
連載のトップバッターは、ポルトガル料理店「クリスチアノ」をはじめ5店舗の飲食店を運営するほか、食の業界で縦横無尽に活躍する、佐藤幸二さん。3品目では、シーチキン缶詰が旨味たっぷりのご馳走になります!
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今回つくるつまみは、鴨のコンフィに着想を得た「シーチキンのコンフィ」。
ツナ缶にはフレークやチャンク(塊)、油漬けに水煮などさまざまなタイプがあるが、佐藤幸二さんがつまみの材料として選んだのは、チャンクタイプの油漬け。チャンクにした理由は、「魚を食べている実感がわくようなつまみにしたかったから」。
コンフィとは、低温の油で食材をじっくり煮るフランス料理。だから、缶詰のオイルを生かせばよさそうなものだが、
「ツナの油漬けをわざわざコンフィに仕立てるからには、おいしい脂でツナ缶を調理し直したいんです」
ということで、缶詰の油とは潔くおさらばし、代わりにご登場願うのが「ラード」。つまりは豚の脂である。
佐藤さん、ラードを使うんですか?オリーブオイルじゃ、ダメですか?
「オリーブオイルは香りが強すぎるんです。その点、ラードは香りが穏やかでツナの風味を邪魔しない。豚肉の旨味も溶け込んでいるので、コンフィのおいしさが格段にアップします。ポルトガルではオイルやバターの代わりにラードを使うことは珍しくありません。怖がらないでぜひ試してみてください!」
肝心のつくり方だが、ベーコン、玉ねぎ、スパイスとラードを弱火にかけ、食材の旨味とスパイスの香りをラードに移した「旨いラード」を先に仕込むのが、佐藤流だ。このラードでツナを煮るのだが、実際はトースターで温めるだけなので本来のコンフィよりもずっと簡単で時間もかからない。
旨いラードを全身にまとったツナは、艶やかでしっとり。「これ、生魚でつくったんだぜ~」なんて言われたら、ころっと騙されそうな小悪魔的おいしさだ。
「ラードも旨いので、アヒージョのようにバゲットにつけて食べてみて。冷めて脂がかたまったら、温め直せばOKです」
コンフィに合わせる酒は、ビールやハイボールがドンピシャだが、白ワインも捨てがたい。
「ラードのコクを引き立てる樽の効いたシャルドネが合いますね。……うーん、でも、やっぱりビールが最高っす!」
いやあ、佐藤さん、さすがです!
ツナオイル缶 | 1缶(チャンクタイプ、固形量105g) |
---|---|
ブロックベーコン | 50g |
玉ねぎ | 50g |
にんにく | 2片 |
A | |
・ 黒粒胡椒 | 小さじ1/4 |
・ クローブ | 小さじ1/4 |
・ クミンシード | 小さじ1/4 |
・ コリアンダーシード | 小さじ1/4 |
・ ラード | 55g |
ベーコンは幅6cm厚さ3mmに切る。玉ねぎは薄切りにする。にんにくは粗くつぶす。
小鍋に1とAを入れてざっと混ぜ、ラードを加えて弱火にかけ、ラードを溶かす。ベーコンがカリッとして玉ねぎが透明になるまで、ときどき混ぜながら10分ほど煮る。
ツナ缶は、ツナの塊を壊さないようにして缶汁(油)をしっかりきる。小さめのグラタン皿にツナを入れる。
3のグラタン皿に2の具とスパイスをのせ、ラードを注ぐ。オーブントースターで5分ほど加熱する。
1974年埼玉県生まれ。国内外のレストランを経て独立。ポルトガル料理店「クリスチアノ」をはじめ、「お惣菜と煎餅もんじゃさとう」「ポークビンダルー食べる副大統領」など5店舗の飲食店や、缶詰やレトルト食品などを販売するECサイト「さとう商店」を運営。趣味は家族でキャンプすること。晩酌酒はジムビームのハイボール、または黒霧島ロックの二択!
文:佐々木香織 撮影:伊藤菜々子