ある日ふらりと気になった店を訪れた松尾さん。くつろげる店内で出てきたのは、夏にうってつけの爽やかな一皿で――。
中目黒から池尻大橋に少しよったあたりの裏通りで、通りすがりにさりげない「チキンカレー」の文字を見つけて、気になって吸い込まれた。「THE TAMUYA」というビストロを昼間に間借りで営業なさっているそう。
一人でオペレーションしておられる。どこかゆったりとした時間が流れていて、くつろげる雰囲気だ。
お店の方は優しい応対で、初めての店に抱きがちな緊張感がすぐさまほぐれた。
ミント(とコリアンダーの)チキンカレー、チキンキーマカレー、ラムキーマカレー、そして普段はサバカレーと牡蠣カレーもあるようだが、この日は品切れ中になっていた。これらを含め、だいたい3種類を用意しているそうだ。
初めての訪問なので2種類は食べたいと思い、ハーフサイズ(なのか?)でラムキーマとミントチキンカレーを所望した。
水を出してくれながら「辛いのは大丈夫ですか?」と聞いてくれるのは、苦手な人にはありがたいだろう。
黒板にある夜のビストロメニューなどをチラチラみながら数分、最初の客だったということもあろうか、程なくしてカトラリーに続き、カレーが登場した。
ラムキーマはすでにライスに乗せられていて、ライタがほどよくかけられている。パクチーがふんだんに盛られ、それを少し勢いをつけて「わしわし」といただく。
羊の香りを生かしつつ塩加減が絶妙。ミントチキンカレーは別皿で、手羽元が中央に鎮座している。スプーンと指先で容易に肉が外れ、こちらも塩梅がいい。
チキンのミントは期待通りの爽やかさ、カレー界のモヒートと言うと誤解を招くかもしれないが、これからの季節にはさらに食欲がわきそうだ。馥郁としたコリアンダーとの相性が個性的な面白い風味を醸している。
ライスはタイ米を多めに、日本米とブレンドしているそうで、やはりランチはお腹にしっかり「満ちた」感を得やすいようにしているという。
文・撮影:松尾貴史