大塚にある「29ロティ」では羊のねっとりとした脂と燗酒の抜群の相性を楽しめます。お好きなみなさんならご存じのように、羊はクサいとか、カタいとか、そんなのは昔の話。今や幅広いジャンルで、香り高く軽やかで、素晴らしくおいしい羊料理が食べられます。そんな羊がおいしい店をご紹介します!
店名が表す通り、29(ニク)を味わうための店である。しかも、牛、鶏、豚、鳩、鴨、そして生ハム各種とその守備範囲は広いが、肉レストランではなく、ここは酒も楽しめる場所。タンドールや生ハムのスライサーもあり「レストランで食べるような肉料理を出せる居酒屋」であるところが、この店ならではの得難い個性だ。
居酒屋であるから、肉との相性も考慮された、たくましい味わいの日本酒が季節ごとに30銘柄ほど。ヴァンナチュールを中心に選ばれた赤白のワインも同じく約30銘柄が揃う。
羊のヒレ、ロース、もも、タン。さまざまな部位にスパイス各種を効かせて、あるいはあっさり岩塩で。適材適所にその味わいが生かされる羊肉は、主にオーストラリア産。各地の肉を食べ歩きながら、“肉歴”を重ねてきた店主・江澤雅俊さんの「穀物で育てているため、肉の味が濃いんです。日本人には、なじみが良いのでは」という判断からだ。
大塚の銘酒居酒屋「串駒」での修業経験も持つ江澤さんは、肉だけでなく日本酒の知識も深い。羊料理を前に、ここは当然赤、となりそうな場面で、生酛純米酒のお燗を出してもらえる楽しさ。右手にワイングラス、左手に盃。そんな両手飲みも可能な店である。
文:藤田千恵子 写真:木村心保
※この記事の内容はdancyu2018年6月号に掲載したものです。