dancyu本誌から
dancyu7月号「アジア麺」絶賛発売中!

dancyu7月号「アジア麺」絶賛発売中!

ピリッと唐辛子、華やかに痺れる花椒、ギュッと搾った酸っぱいライム。力強く香る元気なパクチーに、クセになる塩気のナンプラー!つつつと麺を手繰ったら香りも刺激も旨味も、ぜ~んぶのってくる、いまの気分は「アジア麺」!海を越え国境をまたぎ、中国、韓国、タイにベトナム、マレーシア……。いつもとちょっぴり違う、異国の味わいに浸りませんか?

香る!ちょい辛!甘酸っぱい!

表紙
P16+17
P22+23
P78+79
dancyu2022年7月号
かつて、東京・渋谷の一角にフォーの屋台が出ていました。澄んだスープにライスヌードルが入ったベトナムの麺料理は、当時まだあまりなじみがなく、「なんだラーメンじゃないのか」と言って帰ってしまう人もいました。僕も、最初はラーメンの屋台かと思い、酔った勢いで丸椅子に座ると「フォーですけど、いいですか?」と若い主人。「フォーの屋台とは珍しいですね。ぜひ食べたいです」「パクチーを入れてもいいですか?」「たっぷり入れてください」といった会話を経て出てきたのは、鶏のだしが効いたスープと程よい歯ごたえの麺が絶妙なバランスの一杯。呑んだ後に胃が欲する優しい塩味でした。締めはラーメンよりフォーだよね、と勝手に思い込み、以来、時折(いつも呑んだ後)食べていました。

その後、ベトナムを訪れた際に、ニョクマム(魚醤)やチリソースなど卓上に置かれた多彩な調味料や、一緒に出てくるハーブやライムなどで客がそれぞれの好みにカスタマイズしているのを見て、“正解のない料理”であることに驚きました。でも、真似してカスタマイズしているうちに、この“ゆるさ”こそがフォーの味わいである、と妙に感心しました。そういえば、渋谷の屋台も、日によって味わいが少しずつ違っていたような気がします(僕の酔い加減によって感じ方が違っていたのかもしれませんが……)。アジアの麺はびしっと鋭角的な美味しさよりも、少し雑なゆるさがあったほうが楽しいですね。

dancyu編集長 植野広生
dancyu2022年7月号
dancyu2022年7月号
特集:アジア麺

A4変型判(144頁)
2022年6月6日発売/900円(税込)

写真:竹之内祐幸