代々木公園にある「酒坊主」ではスパイスと羊と酒のハーモニーを楽しめます。お好きなみなさんならご存じのように、羊はクサいとか、カタいとか、そんなのは昔の話。今や幅広いジャンルで、香り高く軽やかで、素晴らしくおいしい羊料理が食べられます。そんな羊がおいしい店をご紹介します!
坊主頭の店主・前田朋さんの前では、「ラムにはクミンだよねぇ~」の会話はお断りだ。とはいえ、そんな注意書きがあるわけではないが、坊主の表情にはしかとそう刻まれている。
その証拠に、こちらの羊メニューはなんとも多彩。肉豆腐、ぬた、春雨炒めにハンバーグ、カレー……と、クミン風味以外でもラムの旨さは引き出せることを、証明するかのようなラインナップだ。しかもどれもやたらと酒の進む味わいで、その組み合わせの妙も面白い。たとえば“仔羊のスパイシー春雨”とスタウト。自家製五香粉や青山椒、花椒などの香り高いスパイスに豆板醤を加えて春雨とラムを炒めるのだが、「豆板醤の味噌っぽさが、まるで濃いめの麦茶みたいなこの黒ビールとイイ感じなんです」と言う店主の言葉通り、どストライクの相性なのだ。
また、カレーには燗酒を提案。香り控えめで旨味の太い日本酒が、ラムの旨さをぐぐっと持ち上げ際立たせる。
牛や豚にはない個性的な香りと味に惹きつけられ、羊にハマったという前田さん。さらには飽きっぽい性格が功を奏し、多彩な料理へと広がったのだとか。そして最近は山羊にも興味津々というからさぁ大変。羊が山羊に乗っ取られる前に、急いで足を運ぶべし!
文:中川節子 写真:徳山喜行
※この記事の内容はdancyu2018年6月号に掲載したものです。