東京町焼肉最前線!
【北千住】特注の網で焼き上げる、鮮度抜群の内蔵肉!「焼肉・ホルモン ひろ丸」

【北千住】特注の網で焼き上げる、鮮度抜群の内蔵肉!「焼肉・ホルモン ひろ丸」

進化を続ける東京の町焼肉。今回ご紹介するのは、抜群の素材と鮮度を誇るホルモンが魅力の「焼肉・ホルモン ひろ丸」です。

地元に愛される焼肉店を訪ねて

北千住を訪れるとうれしくなる。酒場もビストロもカレー店も、好きなものにどっぷりハマった店主が、まるで自己紹介や近況報告のような愛すべき皿を出してくれるからだ。

ダンジョンのような駅構内を抜け、西口のペデストリアンデッキを降りる。両サイドにアーケードが伸びる北千住駅前通りを西に向かう。昭和通りを越え、右に曲がるとそこは千住寿町。住宅街と少しの商店の向こうに『焼肉・ホルモン ひろ丸』の赤ちょうちんが見えてくる。

外観

「少ない自己資金と融資だけの出店だったので、駅周辺の物件には手が届かなかったんです」と店主の青木貴宏さんは苦笑する。

もともと青木さんは同じ足立区の興野出身。興野と言えば、足立区でも名店揃いのエリアとして知られている。先日のれんを畳んだ「長興屋」など近隣の名店にも、祖母に連れられて幼少時から足を運んでいたという。

「でもなんといっても、塩とごま油とにんにくだけのクラシック&ストロングスタイルの焼肉が好きでした」

肉

20代で飲食チェーンのマネジメント職をしていた青木さんは、30代半ばで足立区西新井の焼肉店に修業に入った。

「サラリーマン時代、大衆焼肉のチェーンも見ていたんですが、まったく世界が違いました。最初はとにかく毎日さばいては食べ、食べてはさばく。わからないことは仕入先の三河島の肉問屋さんに何度も教えを乞いました。半年後に渋谷に移動になりましたが、仕入れは相変わらず三河島。出勤途中に寄ってから渋谷に向かう日々が7年間続きました」

正肉の仕入れはいまも同じ肉の聖地・三河島から。一方、内臓・ホルモン類は芝浦直送。専門商から鮮度の高いものだけを仕入れている。

素性と鮮度がいいからこそ、ホルモンを塩や小麦粉でジャブジャブ洗いすぎない。独特の香りも味のうち。

「とりわけシマチョウには絶対の自信があります。くっきり浮き上がる縞模様に、このピンク色……。こういうシマチョウをずっと出していきたいですね」

肉
ホルモン盛り合わせ(塩・たれ)1760円は、午前5時の方向から時計回りにシマチョウ、幻のコブクロ、うま塩牛ハツ、ツラミ、クツベラ、シビレ。「特製牛ミノの昆布締め焼き」と「うま塩炙りセンマイ」を追加。

「流通上は同じ内蔵扱いですが、タンやハラミはまた少し違う仕入れなんです。タンはタン先とタン下が既にカットされている、俗に言うクラウンカットですが、落とし方はかなり細かく指定しています。いまどき、タンとハラミが弱い店は話にならないと思って」

肉
特上牛タン塩2420円。

「とにかく旨い肉を出したい」という思いはロースターにも及んだ。「洗った後、塗った油が酸化するのがイヤだから」と網もステンレスの特注品だ。開店2年でもう「10代目くらい」になっているという。網を特注する焼肉店は少ない。当然ながらいずれも名店揃いだ。

その網にサガリ(塩)を乗せる。網の場所で火力が異なるので、細やかに焼きを入れるのが楽しい。長ねぎとわさびを乗せて口に運ぶ。やさしい肉の繊維を噛むと肉汁があふれ、余韻を薬味がきれいに洗い流してくれる。

肉
和牛ハラミ2530円(この日、在庫のあったサガリとの合盛り)。
肉
肉
肉

皿の左に置かれていたハラミ(タレ)は、より肉の繊維が強く、味わいが深い。そのザクザクとした食感をより際立た去るように、さらに深く焼きを入れる。味わい濃厚なのに胃もたれ&疲れ感など感じない。この店の焼肉は味わい深く、それでいて体にやさしい。

肉
肉
肉

開店は少し早めの16時。近隣住まいのお年寄りや、塾前の小学生を連れた親子が早い時間に夕食を取る。遅い時間には仕事帰りの一人客がカウンターでビールで一息ついて網に向かう、休日には近隣のベテランや遠方からの焼肉好きがワイワイとロースターを囲む。

店内

「最近、居酒屋使いもできる2号店を開いて、そちらは全席喫煙可としました。特にこのあたりは、まだまだお吸いになりたい方は多いんですよ。一方、家族連れが多いこともあり、本店は軒先も含めて全面禁煙をお願いしています」

「ひろ丸」は地域に開かれた、万人にやさしい焼肉だった。いい肉で満腹のお腹を抱えて、赤ちょうちんの脇から店を出ると、向かいには立ち寄りできそうな銭湯がある。千住は気持ちがやさしく、うれしくなる町だ。

店舗情報店舗情報

焼肉・ホルモン ひろ丸
  • 【住所】東京都足立区千住寿町18‐8
  • 【電話番号】03‐6754‐8828
  • 【営業時間】月曜~金曜16:00~22:00(L.O.)ドリンクは~22:30(L.O.)、土・祝日12:00~~22:00(L.O.)ドリンクは~22:30(L.O.)、日曜12:00~21:00(L.O.)ドリンクは~21:30(L.O.)
  • 【定休日】不定休
  • 【アクセス】JR・東京メトロ「北千住駅」より10分

文・写真:松浦達也

松浦 達也

松浦 達也 (ライター/編集者)

東京都武蔵野市生まれ。家庭の食卓から外食の厨房、生産の現場まで「食」のまわりのあらゆる場所を徘徊する。食べる、つくるに加えて徹底的に調べるのが得意技。著書に『教養としての「焼肉」大全』(扶桑社)、『大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』(共にマガジンハウス)ほか、共著に『東京最高のレストラン』(ぴあ)なども。主な興味、関心の先は「大衆食文化」「調理の仕組みと科学」など。そのほか、最近では「生産者と消費者の分断」「高齢者の食事情」などにも関心を向ける。日本BBQ協会公認BBQ上級インストラクター。