お菓子・料理研究家の森崎繭香さんがおすすめする手づくり土産はロールケーキ。生地のレシピと生クリームを立てるときのコツを覚えていれば、失敗することは少ないそうです。ホームパーティーへの持ち寄りスイーツを手づくりしてみませんか?
家族や友人など、たくさんの人が集まるパーティー。
素敵な“手づくりのお菓子” を持ち寄ったら、「おおお!」と羨望のまなざしを向けられるのだろうなあ。
そんな密かな憧れを抱いている人、この広~い世界にはきっとたくさんいますよね。
でも、ここぞというときだからこそ、失敗したくないのがお菓子づくり。そんな時にぴったりなお菓子はないのでしょうか?
「ロールケーキはいかがでしょうか?デコレーションしてあるケーキと違って崩れにくく、持ち運びもしやすいです。切りわける数も、自由に変えられるのでおすすめです」
そうは言っても、生地から焼いて生クリームを泡立てるとなると、時間がかかりますよね?
「生クリームを巻く生地は、紹介したシフォンケーキとまったく同じレシピでつくることができます。ロールケーキの生地はうすく焼くので、焼き時間も短くなりますよ。その上、多少ふくらみが足りなくても巻いてしまえば気になりません!」
おお。なんだか、ロールケーキをつくれるような気がしてきました。
「と、自信を持っておすすめしておきながら、実は持ち寄りパーティーのためにロールケーキをつくって失敗したことがあるんです……」
森崎さんは照れ臭そうに教えてくれます。
「友人の家で手づくりのロールケーキを切りわけたら、生地から生クリームが飛び出てしまったんです。ロールケーキは見るも無惨な姿になってしまい、本当に恥ずかしかった(笑)」
でもね。と森崎さんは続けます。
「そのときに学んだんです。手土産用のロールケーキを上手く仕上げるコツは、生クリームにあるんだって!」
森崎さんも失敗することがあるなんて。
「水気がついていない道具を使う。泡立てるときは必ず冷やす。巻きやすい泡立て具合を知る。生クリームの失敗はこの3つのポイントで解決です」
「生地を焼いている間にフルーツを切ったり、生クリームを泡立てたりすれば、1時間くらいででき上がりです」
お菓子は時間がかかるものと思っていたけれど、これならできるかも。
「あとは、でき上がったロールケーキをしっかり冷やし固めることも大切です。時間の余裕を持って、チャレンジしてみてください!」
薄力粉 | 35g |
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卵 | 2個 |
グラニュー糖 | 35g |
米油 | 大さじ1 |
牛乳 | 大さじ1と1/2 |
生クリーム | 100ml(乳脂肪分45%) |
グラニュー糖 | 大さじ1/2 |
キウイフルーツ | 1/2個 |
バナナ | 1本 |
オレンジ | 1個 |
薄力粉はふるいにかけておく。オーブンを180度に予熱する。型に敷紙を敷いておく。
ボウルに卵を割り入れ、卵黄と卵白を違うボウルに取りわける。卵黄を溶きほぐし、グラニュー糖15gを加えてホイッパーで白っぽくもったりするまで混ぜる。黄身を混ぜ終えたら、ホイッパーは洗い乾かしておく。
卵黄は泡立てると、空気を含んで色が淡くなりぽってりしてきます。グラニュー糖が溶けて、卵黄がふんわりしてきたら次へ進んでOK。
1のボウルに米油、牛乳を加える。材料を加える度にホイッパーで混ぜる。ふるいにかけた薄力粉を一気に加え、生地にツヤが出るまで混ぜ合わせる。
薄力粉の粉気がなくなり、生地の色がワントーン明るくなったのが“ツヤ”が出た状態。ホイッパーで混ぜたときのスジがより鮮明に見えるようになる。
卵白をハンドミキサーの高速で全体が泡立つまで混ぜる。グラニュー糖20gを3回にわけて加える。グラニュー糖を加える度にハンドミキサーで泡立てる。ハンドミキサーを低速に変えて、卵白が白いクリーム状になるまで混ぜ合わせる。
2のボウルにメレンゲを3回にわけて加える。メレンゲを加える度にホイッパーで混ぜ合わせる。
敷紙を敷いた型に4の生地を流し入れる。型の全体に広げて表面を平らにならしたら、底を手で叩いて生地の気泡を抜く。
生地を広げるときには、カードという平たい板ががあると便利です。ゴムベラやパレットナイフでも代用できます。
180度に予熱しておいたオーブンで約13分焼く。
オーブンはひとつひとつ焼き上がるクセが違います。焼き色が強いところ、弱いところがあるときは、焼き時間の7割ほど経過したところで、手早く型の前後の向きを変えると良いです。
生地の表面に焼き色がつき、真ん中を軽く押さえて弾力があれば焼き上がり。型ごと20cmくらいの高さから落とし、生地に衝撃を与える。生地が乾燥しないようにラップで覆うか、ポリ袋に入れて粗熱が取れるまで冷ます。
焼き上がりの生地に衝撃を与えることで、生地が縮むのを抑えることができます。
生地を冷ましている間に、キウイ、バナナ、オレンジの皮を剥いて3cm角の大きさに切る。
ボウルに生クリームとグラニュー糖を入れる。ひと回り大きい別のボウルに氷水を用意する。生クリームのボウルを氷水で冷やしながら、ホイッパーで空気を含ませるように混ぜる。
生クリームをホイップするとき、氷水にあてないと口溶けが悪くなってしまいます。切りわけやすいロールケーキに仕上げるためには、九分立て(右の写真)ぐらいの固さにホイップしましょう。
生地から敷紙を剥がし、焼き色がついていない面を上にして敷紙の上に置く。巻き終わりの部分を決めて、斜めに切り落とす。
生地の端を斜めにしておくことで、巻き上げるとき美しい見た目に仕上がります。
巻き終わりの部分が奥側になるようにして生地をおく。ホイップした生クリームを生地に乗せて塗り広げる。巻き終わりの部分は1cmほどの間隔を空けておく。
8のフルーツを手前半分に横3列になるように並べる。手前1cmは間隔を空けておくようにする。
巻きやすいように、一番手前には間隔を空けておきましょう。
生地の手前から生クリームとフルーツがはみ出さないように巻き込む。
巻き終わりの部分を下にしてラップで包み、冷蔵庫で1時間冷やす。
ラップは二重にして包むと形を保ちやすいですよ。生地もクリームも固めるために、1時間以上は冷やしましょう。
14を冷蔵庫から取り出したらラップを外して、両端を切り落としてでき上がり!
「生クリームは道具で触れば触るほど、口溶けが悪くなります。九分立ての生クリームをスピーディーに塗り広げるのを意識してつくってみてくださいね!」
1976年、横浜生まれの八王子育ち。お菓子・料理研究家/フードコーディネーター。料理教室講師、パティシエを経て、フレンチ、イタリアンの厨房で経験を積み、独立。書籍、雑誌やWEBへのレシピ提供、ラジオ・テレビ出演など幅広く活動中。身近な材料を使った自宅でもつくりやすいレシピを心がけている。2019年には、人と犬が一緒に食べられる無添加おやつとごはんのオンラインショップ「one's daily」をオープン。著書に『型がなくても作れるデコレーションケーキ』(グラフィック社)、『小麦粉なしでつくる たっぷりクリームの魅惑のおやつ』(日東書院本社)、『米粉で作る うれしい和のおやつ』(立東舎)。最新刊は『はじめてでもおいしくできる! おうちおやつ』(文化出版局)。
――つづく。
文:長嶺李砂 写真:公文美和