中秋の名月を愛でる風習は、平安時代に中国から伝わったと言われ、月見団子をお供えします。昔は主に里芋でつくる「きぬかつぎ」をお供えしたことから、「芋名月」とも呼ばれてきました。きぬかつぎは行事食の一つですが、アレンジするとこの季節ならではのおつまみに。お酒を愛する料理研究家の大原千鶴さんに、つくり方とそのコツを教えていただきました。
中秋の名月、皆さん、ご覧になりましたか。今年はいつまでも暑くて、秋の訪れはまだまだ先?それでも豊作を祈り、感謝の気持ちを持って月を鑑賞する秋の行事は大切にしたいですね。
小さめの里芋を丸ごと蒸すか、ゆでるかした料理のことを「きぬかつぎ」といい、中秋の名月にお供えします。胡麻塩をふるのが一般的で、それだけで十分美味しいのですが、ちょっとアレンジしてみたのが今回のレシピです。
味噌と市販のピーナッツバターを合わせたピーナッツ味噌を添えることで、風味がぐんと増します。ピーナッツクリームもありますが甘いので、ここはぜひ無糖のピーナッツバターで。味噌と混ぜ合わせて、水で柔らかさを加減したら完成です。きれいに見せるためにピーナッツ味噌を里芋の上にのせましたが、全体をよく混ぜて食べても美味しいですし、この味噌だけでも呑めますよ。
秋の夜長をゆっくり楽しめるようにお酒はバーボンの水割りに。まろやかな口当たりが、ピーナッツ風味の味噌とよく合います。秋の訪れを感じながらお過ごしください。
里芋 | 6~8個(250g) |
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★ ピーナッツ味噌 | |
・ ピーナッツバター | 40g(無糖) |
・ 味噌 | 10g |
・ 水 | 大さじ1~1と1/2 |
ゆずの皮 | 少々(すりおろし) |
鍋に里芋とかぶるくらいの水を入れて中火にかけ、蓋を少しずらしてのせる。沸いたら火を少し弱めて、竹串がスッと通るまで10~15分間ゆで、ザルに上げて水気をきる。粗熱が取れるまでそのまま置く。
ピーナッツ味噌の材料を混ぜ合わせる。
①の里芋の皮をむき、食べやすく切る。
③を器に盛り、②のピーナッツ味噌をのせ、あればゆずの皮をふる。
京都・花脊の料理旅館「美山荘」が生家。小さな頃から自然に親しみ、料理の心得を学ぶ。現在は家族五人で京都の市中に暮らし、料理研究家としてテレビや雑誌、講習、講演など多方面で活躍。シンプルなレシピに定評があり、美しい盛りつけにもファンが多い。着物姿のはんなりとした京女の印象とは対照的に、お酒をこよなく愛す行動派。レシピはお酒を呑んでいる時に思いつくのが一番多い。近著「大原千鶴のいつくしみ料理帖」(世界文化社)がある。2023年4月より、オンライン料理レッスンもスタート。
文:西村晶子 撮影:福森クニヒロ