ・ 鯖水煮缶 | 110g(固形量) |
| ・ にんにく | 1片 |
| ★ アパレイユ(液状生地) | |
| ・ 卵 | 1個 |
| ・ 生クリーム | 50g |
| ・ 粗挽き黒胡椒 | 少々 |
| ・ ナツメグ | 耳かき1杯分 |
ボウルに薄力粉、バター、粗塩を入れ、ゴムべらで混ぜる。そぼろ状になったら水を加え、全体がムラなく混ざるまで練り混ぜる。生地がひとまとまりになったら、ラップで包み冷蔵庫で30分以上冷やす。

生地を2つに分けて丸め、それぞれタルト型に入れて指で生地を薄く広げ、タルト型の縁に生地をひっかける。160℃のオーブンで15分ほど焼く。




鯖水煮はザルに上げて缶汁を切り、ボウルに移して身をほぐす。にんにくは皮つきのまま耐熱容器に入れ、ひたひたの水を加えて電子レンジ(600W)で1分ほど加熱する。にんにくの皮をむいてつぶし、みじん切りにする。


ボウルに卵を割りほぐし、生クリーム、黒胡椒、ナツメグを加えてよく混ぜ、アパレイユをつくる。3のボウルに加え、にんにくも加えてよく混ぜる。


2のタルト台に4をたっぷり入れ、160℃のオーブンで15分ほど焼く。表面にこんがりと焼き色がつき、中まで火が通ればでき上がり。


1974年埼玉県生まれ。国内外のレストランを経て独立。ポルトガル料理店「クリスチアノ」をはじめ、「お惣菜と煎餅もんじゃさとう」「ポークビンダルー食べる副大統領」など5店舗の飲食店や、缶詰やレトルト食品などを販売するECサイト「さとう商店」を運営。趣味は家族でキャンプすること。晩酌酒はジムビームのハイボール、または黒霧島ロックの二択!
文:佐々木香織 撮影:伊藤菜々子