定番のお菓子でありながら、シュークリームをつくることって難しい。失敗した経験がある人も多いですよね。どうやったら、上手にできるのかな?
「高校生のとき、初めてつくったシュークリームが膨らまなくて、ぺちゃんこに焼き上がりました。そんな日に限って、兄が家に友人を連れてきたんです。『煎餅つくったの?食べていい?』と聞かれて、とても恥ずかしい思いをしました」
お菓子・料理研究家の森崎繭香さんにとって、忘れられないシュークリームの大失敗エピソード。いまでも、シュークリームを焼く時はドキドキ&ハラハラするそうです。
「年配の方から子どもまで、多くの人に愛されているお菓子ですが、手づくりすると失敗がとても多いです。材料もつくり方もシンプルだからこそ、難しいんですよね」
でもね、と森崎さんは続けます。
「失敗するのはどうしてだろう?と、わたしもたくさん考えました。それでたどり着いたひとつの結論は……」
ぜひ、教えてください!
「卵の分量がレシピ化できないからだと思うのです」
「シュー生地は、ベースとなる小麦粉の生地に卵を混ぜ込んで仕上げていきます。生地の温度や使用した小麦粉の吸水率など、さまざまな条件が重なり合って、生地がきれいに膨らむ卵の量が決まります」
つまり、毎回生地の状態を見極める必要があるということ?
「逆に言えば、生地の状態をしっかりと見極める“目”さえ養えば、失敗しないということでもあるんです」
カッコいい!シューを絶対に失敗しない、その目がほしい。
「レシピ化できない卵の量によって、仕上がりはどう変わるのか?実験してみたのでご覧ください」
「ベストな生地と卵のバランスを目指しますが、卵の量が少ないよりは、多いほうがよりシューらしく仕上がります」
なるほど。ちょうどいいかな?と思ったところから、もうひと声加えるのがよさそうですね。
「下準備が多いのもシュークリームづくりの特徴なのですが、それはスピーディーに作業することが成功への鍵だから。生地がほんのり温かいうちにオーブンで焼くことできれいな膨らみと空洞ができるのです」
冷やしておく材料、準備しておく道具、オーブンの余熱。指差し確認でチェック。
「卵は忘れずに常温に戻しておいてくださいね。手際のいい人ほど、卵が多く生地に混ざりやすいです。できれば、卵を1個、余分に常温にしておいてください。先にカスタードクリームをつくっておくのも、お忘れなく!」
卵 | 2個(100~120g) |
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牛乳 | 50ml |
水 | 50ml |
バター | 40g(食塩不使用) |
グラニュー糖 | 小さじ1 |
塩 | ひとつまみ |
薄力粉 | 60g |
カスタードクリーム | 280g |
バターは1cm角に切り、水、牛乳と一緒に冷蔵庫で冷やしておく。
卵は常温に戻し、薄力粉はふるっておく。
オーブンシートの裏側に直径6cmの円を6つ描き、天板に敷いておく。
絞り袋に直径1cmの丸口金をセットして、霧吹きを用意しておく。
卵はコシがなくなるまで溶きほぐして、オーブンは200℃に予熱しておく。
泡立て器とゴムべらを用意しておく。
シュークリームづくりの成功には、手際の良さが欠かせません。細かい下準備をしっかりとおさえましょう。
鍋に牛乳、水、バター、グラニュー糖、塩を入れて中火にかけ、沸騰させる。
ぐらぐらと吹きこぼれる直前まで沸かします。目を離さないようにしましょう。
火を止めて薄力粉を加え、ゴムべらで鍋の底全体に薄い膜が張るまで手早く混ぜる。
卵を6~8回に分けて加え、その都度よく混ぜる。
最初は卵がなかなか生地に入っていかなくても大丈夫です。小さいかたまりを潰すようなイメージで、生地を切りくずしながら一生懸命に練り混ぜましょう。力仕事ですが、できるだけ休まずにがんばって!
生地にツヤが出て、なめらかになってきたら、ゴムべらを持ち上げて状態を確認する。
5の生地を絞り袋に入れ、天板に敷いたオーブンシートの上へ直径6cm大に絞る。
絞り出す場所を決めて、口金の先を動かさずに生地を押し出して丸く絞り出しましょう。生地の高さは天板から2cmくらいになるとベストです。
溶き卵にひたしたフォークの背で生地に格子模様をつけ、霧吹きをする。
生地に格子模様をつけることで、いびつな型に膨らむのを防いでくれます。霧吹きは30cmほど離れたところから、1~2プッシュ。
200度に温めておいたオーブンで25分焼く。オーブンから出し、網などの上で冷ます。
生地を焼き上げている途中で、オーブンを開けてしまうと、シューがしぼんでしまうので注意しましょう。200度で一気に焼きあげるのもこのレシピのポイントです。
シューが完全に冷めたら、上から1/3くらいのところで切る。やわらかくほぐしたカスタードクリームを詰めて切り取った上部をのせる。
クリームを詰めるときは、スプーンでも絞り袋でも大丈夫です。
「シュークリームは、とても難易度の高いお菓子です。初めは誰だって失敗するものです。たとえ、見た目が不恰好でも、クリームを詰めてしまえば十分おいしいく食べられるし、粉砂糖でおめかしすれば、可愛くなります。失敗例としてお見せした卵が少なすぎたシューも、焼けている部分はパイみたいにサクサク。半分に切ってから、200度のオーブンで5分くらい焼いてジャムをつれば、立派なおやつになりました。見方を変えたら、失敗じゃなかったのかもしれませんね」
1976年、横浜生まれの八王子育ち。お菓子・料理研究家/フードコーディネーター。料理教室講師、パティシエを経て、フレンチ、イタリアンの厨房で経験を積み、独立。書籍、雑誌やWEBへのレシピ提供、ラジオ・テレビ出演など幅広く活動中。身近な材料を使った自宅でもつくりやすいレシピを心がけている。2019年には、人と犬が一緒に食べられる無添加おやつとごはんのオンラインショップ「one's daily」をオープン。著書に『型がなくても作れるデコレーションケーキ』(グラフィック社)、『小麦粉なしでつくる たっぷりクリームの魅惑のおやつ』(日東書院本社)、『米粉で作る うれしい和のおやつ』(立東舎)。最新刊は『はじめてでもおいしくできる! おうちおやつ』(文化出版局)。
文:長嶺李砂 写真:公文美和