素材の持っている味のすべてを塩で引き出した、シンプルなスープをご紹介。食材には旨味や苦味、色、香りなどの個性があります。塩だけで調理するからこそ、その素材の持ち味が生きてくるのです。塩の奥深さを知ることのできる料理を、細川亜衣さんに習いました。
塩の役割に“素材の持ち味を引き出す”ことがあります。このスープは、にんじんを蒸し焼きにして味を凝縮させ、さらに塩とバターだけで炒め煮にしてコクと旨味を詰めています。すると、甘味がグンと引き出されるのです。
塩味は効かせますが、ほどほどに。持ち味のすべてが引き出されたスープは甘く、旨味の強さに驚くはずです。仕上げにフルール・ド・セル(イル・ド・レ)を。シャリッとした歯ごたえと心地いい塩味をプラスします。
にんじん | 250g |
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牛乳 | 50ml |
発酵バター | 25g(食塩不使用) |
塩 | 適量 |
塩 | ひとつまみ(フルール・ド・セル) |
洗った皮付きのにんじんを湿らせたキッチンペーパーに包み、さらにアルミホイルで包む。180℃のオーブンで30~60分蒸し焼きにする。竹串を刺して抵抗なく通るまで火を入れる。包みから取り出し、端から薄切りにする。
フライパンに1のにんじんとバターを入れ、弱火にかけ、蓋をする。バターが溶けたら塩を加え、にんじんをつぶしながらじっくり炒め煮にするように火を通す。キャラメルのような甘い香りが立ったら水250mlを加え、さらにつぶしながら煮る。
2が沸騰したところでミキサーに移し、なめらかになるまで撹拌する。牛乳を加えてさらに撹拌し、器に盛る。仕上げに塩(フルール・ド・セル)をふる。
細川さんはバイタミックス(強力な粉砕力を持つミキサー)を使用。一般的なミキサーで撹拌した場合は、ザルで漉してなめらかにする。
料理家。シンプルなレシピと素材の持ち味を存分に生かした力強い味にファンが多い。『スープ』『野菜』(ともにリトルモア)など著書多数。
文:石出和香子 写真:在本彌生
※この記事の内容はdancyu2018年11月号に掲載したものです。