大原千鶴さんの「今宵のあて」
京都のソウルフード「しめ鯖」を手づくり。行程はシンプルながら、本格的な味わいに

京都のソウルフード「しめ鯖」を手づくり。行程はシンプルながら、本格的な味わいに

お酒によく合う「しめ鯖」は刺身とは違う美味しさがあり、京都では「きずし」とも言います。つくるにはちょっとハードルが高いと思われがちですが、新鮮なサバが手に入ったときや時間に余裕がある時ときに仕込んでおくと、「これがあるだけでうれしい気持ちになりますよ」と料理研究家の大原千鶴さん。三枚におろしたサバを使って「しめ鯖」のつくり方とそのコツを教えていただきました。

魚の旨味にミネラル感のあるイタリアの白ワインが寄り添う

新鮮なサバにひと手間加えた「しめ鯖」。完成までに2日かかりますが、つくり方はシンプルで、大事なのはしっかりと塩をまぶして、時間を置くこと。半日置くと、塩の浸透圧でサバから余分な水分が抜け、水分と一緒に臭みもとれるんです。

これを洗って甘酢に漬け込みますが、少量のサバなら袋で漬けるのがお薦めです。甘酢が少量ですみ、場所をとらず、洗い物も出ません。一晩、冷蔵庫に置くと食べ頃で、サバの頭のほうから皮を少しずつゆっくりとはいでいきます。

切り方はお好みですが、私は薄めが好き!薬味やあしらいの野菜を巻いて食べられるからです。今回は切り身の間に切り込みを入れ、口当たりをよくしています。漬け汁の甘酢に漬けた状態で、冷蔵庫で5日間保存可能です。市販のものもありますが、手づくりならではの美味しさはひとしおです。

お酒は日本酒はもちろんのこと、白ワインもよく合います。酸とミネラル感のあるイタリアの白ワインがお薦めで、サバの旨味を優しく引き上げてくれます。

しめ鯖のつくり方

材料材料 (2人分)

サバ1尾(約250g)(三枚におろしたもの)
小さじ2
A
・ 米酢40ml
・ 砂糖大さじ1
・ 塩小さじ2/3
かいわれ大根適量
おろし生姜適量

1サバに塩をふる

サバの全体にたっぷり塩をまぶし、冷蔵庫で5~6時間置く。塩を水でさっと洗い流し、キッチンペーパーで水気を拭き取る。

サバに塩をふる

2サバを甘酢に漬ける

保存袋にAを入れて合わせ、①を加える。空気を抜きながら袋を閉じ、冷蔵庫に一晩置く。

3皮をはぐ

保存袋からサバを取り出し、キッチンペーパーで水気を拭き取る。小骨を抜き、手で押さえながら頭のほうから皮をはがす。

皮をはぐ

4仕上げる

食べやすく切って器に盛り、かいわれを添え、おろし生姜をのせる。

完成

教える人

大原千鶴 料理研究家

大原千鶴 料理研究家

京都・花脊の料理旅館「美山荘」が生家。小さな頃から自然に親しみ、料理の心得を学ぶ。現在は家族五人で京都の市中に暮らし、料理研究家としてテレビや雑誌、講習、講演など多方面で活躍。シンプルなレシピに定評があり、美しい盛りつけにもファンが多い。着物姿のはんなりとした京女の印象とは対照的に、お酒をこよなく愛す行動派。レシピはお酒を呑んでいる時に思いつくのが一番多い。近著「大原千鶴のいつくしみ料理帖」(世界文化社)がある。2023年4月より、オンライン料理レッスンもスタート。

文:西村晶子 撮影:福森クニヒロ

西村 晶子

西村 晶子 (ライター・編集者)

関西在住のライター、時々編集者。京都の和食を中心に、老舗から新店までを分け隔てなく幅広く取材。2006年8月号「明石の老舗に、至福の柔らか煮、タコ飯を習う」で初執筆。2018年5月号より「京都『食堂おがわ』の季節ごはん」、2021年5月号より「京都『食堂おがわ』の妄想料理帖」の連載を担当。