ふんわり&しっとり食感が人気のシフォンケーキ。手づくりにチャレンジしてみたものの、生地は上手にふくらまず、ぺちゃんこに……。お菓子・料理研究家の森崎繭香さんに「生地がふくらまない理由」を教わります!
卵黄を泡立てて油と牛乳、小麦粉を混ぜたら、メレンゲを合わせてシフォンケーキの生地のでき上がり!
よしよし上手にできたぞ、と型に流し込んでオーブンへ。
しかし、数十分後には奈落の底に突き落とされる。
「生地が全然ふくらんでない……」
シフォンケーキがふくらまなくて落胆した経験がある方、多いのではないでしょうか?
「オーブンの中では、きれい
にふくらんでいたのに、焼き終えたとたんにプシューとしぼんでしまうこともありますよね」
シフォンケーキは失敗が一目瞭然なので、ショックが大きいです。
なぜ、しぼんでしまうのでしょうか。
「しぼんでしまうことを怖がってはいけませんよ。原因がわかれば怖くありません!今こそ失敗から学ぶときです!」
森崎さんは宣言します。
「あえて、失敗しやすいつくり方を交えて4種類のシフォンケーキを焼いてみました!」
シフォンケーキがふくらまない事件、解決の糸口が見えました。
「“ふくらまない”という失敗だけでいえば、メレンゲの泡立てが足りていないことがほとんどの原因です」
森崎さんは断言します。
シフォンケーキは、卵白の泡立てがすべてと言っても過言ではないのだ!
「型はアルミ製のものか、100円ショップで購入できる紙製のものを選びましょう」
森崎さんによると、市場に出回っているテフロン加工の型は、シフォンケーキの失敗を招いてしまう可能性があるそうです。
「シフォンケーキは型に生地が張り付くことでふくらみを維持するんです。テフロンだと生地がくっつかないですよね。同じような理由で型に油などを塗る必要もありません」
オーブンから出した時にしぼんでしまう失敗の原因は、型選びにもあったのですね。
たくさんのシフォンケーキのつくり方がある中で、森崎さんが教えてくれるのは“生地がふくらむ”ことにコミットしたレシピ。
「卵白だけでなく、卵黄も泡立てます。卵のふくらむ力を存分に引き出し、ふわふわ&しっとりのシフォンケーキを焼いてみましょう!」
薄力粉 | 70g |
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卵 | 4個 |
グラニュー糖 | 70g |
米油 | 大さじ2 |
牛乳 | 大さじ3 |
薄力粉はふるいにかけておく。オーブンを180度に予熱する。
ボウルに卵を割り入れ、卵黄と卵白を違うボウルに取りわける。卵黄を溶きほぐし、グラニュー糖30gを加えてハンドミキサーの高速で、白っぽくもったりするまで混ぜる。混ぜ終えたら、ハンドミキサーの羽根は洗い、乾かしておく。
卵黄は泡立てると、空気を含んで色が淡くなりぽってりしてきます。グラニュー糖がしっかり溶け、ふんわりしてきたら次へ進んでOK。ハンドミキサーの羽根はここで手早く洗い、水気をしっかりと拭いて乾かしておきましょう。
1のボウルに米油、牛乳を加える。材料を加える度にホイッパーで混ぜる。ふるいにかけた薄力粉を一気に加え、生地にツヤが出るまで混ぜ合わせる。
薄力粉の粉気がなくなり、生地の色がワントーン明るくなったのが“ツヤ”が出た状態。ホイッパーで混ぜたときのスジがより鮮明に見えるようになります。
卵白をハンドミキサーの高速で、全体が泡立つまで混ぜる。グラニュー糖40gを3回にわけて加える。グラニュー糖を加える度にハンドミキサーで泡立てる。グラニュー糖をすべて混ぜたら、ハンドミキサーを低速に変えて、卵白が白いクリーム状になるまで混ぜ合わせる。
3のボウルにメレンゲを3回にわけて加える。メレンゲを加えるたびにホイッパーで混ぜ合わせる。
4の生地を型に流し入れる。中心の筒の部分に親指をあててくるくると2~3回、型を回して気泡を抜く。竹串で放射線状に6本のスジを入れる。
型を回して生地の気泡を抜くことで、焼き上がりの断面が美しくなります。生地に入れるスジは、空気の逃げ道です。焼いているときに、シフォンケーキがきれいにふくらむようになります。
180度に予熱したオーブンに5を入れて約30分焼く。
オーブンはひとつひとつ焼き上がるクセが違います。焼き色が強いところ、弱いところがあるときは、焼き時間の7割ほど過ぎたところで、手早く型の前後の向きを変えると良いです。
生地の表面に焼き色がつき、指で触ってみて弾力があれば焼き上がり。型ごと逆さまにして粗熱をとる。
生地を逆さまにして冷ますことで、重力で生地の底のキメが潰れないようにします。ふわふわな食感に仕上がりますよ。
生地が冷めたら、型の縁から生地を中に押し込み型から剥がす。中心の筒の部分を持ち、形を整えながら生地を外せばでき上がり!
「メレンゲを制するものはシフォンケーキを制します。メレンゲを上手に立てるだけでなく、その泡が潰れないうちに生地を仕上げることも大切です」
つまり、シフォンケーキづくりはスピードも勝負!
計量は間違えないように慎重に、一度つくり始めたら最後まで勢いよくつくるのですね。
「ケーキ屋さんでも“生地は生き物”と言われるほど、時間と共に状態が変化していきます。たとえ失敗しても、何度もチャレンジすることが成功への近道ですよ」
1976年、横浜生まれの八王子育ち。お菓子・料理研究家/フードコーディネーター。料理教室講師、パティシエを経て、フレンチ、イタリアンの厨房で経験を積み、独立。書籍、雑誌やWEBへのレシピ提供、ラジオ・テレビ出演など幅広く活動中。身近な材料を使った自宅でもつくりやすいレシピを心がけている。2019年には、人と犬が一緒に食べられる無添加おやつとごはんのオンラインショップ「one's daily」をオープン。著書に『型がなくても作れるデコレーションケーキ』(グラフィック社)、『小麦粉なしでつくる たっぷりクリームの魅惑のおやつ』(日東書院本社)、『米粉で作る うれしい和のおやつ』(立東舎)。最新刊は『はじめてでもおいしくできる! おうちおやつ』(文化出版局)。
――つづく。
文:長嶺李砂 写真:公文美和