自他ともに認めるラーメンマニアかつ、レコード番長の異名を持つ人気DJ須永辰緒さんが、ラーメンレシピとともに、そこに込めたテーマや思いをもとに組んだ音楽のプレイリストをご紹介する連載「須永辰緒のMUSIC&RAMEN」。第四回はシンプルながら重厚な旨味が楽しめる鶏塩そばと、そんなシンプルな一杯に寄り添う美しい選曲をご紹介します。
シンプルで美しい一杯を目指す!といいつつも地鶏(親)や雛鳥などを組み合わせ「鶏」だけで味を構成させる達人のようなラーメンを作れるべくもなく、節類や昆布もバンバン使っちゃいますけどね。それでも今回は鶏がメインなので思い切って丸鶏(クリスマスに登場するようなやつです)を使います。例によって残ったスープは冷凍保存できますのでスープストックを作るつもりで細かいことは言わずに分量外でいきましょう。
そして今回の肝は鶏油作り。
お湯が沸騰しない温度で4時間ほど出汁を取る過程で鶏油も浮いてきますのでそれも大事にとっておきますが、別途に皮だけで鶏油を作ります。抽出した鶏油は冷蔵保存できますのでこれも分量外(チャーハンなどでサラダ油の代わりに使うと驚くほど美味しい炒飯ができます)。
作り方は簡単で鶏皮を炒めていると油分が沢山溢れてきます。その油で鶏皮を揚げるイメージです。適時油を取り除きながら、ボウルなどに溜めると500gに対して400cc以上の鶏油が取れます。そしてカリッと揚がった鶏皮はそのまま(塩1:砂糖1:旨味調味料1)をまぶせるとハッピーターンのような味の酒の肴になります。以上のように鶏皮は色々優秀なので是非お試し下さい。お父さんの面目躍如間違いなしで家族の好感度も爆上がり。
鶏油が美味けりゃスープも美味いということで味付けは市販の塩(六助の塩)だけ。こちらの塩は元焼き鳥屋さんが開発した塩。貝柱などの自然な旨味が添加されているので、例えばお湯で割っただけでもお吸い物のような旨味があり扱いやすい。
立ち上る芳香で甘い鶏の香りも素敵ですが、そこに爽やさが欲しかったので徳島の神山すだちを使いました。炙った舞茸の独特の香りのピースで丼一杯を構成しました。
そんな意外に手間のかかった鶏そばに添える選曲。こちらはシンプルに今年良く聴いた新世代SSWやR&Bの歌姫達の曲を選んでいます。時節柄ということでクリスマスソングも添えました。鶏油を摂るのは根気のいる作業ですが、そんなシンプルで美しい曲を聴きながらの時間は思いのほか優雅かも知れません。
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★ 鶏だし | |
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・ 水 | 4L |
・ 丸鶏 | 一羽(2kgほど) |
・ にんにく | 2片 |
・ 生姜 | 50g |
・ ネギの青い部分 | 2本 |
★ 魚介だし | |
・ 水 | 4L |
・ 鰹厚削り節 | 一掴み |
・ 混合節 | 30g |
・ 干し貝柱 | 10g |
・ 昆布 | 合わせて10g(利尻、日髙) |
・ 干し椎茸 | 5g |
・ 桜エビ | 適量 |
鶏の皮 | 500g |
★ 鶏塩そば | |
・ 中華麺 | 140g |
・ 鶏だし | 200cc |
・ 魚介だし | 200cc |
・ 鶏油 | 40cc |
・ 六助の塩 | 小さじ一杯強 |
・ トッピング | |
├ 神山すだち | 適量 |
├ 舞茸 | 適量 |
├ 三つ葉 | 適量 |
├ チャーシュー | 適量 |
└ メンマ | 適量 |
魚介だしの材料をすべて鍋に入れ、一晩置く。
寸胴に鶏だしの材料をすべていれ、沸騰しない程度の温度をキープしながら4時間煮込む。適宜アクをとり、浮いてきた油は取っておく。
鶏の皮を炒め、油を抽出していく。油は適宜ボウルに入れ替える。最終的に400ccほどの鶏油が取れるまで続ける。
①の鍋を火にかけ、沸騰寸前で弱火にし40分煮る。
トッピングの舞茸をバーナーであぶる
②と④のスープを濾す。
麺を表示通りの時間でゆでる。
器に六助の塩、鶏油を入れ、⑥で濾した鶏だしと魚介だしを200ccずつ加える。
⑦の麺を入れ、トッピング類を盛りつけて完成。
文:須永辰緒 写真:竹之内祐幸