尾身奈美枝さんの“フードロサない”アフターレシピ
"切り干し大根"を持て余したら、迷わずつくりたい"台湾風卵焼き"

"切り干し大根"を持て余したら、迷わずつくりたい"台湾風卵焼き"

料理家・フードコーディネーターの尾身奈美枝さんが毎回、余った食材をおいしく食べきるレシピを提案します。前回に続き、お題は“切り干し大根”。冷蔵庫に卵があれば、すぐ使い切れるとっておきのレシピ!

台湾の家庭料理を“切り干し大根”で!

前回は、“切り干し大根”でタイ料理の“ソムタム”をつくってくれた尾身さん。今回はタイから台湾へひとっとび!またまた、アジアの風が吹き抜けるとっておきの使い方を教えてくれるという。

「台湾には“菜脯蛋(ツァイプタン)”という、どこの家庭でも定番の卵焼きがあります。“菜脯(ツァイプ)”というのは、大根を塩漬けにして干したもののこと。これが味の決め手になって、卵がとってもおいしくなるんです。今回は切り干し大根を使って、“台湾風卵焼き”をつくってみましょう!」

材料はストックしてあった切り干しのほかに、長ねぎと卵、あとはキッチンにある調味料だけ。こんなにシンプルな材料で、台湾料理がつくれるのか……と半信半疑でいたところ、「まずは食べてみて!」と尾身さん。ひと口食べてびっくり、めちゃくちゃ旨味が濃い!

「びっくりするでしょ?旨味は切り干し大根から出たダシのみ!お肉も海産物も、なーんにも入ってなくてこの味になるんです。前回も説明しましたが、この旨味が抜けないように、ひたひたの水でもどすようにしてくださいね!」

これはまさに、異国の味。切り干し大根のポテンシャルを知れば知るほど、持て余すどころか、もっと使いたくなってくる不思議。恐れ入りました……!

尾身さん
「乾物が大好きで、道の駅では必ず切り干し大根を買っちゃう」と話す尾身さん。

“切り干し大根”の旨味はすごかった!

“台湾風卵焼き”の材料はシンプルなだけに、つくり方にワザあり。それは、切り干し大根をフライパンで炒めてから溶き卵に混ぜて焼くこと!生でも食べられるので、そのまま混ぜてもよさそうだが、炒める理由を尾身さんに聞いてみた。

「切り干し大根を胡麻油で炒めて、醤油でしっかり味つけすることが大切なんです。卵に加えたときに味にメリハリがつくだけでなく、切り干し大根から出た旨味が卵にもいきわたって一体感が生まれ、全体がおいしくなるんですよ!」

確かに、卵にはまったく味つけはしていない。それなのに、何かのダシを加えたかのような旨味が感じられる。これは、切り干し大根のおかげというわけなのだ。しかも、冷めてもおいしいというのも、切り干しパワーのおかげといえそうだ。

ベースのレシピがシンプルなので、アレンジする楽しみもあるという。

「ハムやベーコンをみじん切りにして加えたり、缶詰のあさりの身を加えてもおいしいです。より旨味がしっかりして、お酒のおつまみにもぴったり。もう、切り干し大根は余らせません!」

“台湾風卵焼き”のつくり方

完成

材料材料 (2~3人分)

切り干し大根30g(水で戻してザク切りにする)
溶き卵3個分
長ねぎ50g(小口切り)
胡麻油大さじ2
醤油小さじ2
黒胡椒少々

1切り干し大根を炒める

フライパン(卵焼きの大きさに適した22~24cm)に胡麻油大さじ1をひいて中火にかけ、切り干し大根を炒める。ほぐれて油がまわったら、長ねぎを加えて炒める。醤油、黒胡椒で調味する。

切り干し大根を炒める
切り干し大根を炒める

2溶き卵に切り干し大根を混ぜる

ボウルに卵を割りほぐし、炒めた切り干し大根を加えて混ぜる。

溶き卵に切り干し大根を混ぜる
溶き卵に切り干し大根を混ぜる

3フライパンで焼く

切り干し大根を炒めたあとのフライパンをキッチンペーパーで軽く拭き、残りの胡麻油大さじ1をひいて中火にかけ、卵液を流し入れる。縁からかたまってくるので、周りから大きくかき混ぜるようにする。半熟に固まってきたら丸く形をととのえて焼き、裏返す。もう一方の面も焼けたら出来上がり。

フライパンで焼く
フライパンで焼く

教える人

尾身奈美枝 料理研究家・フードコーディネーター

尾身奈美枝 料理家・フードコーディネーター

料理家・フードコーディネーターとして、テレビ番組を中心に、新聞・雑誌など様々なメディアに出演。料理番組の金字塔『料理の鉄人』の裏方を務め、「フードコーディネーター」 という職種を世に広め、定着させた先駆け的存在でもある。
「きょうの料理」 (NHK)「あさイチ」(NHK) などの番組に多数出演。“エコ”をテーマとした新しいレシピ提案を発信し続けている。

文:大沼聡子 撮影:海老原俊之

大沼 聡子

大沼 聡子 (編集者・ライター)

家庭科教師だった母親の影響で、小学生の頃から料理雑誌を愛読。現在はレシピ本の企画・編集のほか、食まわりの記事を雑誌・ウェブ等で執筆している。趣味は世界各国の料理をつくること、食べ歩くこと。