サクッと衣は香ばしく、えびのプリッとした食感も愉しめるすり身揚げ。パクチーの根、にんにく、白胡椒でつくる調味料“マジックペースト”を加えれば、俄然、タイの香りと味わいに!梅干しをつかった甘酸っぱいソースをかけて召し上がれ。
タイ人はえびが大好き。
えびの酸っぱくて辛いスープ「トムヤムクン」をはじめ、サラダや麺など、さまざまな料理にえびを使う。
今回紹介するえびのすり身揚げも、タイを代表するえび料理だ。タイ語で「トードマンクン」というが、トードが「揚げる」、マンが「油」、クンは「えび」をさす。
一見えびカツのようだけど、マジックペーストやナンプラー、シーユーカオといったタイの調味料を加えることで、すり身の風味が一気に「タイ」になる。
マジックペーストを使う理由はそれだけではないと、みもっと先生は言う。
「えびの生臭さがスパッと消えて、旨みが引き立ちます。安価な冷凍のブラックタイガーやバナエイエビなどでつくっても、その効果が感じられるはず」
実際にひと口味わうと、えび特有の臭みがまったくないので、驚いてしまうほど。
つくり方のポイントは、粘り気が出るまですり身をしっかり混ぜること。
「混ぜれば混ぜるほど揚げたときに、むっちりとした食感になるんです」
すり身にちょこっと加える豚ひき肉は、つなぎの役割と、より複雑な味に仕上げるためのいわば隠し味のようなもの。
えびのすり身揚げに添えるのが、梅干しソース。甘酸っぱいソースで、タイではプラムの塩漬けを使ったものが市販されているが、こちらも手づくりできる。
プラムの塩漬けの代わりに、梅干しを使うのがみもっと先生流だ。
「爽やかさが後を引くソースをたっぷりとかけて、えびのプリプリの歯ごたえを楽しんでくださいね」
えび | 300g |
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豚ひき肉 | 50g |
マジックペースト | 大さじ1 |
A | |
・ ナンプラー | 小さじ1 |
・ シーユーカオ | 小さじ1(大豆を主原料としたタイの醤油。なければ、出汁醤油を代用してもよい) |
パン粉 | 適量 |
揚げ油 | 適量 |
赤ピーマンの皮 | 適量 |
パクチー | 適量 |
えびは殻をむいて背わたを取り、塩水(分量外)でよく洗い、水けをふく。フードプロセッサーにえび、豚ひき肉、マジックペースト、Aを入れ、粘り気が出るまでよく混ぜる。
「フードプロセッサーがなければ、包丁の腹でえびを叩き潰して細かくミンチにしてから、材料をボウルに入れて手で練り混ぜるとよいでしょう」
1のすり身を適量手に取り、2~3cm大に丸め、パン粉をまんべんなくまぶしながら平らに潰す。
「通常より少し小さめの一口サイズにしました。食べやすいし、揚げ時間もかかりません」
フライパンに揚げ油を深さ1cmまで注ぎ、170~180℃に熱してすり身を揚げる。きつね色になったらひっくり返し、同様に色づくまで揚げる。
「ひと口サイズなので、揚げ油が少なめでもカラッと揚がりますよ」
梅干し | 1個 |
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砂糖 | 120ml(みもっと先生は洗双糖を使用。タイではグラニュー糖を使う) |
米酢 | 80ml |
塩 | 小さじ2 |
梅干しは果肉をほぐす。材料をすべて鍋に入れ、弱火でときどき混ぜながら5分ほど煮詰める。
「鍋の中ではソースがサラサラしていても、冷めればとろりとした状態になります」
器にえびのすり身揚げを盛り、梅ソースをかけて赤ピーマンの皮とパクチーを飾れば、でき上がり。
食べやすいサイズがいかにもおつまみらしい1品ですが、
みもっと先生、どんなワインが合いますか?
「梅のソースを合わせているので、梅やはちみつのニュアンスの感じられる、甘酸っぱい白ワインがおすすめです」
――つづく。
タイ料理「みもっと」店主、タイ料理教室「おいしみ研究所」主宰。外資系広告代理店勤務を経て、2011年に家の都合によりタイに移住。もともと料理に興味があり、詳しくタイ料理を学ぶ。2012年よりおいしみ研究家・みもっととして活動開始。料理教室やタイ料理のケータリング、出張シェフサービスなどを行うようになる。2019年6月、日本の旬を取り入れた本格タイ料理レストラン「みもっと」を開店。カレーペーストからディップソースにいたるまで丁寧に手づくりするオーセンティックなタイ料理と、そこに寄り添うナチュラルワインを提供する。
文:佐々木香織 写真:森本菜穂子