
連載のトップバッターは、ポルトガル料理店「クリスチアノ」をはじめ5店舗の飲食店を運営し、食品メーカーの商品開発やレシピ提案など、食の業界で縦横無尽に活躍する、佐藤幸二さん。最初に紹介するレシピは、汎用性抜群のトマト缶でつくる定番イタリアン。
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トマト水煮缶といえば、パスタソースや煮込み、スープに大活躍する缶詰だ。いずれもトマトが煮崩れるまで火を通すのがセオリーだが、佐藤さんが提案する「一夜漬けカプレーゼ」は、水煮に火を一切入れず、しかもトマトの形を生かした料理だというから驚いてしまう。
カプレーゼとは、トマト、モッツァレラチーズ、バジルを皿に盛り、塩やオリーブオイルで味つけしたイタリア南部のシンプルなサラダのこと。トマトは生を使うのが鉄則なのに、あえて水煮を使うのはなぜですか、佐藤さん。
「水煮に使われるイタリアのサンマルツァーノというトマトは、甘味が濃厚で酸味は穏やかな品種。果肉が硬いので生では食べませんが、加工されたトマトそのものもおいしいんです」
ただし、缶から出したばかりのトマトはドロリとした食感が気になってそのままでは食べづらい。塩水にひと晩漬けることで独特のドロリ感が抑えられ、トマトらしいフレッシュな味わいが戻ってくるという。
一方、モッツァレラチーズは塩を加えた牛乳にふた晩漬ける。
「この方法で漬けておくとモッツァレラのすき間に牛乳が入り込んで、しっとりとしてミルキーな味に変貌します。安いモッツァレラが高級品になりますよ(笑)」
見た目はカプレーゼそのもの。むしろ、水煮の赤が鮮やかに効いている。
一口含めば、トマトもモッツァレラも濃い!濃い!濃~い!
フレッシュトマトらしいジューシーさも感じられて、まさに生と水煮のいいとこ取りだ。
旨いトマトが入手しづらい冬場でも、水煮缶があればいつだってカプレーゼが食べられる。
いやあ、佐藤さん、さすがです!
トマト水煮缶 | 1缶(400g)(ホールタイプ) |
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モッツァレラチーズ | 2個 |
牛乳 | 適量 |
塩 | 適量 |
オリーブオイル | 適量 |
イタリアンパセリ | 適量(みじん切り) |
モッツァレラチーズはポリ袋に入れ、かぶるくらいの牛乳を注ぎ、塩ひとつまみを加えて口を閉じ、冷蔵庫にふた晩ほどおく。
トマト水煮は形が崩れないように缶からそっと取り出し、重さをはかる。トマト水煮と同量の水、塩小さじ1/4とともにトマト水煮を保存容器に入れ、蓋をして冷蔵庫にひと晩おく。
モッツァレラチーズは軽く汁気を拭き、ひと口大にちぎる。トマト水煮は汁気をきってひと口大に切る。
3を器に盛り、オリーブオイルをかけ、イタリアンパセリを散らす。
トマト水煮缶の汁全量とカプレーゼでトマト水煮を漬けた汁をボウルに合わせ、塩を加えて少ししょっぱいくらいの味に調えたら、クスクス80gを加えて30分ほどおき、汁を十分に吸いこませればでき上がり。
トッピングには、ひと口大に切った海鮮(ゆで海老、ゆでいかなど)、半割りにしたミニトマト、にんにく薄切り、ハーブ(イタリアンパセリなど)のみじん切りをざっと和え、塩、オリーブオイル、レモン汁で調味したマリネをクスクスにたっぷりのせる。ワイン必須のつまみの完成です。
1974年埼玉県生まれ。国内外のレストランを経て独立。ポルトガル料理店「クリスチアノ」をはじめ、「お惣菜と煎餅もんじゃさとう」「ポークビンダルー食べる副大統領」など5店舗の飲食店や、缶詰やレトルト食品などを販売するECサイト「さとう商店」を運営。趣味は家族でキャンプすること。晩酌酒はジムビームのハイボール、または黒霧島ロックの二択!
文:佐々木香織 撮影:伊藤菜々子