カレー店が多い大阪梅田周辺を散策していた松尾さんは、可愛らしいインドネシア料理店を発見。メニューを見るとオムライスにカレーグレイビーをかけた「バリ・オムライス」なるものを発見。そのお味とは――。
大阪梅田からすぐ隣の、地下鉄御堂筋線中津駅近辺にはオリジナルのカレーを出す店がいくつもあって、この界隈で働く人たちの便利でお値打ちの美味しい台所となっている。
駅から地上に出てほんの少しのところに、インドネシア料理の可愛い店を見つけた。
おそらくインドネシアの方だろう、男性のシェフと女性スタッフが2人、にこやかに迎えてくれた。
店頭のメニューにあった、「バリ・オムライス」をいただくことにした。
カウンターに座って、有線のBGMだろうか、荒井(松任谷)由実さんの「ベルベット・イースター」や坂本龍一さん・忌野清志郎さんの「いけないルージュマジック」などの懐かしい曲を聴きながら料理の提供を待つ。
ほどなくして、ミニサラダに続いて春雨と鶏肉が入った、ほのかにエスニックなスパイスを感じる優しいスープが出てきた。
やがて登場したバリオムライスは、昔ながらのオムライス状で薄焼き玉子に包まれているが、中身は白ごはんではなくナシゴレンだ。「ナシ」はご飯、「ゴレン」は揚げたり炒めたりする意味で、つまりはインドネシアの周辺で言うところの焼き飯、炒飯のような物だ。
干した小エビかな、香ばしい海の香りと魚醤で炒めたのか、食欲をそそる香り。薄い玉子をスプーンのエッジで割いて甘旨いナシゴレンを露出させるわくわくした感じが嬉しい。
上から全体的にかけられているのはさらりとした牛挽肉のカレーグレイビーで、このスパイシーさをオムライスが纏っていてすこぶる塩梅がいい。あっさりスープとの相性抜群で、どんどん食べ進む。
添えられているにんじんや大根のピクルスは穏やかな酸味で、これも全体の優しい雰囲気を調和させている。
シェフにうかがうと、バリ島で食べるとこんなスタイル、というわけではないらしい。ナシゴレンには目玉焼きが乗せられることが多いが、ナシゴレン・パタヤのように薄焼き玉子を使うこともある。
ここ「バグース」のバリオムライスは、日本の洋食オムライス風に薄焼き玉子で包み、その上にカレーをかけるというオリジナルスタイルだ。
シェフは、バリ島のすぐ西隣、数キロ離れたジャワ島の東側、風光明媚な町バニュワンギ出身だそうで、日夜、料理の研究に余念がない。
気がつくと、BGMは(多分)インドネシア音楽に変わっていた。お店の方が皆さん明るく優しい雰囲気で、笑顔で迎えてくれて笑顔で送り出してくれる。日常にプチリゾートをさせてもらった気分だ。
バリオムライスにミニサラダ、スープ、食後のドリンクまでついて1,000円ちょうどとは、こちらも笑顔にならざるを得ない。
文・撮影:松尾貴史