大原千鶴さんのすりながしのいろは
なめらかで優しい味わいの"ながいものすりながし"

なめらかで優しい味わいの"ながいものすりながし"

すりながしとは、野菜などをすりおろしてだしと合わせた、しみじみとおいしい汁もの。ことこと煮込むことをしない、素材を生かすシンプルな和の伝統的なスープです。だしや素材を工夫する楽しさと、洋風など無限に広がるおいしさの一端を、京都在住の人気料理研究家・大原千鶴さんに教わりました。

“すりながし”のいろは

「すりながしは煮込まないので手軽につくれ、即興でいろいろなアレンジができるスープです」と言う大原千鶴さん。

疲れたときや体調がすぐれないときのスープ?と思いきや、教えてくださった品はそれとは別物!
ハンドブレンダーやミキサーを使えば、おろしたり、こしたりする手間が省け、出来上がりは美しく、おいしさが体にしみ渡る。

「すりながしは、野菜をすりおろして、だしと合わせるのが基本ですが、だしの代わりにチキンスープや豆乳と合わせるとポタージュのようになり、組み合わせでいろいろな味を楽しめます。きゅうりやトマトはそれぞれの水分だけで、魚はすりおろして味噌と水と温めるだけで、おいしいスープになりますよ」

野菜の量を変えればとろみの加減ができ、冷製スープにするなどのバリエーションも。さらに、具を加えることでごちそうに格上げされ、おもてなしの一品になったり、お酒のアテになったり。「旨味や食感が加わって、さらにおいしくなり、見た目もいいでしょ。その日のおかずやお酒に合わせて、自分好みにアレンジしてください」

今回使った食材のほかに、かぶやレンコン、ニンジン、とうもろこし、豆類でもつくれ、季節ごとのすりながしが楽しめる。簡単で自在!そして、なんとも奥深い。

“すりながし”のつくり方

ながいも

ながいもは、あっさりとした味わいをもつ、すりおろしの定番です。だしで合わせるとほっこりやさしい味わいになります。味つけは淡口醤油だけ?と誰もが驚いてくれます。冷え込む冬は温めて、食欲がなくなる夏は冷やしてどうぞ。

材料材料 (2人分)

ながいも100g
だし1カップ
淡口醤油小さじ2
明太子適量
木の芽適宜

1したごしらえ

ながいもは皮をむいてすりおろす。

したごしらえ

2火にかける

小鍋に①のながいもを入れ、だしを加えて溶きのばし、弱火の中火にかけ、常に混ぜながらながいもに軽く火を通す。

火にかける

3調味する

沸騰直前に火を止め、淡口醤油で味をととのえる。

調味する
調味する

4盛りつける

器に盛り、食べやすく切った明太子をのせ、木の芽をあしらう。

完成
年中楽しめて、体をいたわってくれるスープ。ながいもだけでもおいしいが、明太子をくずしながら、その塩気とともにいただくと、より美味。紅白の組み合わせがなんとも華やか。合わせる素材の工夫も楽しいのが、大原流のすりながしだ。

教える人

大原千鶴 料理研究家

大原千鶴 料理研究家

おおはら・ちづる 京都・花背の料理旅館「美山荘」が生家。NHK「きょうの料理」、NHK BS4K「あてなよる」にレギュラー出演。京都の暮らしで培ったしなやかな感性でつくる家庭料理と酒肴に定評がある。これまで30冊以上の料理本、エッセイを上梓している。

文:西村晶子 写真:福森クニヒロ

この記事は技ありdancyu!「スープ」に掲載したものです。

技あり!dancyuスープ
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A4変型判(112頁)
2020年12月18日発売 / 880円(税込)
西村 晶子

西村 晶子 (ライター・編集者)

関西在住のライター、時々編集者。京都の和食を中心に、老舗から新店までを分け隔てなく幅広く取材。2006年8月号「明石の老舗に、至福の柔らか煮、タコ飯を習う」で初執筆。2018年5月号より「京都『食堂おがわ』の季節ごはん」、2021年5月号より「京都『食堂おがわ』の妄想料理帖」の連載を担当。