料理家・フードコーディネーターの尾身奈美枝さんが毎回、余った食材をおいしく食べきるレシピを提案します。今回は、“海老フライ”をつくったあとに残った“衣問題”に真正面から向き合います。海老の殻も捨てません!
こんがり、カリッと揚がった海老フライ。たっぷりのタルタルを添えて味わう幸せたるや!この幸せのためなら、手間をいとわないという人も多いはず。さて、フライにつきまとうのは、ちょこっとずつ残った衣の材料、小麦粉、パン粉、卵の3つをどうするか問題。もったいないけれど使い道がなくて、捨ててしまっているという人が多いのでは?
そしてたっぷりの海老の殻もまた、使えそうではあるのだが……。
そこで尾身さんに使い道をたずねると、「子どもの頃、余ったフライ衣でおやつをつくってくれたんですよ。海老の殻は、旨味たっぷりなのでだしになります。お宝なので、捨てないで!」と、力強い言葉。
というわけで今回は、“海老フライ”のアフターレシピ。フライを味わったあとに待っている、さらなるお楽しみをお届けしたい!
「私の両親はかつて工務店を営んでいて、職人さんたちも一緒にご飯を食べていました。ボリューム満点のフライは我が家の定番メニュー。子どもの頃は母がよく、余った衣を混ぜてチャチャッと揚げて、砂糖をまぶしてドーナツにしてくれたんです。適当につくっているのに、これがおいしいんですよ」と、尾身さん。
実際につくってもらうと、残ったフライ衣を混ぜて揚げるだけなのに、ふっくらもっちり!今回は目安としてレシピで分量を出しているが、卵やパン粉などの量は正確にこの通りでなくてもOK。
「“ロサない”ことが目的なので、余っている衣の材料をすべて混ぜちゃいましょう。生地がやわらかければパン粉や小麦粉を足して、かたければ牛乳を足してください。適当でもおいしいのが、このドーナツのいいところです」
今回はシナモンシュガーをまぶしたが、きな粉や黒糖をまぶして和風にしてもいい。また、生地にチーズを加えて塩味のドーナツにすれば、ビールに合うつまみに。青海苔を加えてゼッポリーニ風にしても美味だ。フライ衣はもう捨てない!
★ フライ衣の残り | |
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・ パン粉 | 1/2カップ |
・ 薄力粉 | 大さじ2 |
・ 卵 | 大さじ1 |
牛乳 | 大さじ1 |
砂糖 | 小さじ1 |
揚げ油 | 適量 |
グラニュー糖 | 適量 |
シナモン | 適量 |
ボウルにフライ衣の残り、牛乳、砂糖を入れて混ぜ合わせる。生地を4等分して丸める。
揚げ油を160~170℃に熱し、丸めた生地を入れて揚げる。こんがり色づいたら取り出す。
ボウルにグラニュー糖とシナモンを混ぜて、ドーナツを入れて転がしながらまぶす。
★ フライ衣の残り | |
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・ パン粉 | 1/2カップ |
・ 薄力粉 | 大さじ2 |
・ 卵 | 大さじ1 |
牛乳 | 大さじ1 |
粉チーズ | 大さじ2 |
揚げ油 | 適量 |
黒胡椒 | 適量 |
一味唐辛子 | 適量 |
ボウルにフライ衣の残り、牛乳、粉チーズを入れて混ぜ合わせる。生地を4等分してラグビーボールのような紡錘形に丸める。
揚げ油を160~170℃に熱し、丸めた生地を入れて揚げる。こんがり色づいたら取り出す。
ボウルに粉チーズ適量(分量外)、黒胡椒、一味を混ぜて、ドーナツを入れて転がしながらまぶす。
せっかく殻付きの海老で海老フライをつくったのなら、旨味がたっぷりの殻まで使い切りたい。そこで尾身さんが教えてくれたのが、“海老殻のビスク風”だ。玉ねぎと一緒に炒めて香ばしさを引き出したら、トマトペーストで煮込んで濾して、殻のエキスをギュッとしぼるのがポイント。「有頭海老を使ったときは、みそがたっぷりの頭も加えてつくってみてください。さらに濃厚な味が楽しめますよ」と、アドバイス。このスープとバゲットがあれば、幸せになれること間違いなし。ぜひお試しあれ!
海老の殻 | 4尾分 |
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玉ねぎ(A) | 50g(薄切り) |
玉ねぎ(B) | 30g(薄切り) |
トマトペースト | 大さじ1 |
オリーブオイル | 大さじ1 |
白ワイン | 50ml |
水 | 400ml |
塩 | 適量 |
黒胡椒 | 適量 |
パセリ | 適量(みじん切り) |
バゲット | 適量(スライス) |
鍋にオリーブオイルをひいて中火にかけ、玉ねぎ(A)を炒める。しんなりしてきたら、エビの殻を入れて3~4分炒める。
トマトペーストを加えて炒め、さらに白ワインを加えて強火にする。アルコール分がとんだら水を加えて、煮立ったら中火で7~8分煮る。
ザルでスープを濾し、別の鍋に入れる。ザルに残った殻はヘラを押し当てて、しっかり旨味をしぼる。鍋を中火にかけて、煮立ったら玉ねぎ(B)を入れて軽く火が通るまで煮る。塩、黒胡椒で味を調える。器に盛ってパセリをふり、バケットを添える。
料理家・フードコーディネーターとして、テレビ番組を中心に、新聞・雑誌など様々なメディアに出演。料理番組の金字塔『料理の鉄人』の裏方を務め、「フードコーディネーター」 という職種を世に広め、定着させた先駆け的存在でもある。
「きょうの料理」 (NHK)「あさイチ」(NHK) などの番組に多数出演。“エコ”をテーマとした新しいレシピ提案を発信し続けている。
文:大沼聡子 撮影:山田薫