辻仁成の“パリ・サラダ”
辻 仁成の"パリ・サラダ"|第九回"十割蕎麦サラダ・パリジェンヌ風"

辻 仁成の"パリ・サラダ"|第九回"十割蕎麦サラダ・パリジェンヌ風"

スマートなパリジェンヌに大人気のサラダとは?作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。パリに住んで20年の辻さんによる、美味しさと思い出の詰まった“パリ・サラダ”のレシピです。

一番人気の蕎麦サラダ!

最近パリでは、スマートなパリジェンヌたちが行列をつくる健康系ファーストフード店が人気です。美容と健康に人一倍気遣うパリジェンヌだからこそ「昼は軽めにヘルシー」を心掛けているようです。

覗いてみると、ショーウインドーの中に、ずらりとサラダばかり数十種類が並んでいます。最近のトレンドを取り入れたサラダが多く、どれもプラスティック製で円筒形のサラダボウルに入っています。カレー風味のチキンサラダ、黒豆のサラダ、レンズ豆のサラダ、ルッコラのサラダ、豆腐サラダ、春雨タイ風サラダ、サーモンのサラダ、アボカドと海老のサラダなどなど、どれもヘルシーを謳ったフランスの若い女性に好かれるような内容になっているのですが、その中でひときわ人気なのが、意外や意外、蕎麦サラダなのです。

もちろん、日本の蕎麦とは似て非なるもの、有機系の蕎麦の実を使って、パスタと蕎麦の中間のような麺が入っています。そこで、今回は、そんなパリの若い女性に人気の蕎麦サラダを作ってみたいと思います。いろいろな蕎麦を試しましたが、十割蕎麦が一番、食感もよく、美味しかったです。

つくり方は簡単ですけど、中に入れるものがいろいろとあるので、まず、大事なことは下準備を先に完璧に終わらせておくこと。蕎麦がのびないように、あとは一気に詰めるだけ。
まず、ちょっと時間のかかるポン酢ジュレを前の晩とかに仕込んでおくことをおススメします。次に、茄子をグリルし、次にポーチドエッグを、最後に蕎麦を茹でたら、一気に盛り付け開始。パリジェンヌに愛されるサラダボックスは、見た目がきれいな透明の容器に入っているのがお約束ごと。横からみると断面が鮮やかな層になっているのが特徴です。ミルフィーユ状に美しく重なるように盛り付けてください。

十割蕎麦サラダ・パリジェンヌ風のつくり方

材料材料 (約2人分)

十割蕎麦50g(お好みで)
なす1本弱
ゆで海老お好きなだけ(今回は2皿分で4尾)
枝豆適量(ゆでておく)
ラディッシュ2個
白髪ねぎ適量
オリーブオイル適量
ベビーリーフなど2~3つかみ
キャロットラペ適量
蕎麦の実少々
★ ポーチドエッグ
・ 卵2個
・ 酢少々
★ ポン酢ジュレ
・ 板ゼラチン5~7g(なければ粉ゼラチン)
・ かつおの粒状和だしを戻したスープ大さじ1(やや濃いめ)
・ ポン酢醤油大さじ3
・ 水1カップ弱
・ 胡麻少々
・ 醤油少々
・ 塩少々
・ 胡椒少々
・ おろし生姜少々
・ 一味唐辛子少々
・ 山椒少々
★ 胡桃(くるみ)ダレ
胡桃15~20個
白胡麻小さじ1
麺つゆ大さじ1(2倍濃縮)
大さじ1~2(緩さを見て調整)
砂糖小さじ1
白味噌大さじ1
生クリーム大さじ1
オリーブオイル大さじ1
少々
胡椒少々

1ポン酢ジュレの調味料を混ぜる

小さな鍋に水、和だしスープ、ポン酢醤油、醤油、塩、胡椒、おろし生姜、一味唐辛子、山椒を入れて火にかけ、煮たったら板ゼラチンをそのまま投入(板ゼラチンは水で戻してもいいですが、ぼくは面倒なので、直接入れます。その場合、中火にして、ダマにならないように丁寧にかき混ぜてください)。

2ポン酢ジュレを固める

胡麻は煎って、加えると風味が出ます。さらに胡麻油(材料外)を2、3滴加え、粗熱が取れたら小さな容器に移し、冷蔵庫で固まるまで冷やします(ポン酢ジュレは時間がかかるので、前日に仕込んでおくほうがいいでしょう)。

3胡桃ダレをつくる

胡桃ダレのすべての材料をボウルに入れ、ハンドブレンダーでブレンドしたら、胡桃ダレの完成です。

4ポーチドエッグをつくる

卵は小皿に割っておきます。鍋にたっぷりのお湯を沸かし、お酢を入れてください。お湯はグラグラにならない程度を保ちます。木べらやお玉でそっとお湯をかき回してゆったりした渦を起こし、渦の真ん中にそっと卵を一個落とします。さらにお湯をかき混ぜながら形を整えてください。卵のサイズにもよりますが、目安としては4分くらい。白身が固まったら網で卵をすくい、キッチンペーパーの上に置いて水をきります。続けて、もう一個、同じ手順でつくりましょう。

5なすの下準備

なすは5mm角のサイコロ状に切る。フライパンにオリーブオイルを入れ、なすを加えて焼き目がつくまで炒める。

なすの下準備

6蕎麦をゆでる

好きな分量の蕎麦をゆで、水で締める。

7重ねながら盛りつける

まず、器の底にグリルしたなすを敷き詰め、その上にオリーブオイルと白髪ねぎで和えた十割蕎麦をのせます(ちょっと七味唐辛子などをふりかけるとスパイシーに)。ポン酢ジュレと胡桃ダレを少々垂らし、盛り付けた断面がきれいに見えるよう、器を囲むようにジュレを配置します。

重ねながら盛りつける

8仕上げる

枝豆やスライスしたラディッシュを散らし、ベビーリーフなどで蓋をし、中心にキャロットラぺ、その上にポーチドエッグ、もう一度、胡桃ダレをかけ、最後にポン酢ジュレ、ゆで海老、枝豆、煎った蕎麦の実、などを全体に散らしたら、完成となります。

完成

大事なことは、準備を先にしっかりしておき、一気に盛り付けること。盛り付けに時間がかかりすぎると蕎麦がのびてしまいますから、注意です。

かき混ぜながら、パリジェンヌを気取って食べると気分が上がりますよ。男性はパリジャンを気取りましょうね。このヘルシーさと軽さが、今のパリの流行でもあります。

文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac